№4
爽やかな日差しが振りそそぐバルコニーでおもいっきり伸びをして軽く身体をほぐした彼女であった。
ここ数日の彼女はこの新生活を始める為に毎日辺りを歩き回っていた。
理沙 「ふぅぅ…、この街もちょっと素敵かも…。お洒落なカフェも見つけたし…。後は友達か…」
毎日一人で食事をして一人で過ごす日々。入学前とは言え、日本にやってきて早一週間が過ぎようとしていた。まだ一度も動かした事がない愛車。彼女はいささかこの日常にも飽きてきていた。
理沙 「車…、んーー…。道が…、不安だし…。ナビはあるけど…、そのナビも今の私には…。」
土地勘がないうえ、日本の住所にもまったくと言っていいほど慣れてない彼女であった。
その為か、今はテレビっ子と化していた。日本のテレビを見ても面白くない彼女。それもそうである。知らない俳優達が演じるドラマはどうも魅力的ではなく、どうしても海外のドラマを見てしまう。でも、それも数年前のものばかり…。見たことはなくてもその当時流行のドラマや映画に関してはどうしてもラストがわかってしまい、まったくと言っていいほどこちらも面白くない。
そうなるとやる事と言えば…、趣味の株。毎日ほぼ一日中パソコンの画面をチェックしている。
その為か、ウハウハ状態の彼女であった。
理沙 「私って…、才能あるかも…。既にこーーんなに増えちゃったし…。」
お小遣いは有り余るほどあるのに、その使い道がない。買い物に行きたくても場所がわからず…。
暇だからと旅行に行きたくても、一人きりの彼女。
理沙 「そっだ、愛車でも見に行きますか。」
意気揚々と愛車のキーを握り締めると駐車場へと向かった。
理沙 「ああーーー、ラッキー、窓が開いてる。」
そう叫んだ彼女が一目散に向かった先は、先日一目ぼれしたカッコイイ車であった。
理沙 「うわーーー、すごーーい。内装も素敵ーーー。」
失礼な彼女は開いている窓から頭を入れて中を覗いていく。
一人テンションがあがった彼女は、窓が開いていると言う最大の意味を忘れていた。
「そんなに珍しいか?」
何処からともなく聞こえた声。ビクッと全身が硬直した。
恐る恐る顔を窓から出して辺りを見回してみても人影はない。
不思議に思った彼女はとりあえず謝った。
理沙 「ごめんなさい…。とてもカッコイイ車だったから…。ずっと中が気になっていたの…。」
誰も居ない駐車場に彼女の声だけが響いていく。
怪訝な表情で先程の声の主を探そうとしたが、誰も居ない駐車場…、恐怖が先にたちその場に立ち尽くしていく。
理沙 「あの……、ごめんなさい、許してください。」
一瞬の静寂の後、軽快な笑い声が聞こえてきた。
その声にまたもや彼女の身体はビクッと固まっていく。
反対側の後ろの方からいきなり現れた。
理沙 「キャーーーーーッ、」
静かな駐車場に彼女の叫び声がこだましていく