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愛しのジーン  作者: PANDA
第二章  恋人達
24/29

№24

リアシート前面を使いジーンが大の字に寝ている。


星を見ていたはずなのに…、ずっとアルコールを手放さなかったからかな…。


大きな身体に浴びるほど飲んでいた。


グラッと身体がゆらいだと思ったら、そのままぐっすり夢の中みたいね。


大きな身体が力なく私に倒れてきた。


周りの人達が慌てて支えてくれたのが可笑しかったな……。


サークルの人達に担がれてここまでやってきたのに、まったく起きないんだもん。


私は、そんなジーンの寝顔を見ながらお姉さんからもらった


ポットに入れてもらったコーヒーを飲んでいた。


車内に漂うコーヒーの香りが、ジーンの寝顔を素敵に見せてくれる。


なんて言ってるけど、ジーンはいつも輝いている。


いつからだったのかな…、こんな気持ち…。あの時かな…。


私は、寝ているジーンの前髪に無償に触れたかった。


でも…、それは我慢、我慢…。起こしたら可愛そう…。


彼の寝顔を惜しみつつ、私はまた、夜空に視線を移しては、


しばらく時間も忘れたように夜の空を眺めていた。


ついこの間までは、一人でジーンを想っていた…。


携帯を握り締めては…、そのボタンを押せなくて…。


もしかしてジーンから連絡がきてるかもと日に何度も確認していた…。


お知らせランプが点滅している時なんて、飛び上がるほど喜んで…。


彼からのお知らせランプの色。それだけで胸が高鳴って苦しいほどだった。


ジーン…、知らないでしょ…。私のこんな気持ち…。


逢えば構ってほしくて、いつも困らせたかった。


子供みたいな自分に泣くたくなっては、連絡が来ない日々が続くと


きっとこんな私だからだと落ち込んでいた。


ねぇ…、早く起きてね…。私を一人にしないで……。





いつのまにか私は、色んな事を考えていた。


きっとこの静かな夜のせいね……。彼の寝息が、私を戸惑わせるから…。





たまに横切る仲の良い恋人同士が肩を寄せ合い歩いていく。


私の存在に気づくこともなく、二人だけの世界に入ったような様子が素敵だった。


闇にまぎれて啄ばむようなキスを繰り返す。


お姫様みたいに抱っこされた子もいた。


子供のようにおぶられてふざける二人もいた。


色んな恋人達がそれぞれの形で想いを告げあっていた。


まるで目の前がスクリーンになったみたいな気持ちで見ていた。


ふふ…、でもこれって、覗き見なんだけどね…。




こんな世界もあるんだと、この年齢になるまでわざと見ないできた今迄を振り返り


意外と衝撃を受けている自分をどこか冷静に見つめていく。


ふと、昼間のジーンとのキスを思い出した。顔が熱くなってきた。


優しい唇の感じと、……、もっと激しい感覚……。


彼の感情が流れ込んできたようで…、嬉しかった…。


私を気遣う優しさが…、私の不安を溶かしていく。


強い力で抱きしめられた身体が彼の逞しい腕で


私を包んでくれるような気がして怖くなかった。


これって…、凄いかも……。


嫌悪感なんかまったく感じない。


もう一度、あの腕に包まれたいと思ってしまう。



大好きって凄いね…。ねぇ…そう思うでしょ…。








いきなりのそっと起き上がった彼、私は驚きのあまり声をあげそうになった。


驚く私を無視したような彼が私の飲みかけのコーヒーを取ると一気に飲み干した。



淳二   「生理現象、ちょっと行ってくる。ここから出るなよ。」


ジーンが車から降りていく。


ただ、呆気に取られてドアの音を聞いていた。





タバコを咥えた彼が彼女の待つ車へと帰ってきた。


長身の彼、凛々しい顔が月明かりにもはっきりわかる。




淳二   「まったく、せっかくの自然が台無しだ…。どつもこいつも……。」


彼はチラッと視線を動かしては呆れたようにつぶやいていた。


淳二   「これじゃ…、外にも出れないじゃないか…。星もみれねーし…。」



周りの濃厚な空気が彼を困惑させていく。


それでも彼はそんな雰囲気は一切見せずに彼女の元へと戻っていくのであった。




理沙   「せっかくだから、星を見に行きたい。ダメ?」


帰ってくるなり待ち構えたような理沙が俺におねだりのような瞳を向けてきた。


できることなら俺だって…、この綺麗な星達を見せてあげたい。


俺は理沙の隣、運転席に座った、そこからフロントガラス越しに空を見上げて


星座や星の名前を口に出していく。



淳二   「外はかなり冷えていてな、今日はここで我慢だ、いいな。」


見るからに残念そうな顔をして俺を見ている。


そんな俺達に気づかず歩いていくバカな俺の仲間が目の前で空を指差してははしゃいでいる。


そんな仲が良い二人を見た後、理沙が俺に何か言いたげな眼を向けてくる。



淳二   「見たいのか?」


うぅっ…、なんだよその嬉しそうな顔は……。


待ってましたとばかりに輝かせた瞳。諦めるしかないようだ。


少しだけだぞ、と言い俺はリアシートから毛布を取り出した。


理沙に頭からかぶせて完全防備に仕上げていく。


嫌だったが俺も同じように毛布をかぶった。


この際怪しいなんて事は関係ない、俺はただ綺麗な星さえ見てくれればいい。


今日俺と星を見た事だけ覚えていてほしいから。



二人で仲良く星を見ていた。


空を見上げて星を見ていた。



       「うわっっ、幽霊かと思った…。」


       「マジで心臓止まりそう…。」



俺は思いっきり怪訝な顔つきで上から見下ろしていた。



理沙    「ごめんなさい、驚かせてしまいました。」


        「ゲッ、淳二。理沙ちゃんこっちこそごめんね…。」


        「お邪魔だったわね…、あはは…。」


淳二    「気をつけて行けよ、暗いからな。」


仲間が見えなくなると俺達も車に戻った。








淳二   「寒くないか?こっちこいよ。」


リアシートに彼女を呼び寄せる彼であった。


なぜか彼女は助手席に座っていた。


理沙   「あっ……、うん……。」


淳二   「バーカ、変な気まわすな、安心していいから、何もしない…。」


わかりやすい彼女は彼の言葉に思いっきり安心した顔をしていく。


そんな彼女を目の前にしたら彼のささやかな下心さえ出る幕はない。


そばにあった毛布をクルッと彼女に巻き、自分も毛布をかぶり彼女を腕に閉じ込めた。


淳二   「まだ日の出までは時間があるから、しばらく寝るか?」


理沙   「うん…、眠い…。」


淳二   「おやすみ…、理沙。」


理沙   「ジーン、おやすみなさい。」


そう言って彼の頬にキスをする、寝るときの挨拶だと彼も知っている。


淳二   「おい、それだけかよ…。なぁ、理沙…。」


彼の唇が、彼女の唇を塞ぐ。


恋人同士のキス。彼女に想いを告げていく。


大好きな人とのキス。彼の想いを受け入れた。


淳二   「おやすみ…。理沙…。」


彼もそっと彼女の頬にキスをした。勿論おやすみの挨拶のキスを…。




しばらくしたら規則正しい寝息が聞こえてきた。


彼の腕の中、安心しきった寝顔。


彼は携帯のアラームをセットすると自身もすぅっと眠りの中に入っていく。




意外と紳士な彼だった。







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