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愛しのジーン  作者: PANDA
第二章  恋人達
22/29

№22

俺達は集合の時間を既に過ぎていた。


そんな事まったく俺はかまわない。


どうせ今頃、テント張ったり、火を熾したりいろいろと忙しくしているはずだからな。


今までの俺は、男ばかりの車に乗り込み、一番に着き、色々と準備をするばかりだった。


たまには、のんびり着くのもいいさ。


途中寄った大型スーパーで俺は大量のビールとその他のアルコール類を買った。


それと一緒に山ほどの肉とその他色々。


いつも俺が差し入れるのを皆楽しみに待っている。


これでもあいつらの中では一番稼いでいるから、必然的にそうなってしまう。


言わばあいつらの財布として呼ばれているようなもんだ。


それも承知している。


昔は卒業した先輩達に電話して集めたりもしていたがな。


今は皆から集めた金とサークルの運営費と俺だ。



着くなり待ち構えていた仲間が俺達の車から食材とアルコール類を持っていった。


呆気に取られている理沙を連れて俺は皆が待つ場所へと向かった。



日も暮れ辺りは外灯もなく仲間達の焚き火と持ってきたライトの光がその場所を教えてくれる。



まださっきの余韻が残る俺達はいつになく密着モードだった。


俺は意味もなく理沙の髪を梳く。その一本までもが愛しくなってくる。


そろそろ仲間達が見えてきた。それでも俺は理沙を腕から離さず歩いていく。



皆の視線が集中してくるのがわかる。それでも俺はかまわない。


今まで散々見せ付けてきた仲間に今度は俺が見せ付ける番。



ふと眼に止まった真のクールビューティー。


仲間から一歩引いた場所に一人でいた。輪の中に入らず静かに佇む感じが寂しそうに見えた。



俺は気になり真を視線だけ動かして探した。


真…………。



クールビューティーを遠めに見つめ心配そうにしているのがわかった。


今にも走り出し彼女のそばまで行きそうな顔つきで…。




理沙   「ジーン…、容子のとこに行ってもいい?」


淳二   「あぁ、そうだな…。理沙が行ったら喜ぶな。」


頷き嬉しそうに俺を見上げる理沙の肩から俺は自分の腕を離していく。


その途端理沙は彼女の方へと歩いていく。


背筋をピンと伸ばしたいつもの颯爽とした理沙が仲間達を縫って歩いていく。


誰もが理沙に眼を奪われていく。長身でモデルのように歩く理沙に…。



理沙   「容子、早かったね。私たち今着いたの。」


容子   「理沙……。」


彼女が理沙に悲しく笑ったように見えた。それが俺にはますます彼女が不憫に見えて仕方なかった。


つい眼が真へと向いた。唇を噛むような辛そうな顔の真がいた。



理沙   「大丈夫?」


容子   「うん、平気。」


理沙   「容子……。」


容子   「なんて顔してんのよ。私はこれでも幸せなの…。一緒に来れたから…。」



嬉しそうな容子の顔が、今までの辛さを教えてくれたようで私は泣きそうになっていた。



淳二   「ほら、飯食うぞ、ここでは飯食えないぞ、いいのか?ほら容子も行くぞ。」


いきなり現れたジーンが私の腰に腕を回してヒョイと抱えるようにして方向転換させられた。


後ろの容子に手招きをしていくぞと声をかけている。


連れてこられた目の前には、美味しそうな肉や魚介類がほどよく焼けていた。



淳二   「さぁー、食うぞ、あっ、理沙火に気をつけろよ。いいな。」


理沙   「うん、わかった。」


淳二   「ああぁぁぁ、やっぱ危ない俺が取ってやる、待ってろ。」


その途端周りからのブーイング。


淳二   「何だよお前ら、俺だって心配くらいする。わるいか?」


     「信じられねーーー。人間のような事行ってるぞーー。誰だよこいつーーー。」


     「うわっ、魔王がいつのまにかキャラ変えてるし。」


ドッと笑うその場の者達につられて、いつのまにか私も容子も笑っていた。


淳二   「理沙、こいつら嘘つきだからな。信じるなよ。俺だけ信じろいいな。」


     「ぎゃーー、マジでこいつ誰だよーー。淳二にへんな何かがとりついてるーー。」


淳二   「まったく…、失礼な奴らだな…。これが俺なんだよ。本当は天使のような俺様だ。」


     「何が天使だ、堕天使のまちがいだろ。ミカエル、やっぱ魔王だーーー。」


淳二   「理沙~~、俺は優しいよな~~~。」


     「理沙ちゃんっ!! 騙されるな。こいつは魔王だ。」


     「はっはっはっは、今頃気づいたか、俺は理沙にだけ優しいんだよっ、悪いかっっ。」



賑やかな雰囲気の中、食事を楽しんでいく。隣の容子も美味しそうに食べているからホッとした。


ジーンも友達もちょっとピリッとした雰囲気を察していたのかもしれない。


あの馬鹿騒ぎはきっと、皆の思いやりなんだと思った。


いつのまにか容子もサークルの輪に入り会話を楽しんでいるのが嬉しい。


「ジーン…、ありがとう。」小さく囁いたつもりなのに、いきなり抱きしめられた。


呆れたような皆の視線が痛い。それでもジーンは笑ったまま離してはくれなかった。




真    「よう…、助かったよ…。ありがとうな…。」


タバコを吸いに場所を変えた俺に真が話しかけてきた。


淳二   「何のことだ? 俺にはわかんねー。」


あはは、と笑う真が缶ビールを差し出す。


二人で乾杯をして一気に飲んだ。生ぬるいビールがなぜかうまい。


真    「俺は…、あいつを哀しませるだけなのかもしれない…。」


淳二   「そうでもないんじゃねーか…。俺は聞いたぞ、理沙に幸せだって言っていたのをな…。」


真    「そっか…、容子……。幸せなのか…。これでも……。」


泣きそうな真の顔。ちょっと前の俺とダブっていく。


理沙が好きで堪らないくせに、自分から壁をつくっていたあの頃の俺と…。



淳二   「よー、なーんも考えんな、今日は楽しくやろーぜ。」


真    「あぁ、そうだな…。楽しまなくちゃ勿体無いよな…。」


淳二   「おー、そうだ、今日って日は二度と来ないもんな。」


真    「淳二…、気持ち悪いぞお前…。」


淳二   「恋する男は気持ちわりーんだよ。覚えとけ。」


真    「覚えておくよ。俺も同じだ。めちゃくちゃ気持ちわりー男だからな。」


淳二   「わかってんなら、こんなとこに一人でいるな。俺は理沙んとこ戻るからな。」





俺はさっさと真を置いて理沙を目指して歩いていく。


真が俺を一瞬抜き去った、振り向きざまにニッと笑って容子を目指して歩いていった。



俺は空を仰いでまたたく星の中に流れ星を探した。


今日だけは、真のために祈ってやりたかった…。



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