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愛しのジーン  作者: PANDA
第二章  恋人達
21/29

№21

俺達は一路目的の場所を目指した。


途中休憩もとりながら久し振りに遠出を楽しんでいた。


今日のメインは星の観察と日の出を見る事だと告げると理沙は予想を超える喜びようだった。



理沙   「うわ…、楽しみ~~。ジーンと見れるなんて夢みたい。」


淳二   「そうだな、俺も嬉しい。」


理沙   「テントはどうするの?キャンプなんでしょ?」


淳二   「テント?キャンプって言ってもな、夜通し星見て話したりしてるんだ。」


理沙   「え?寝ないの?」


淳二   「テントは共同のを男女別で二つづつ準備してるんだ。眠りたいやつだけ使うかな。」


理沙   「そうなんだ。どうしよ…、昨日ね嬉しくて寝れなかったから…。」


淳二   「はは、俺達は大丈夫だ。その為にこの車で来たからな。これ後ろ一面倒れて寝れるしな。」


理沙   「あ、だからジーンの車から毛布とか沢山こっちに入れたんだね。」


淳二   「そそ、でも明日はロッジだから大丈夫。温泉もあるしな。」


理沙   「私ね…、初めてなの、キャンプとか。ずっと勉強ばかりしていたから…。」


淳二   「あぁ、親父から聞いた。理沙、飛び級で大学院まで出てるって。」


理沙   「うん、だからね、同じ年の子達とあんまり交流がなくてね。ずっと年上の人達だったから。」


淳二   「そっか…、良かったなこっちに来て、普通に友達もできてさ。」


理沙   「うん、良かった。今はとっても楽しいの。」


淳二   「そうだろ、俺みたいなカッコイイ彼氏もできたしな。」


理沙   「うん、そうだね。」


淳二   「あははは、理沙、そこは否定するところだ。」


理沙   「なんで? 私ねジーン大好きなの、ずっと片思いだと思っていた。辛かったの。だから嬉いのに。」


俺は、自分で自分の首をしめた。今の俺はたぶん真っ赤だ。


こんな顔理沙に見られたくない。俺は何もなかったように会話をかえていく。


俺が一番望んでることへと…。







淳二   「理沙…、キスしていいか?」


何も返事が返ってこない。


俺は、早まったかと思う気持ちと、アメリカ生まれでアメリカ育ちの理沙を考えていた。


チラッと見た理沙は、さっきと同じように茹蛸状態だった。



淳二   「理沙? キス…、嫌か?」


理沙   「ううん…、嫌じゃない。………、でも…。」


淳二   「でも…? なんだ?」


理沙   「普通のにして……。」



普通って…、何だよ…。普通って……。


キスに普通とかあるのかよ……。



理沙   「キスは…、好きじゃないの…。」


淳二   「挨拶ではしなかったのか?」


理沙   「したよ、普通にしたよ。挨拶は平気…。」



普通ってのは…、挨拶の事か……。



その言葉を聞いた俺は目指す場所を少しだけ変えた。


パーキングに入っていく俺を理沙が驚いた顔で振り向いた。


そんな理沙が視線の端でもわかった。



俺はわざと車を端に止めた。周りには数台のみ。


日も暮れはじめ、周りには眩しいほどの太陽はもういない。



エンジンをかけたまま、音楽だけがなっている車内。


俺は理沙を引き寄せた。理沙の大きな瞳が揺れている。


ゆっくりと近づいていく。その唇に触れるために…。



淳二   「理沙、目は閉じて。」


俺の言葉に反応した理沙は、ギュッというくらいに目を閉じた。


ギュッってお前……。


それじゃ、キスできないぞ…。


淳二   「理沙、目を開けて、いいから。ほら、開けて。」


ビクビク緊張していた理沙の瞳がゆっくりと開いていく。


淳二   「理沙から俺にキスして。」


恥かしいのか目を伏せた理沙だった。


淳二   「なぁ…、キス。待ってるんだけど…。」


俺を掴む理沙の指に力がはいる。


理沙が俺の目を見つめてくる。一瞬視線が揺らいだ。


ふわっと触れた軽いキス。


唇とは離れた場所だった。


それでも頑張ったらしい理沙は真っ赤になっている。


淳二   「挨拶のキスじゃないキスがしたい。わかるか?」


うなづく理沙が、可愛すぎる。


俺はまた理沙にゆっくりと近づいていく。


今度は理沙が目を閉じてくれた。それがまた嬉しい。


俺は、軽く触れるだけのキスをした。


淳二   「今のもキスだけど、もっと違うキスを俺はしたい。」


理沙の同意もまたずに俺は唇を重ねる。


軽く何度が触れるようなキス、下唇を唇で挟む軽く吸ってみた、閉ざされた唇を開くように。


淳二   「理沙、これもキスだ。好きな相手にするキスだ。」


何か言いかけた唇を塞ぐ、開いた隙間から入り込んでいく。


俺の舌が口内に入った時、理沙の身体がビクッと跳ねるのがわかった。


どうやら、俺の直感は当たっていたようだ。


それから俺は、優しくまた、情熱的にキスをした。


別に今まで我慢をしていたわけではないが、それでも理沙に俺の気持ちを伝えたかった。


優しくしたいのに、気持ちだけが先行していく。止まらない。


理沙の歯列をなぞっていく、舌を絡めた、逃げる理沙の舌を捕らえるように、


やっと捕まえた舌を吸う、何度も吸う、理沙が漏らす甘い吐息が俺を煽る。


なぞるように唇をなめた。触れるか触れないかの距離で啄ばむ。


そっと離した唇にまた、軽くキスをした。


息が上がる理沙を抱きしめていく。ぎゅっと抱きしめた。



淳二   「これが恋人同士のキスだ。理沙、もっとしたい。」



抱きしめる俺の背中に回る理沙の腕。


それが合図のように俺はまた理沙の唇を塞いでいた。




頭がボーッとしてきた。


ジーン…、ジーン…。


名前も呼ばせてくれない程、激しいキス。


これは……、何?


気持ちが伝わってくる。彼の心が私を求めている。


キス…。恋人同士のキス。


彼が教えてくれた。


挨拶じゃない、違う意味のキスを…。


今ならわかる気がする。ハードなキスをする意味が…。


私は、過去の忌まわしい記憶をリセットする時期だと思っていた。


幼馴染からふいにされた子供の頃の激しいキス。


絡みつく感触に子供の私は傷ついてしまい、


挨拶以上のキスができなくなってしまった。


年頃になるとそれなりに悩んだりもしたけど…。周りの友人には呆れられ…。


当時のボーイフレンドにも愛想をつかされ……。


いつも…、好きな人の特別にはなれなかった…。


何度かチャレンジはしたのに…、それでもキスが好きになることはなかった…。


平気でできる周りの友人達が羨ましかったりもした時期もあったけど…。


それが嫌で、今まで男の人とは一定の距離を置いてきた。


スキンシップが大事だって事くらい知っている。


挨拶のハグとは違う…、もっと別のハグがあることも理解はしていたのに…。


それでも…、私には無理だった…。


開放的すぎる私の国では、受けいれてはくれなかった。





それを真っ向から打ち破ってくる、ジーン…。


その真っ直ぐな気持ちと言葉で私の不安を消してくれる。


大好きと一緒にやってくる別の感情さえも、


隠すことなく私に伝えてくれる…。


キスしていいか……。  だって……、ふふ…。




恋人同士のキス、わかりやすいね…。


ジーン…。












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