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愛しのジーン  作者: PANDA
第二章  恋人達
20/29

№20

俺達が近づくまでずっとそうしている気かよっ。


目の前の仲間達が、微動だにせずに俺と理沙を見ている様子に俺は呆れていた。


まあ…、予想はしていたけどな……。ここまでとは……。



さてと…、俺もバシッと決めるかな…。



立ち尽くす皆を分け入って中へと進んでいく。




淳二   「よう…、遅れてすまなかった…。俺達が最後か?」




唖然としたように口を開けて真が俺と理沙を見ている。


どうやら、真は準備に忙しくて俺達が来た事すら気づいてなかったようだ。



真    「えっ、あっ、いっ、ええーーーっっ」


わけのわからない単語を口にした真が最後は大きな絶叫になっていく。



淳二   「何だよ、いったい、騒々しい奴だな…。」



それでも俺と理沙を指さしてしきりに周りの仲間に同意を求めているのが俺にもわかった。



いつのまにか集まってきた仲間に俺は視線を送る。



淳二   「チッ…、面倒くせーな…。」


俺は理沙の肩を持ちクルッと皆の方を向かせた。


淳二   「俺の彼女の理沙。皆、仲良くしてくれ、頼むな。あっ、ここの一年なんだ。」


おおーとどこからともなく声が上がる。


冷やかすような視線が照れくさいくて俺は鼻の頭を掻いたり落ちかつない。


理沙と理沙を即して皆に挨拶をさせた。こいつはどんな時でも落ち着いているようだ。


簡単な自己紹介をした理沙が、平然と皆の前で頭を下げた後、笑っている。



さて…、次は、真か……。こいつが一番やっかいだ。



淳二   「紹介する。理沙だ。理沙、こいつは俺の親友の真。」


理沙   「はじめまして、林田 理沙です。今日はありがとうございます。楽しみにしていました。」



ボーッと理沙を見ていた真がいきなり立ち上がり姿勢を正した。


真    「西野 真です。理沙ちゃん、歓迎するよ。こちらこそよろしくね。」


親友の笑顔に安心したのか、嬉しそうに理沙が俺を見上げてくる。



真    「それにしても…、どこに隠してたんだよっっ。こんな素敵な彼女を。」


淳二   「はは…、勿体無くて見せるか。お前なんかに。」


真    「理沙ちゃん、こいつ嫌になったらいつでも言ってね。」


理沙   「えっ? はい。」笑っている理沙に俺はちょっとだけムッとした。


淳二   「何返事なんかしてんだよ。」


俺は背中から理沙の腰に腕をまわしそのまま後ろから引き寄せていく。


理沙の肩に自分の顎をのせて、理沙の頭に寄り添った。



その途端、周りから悲鳴のような声があがった。



真    「うわー、お前のそんな姿、初めて見た…。きっつー。」


淳二   「なんだよ、いいだろ、お前らいつも俺の目の前でしてるだろ。」


真    「いやな、お前はそんな柄じゃないからさ…。見慣れなくて俺が自爆しそうだ。」


淳二   「わけわかんねーの。勝手に自爆しろ。」


真    「理沙ちゃん、早くこいつから離れて、危険だからさ。」


淳二   「バーカ、理沙は俺のだ。お前こそ近づくな。」


ヒューヒューとますます周りが騒ぎだした。


チラッと見た理沙の顔、真っ赤を通り過ぎて茹蛸のようになっていた。


俺はそんな理沙に驚いていく。


ハグは平気なくせに………。そんな事を考えていた。


俺は、理沙にしか聞こえないように耳元でささやく。



淳二   「おい…、真っ赤だぞ、嫌だったか?」


ううんと首を振る。安心した俺だったがなんとなく違和感が残っていた。




非難めいた女達の視線が気になっていたが、それでも俺は理沙を離しはしない。


ずっと理沙の身体のどこかに触れていた。


そんな俺に最後は諦めたのか、話しかけてくる。



      「淳二ったら、そんな顔もできるのね。知らなかったわ。」


      「本当ね、今までよくも騙してくれていたわね。」


      「見てらんないわ、デレデレすぎてね。」


淳二   「そうか? 悪かったな、でもこれが俺だ。隠してなんかないさ。」


      「ムカツクわね、相手次第って事ね。お幸せにね。」


      「本当、私たちは仲間だからいいけどね…、これから大変よ~~。彼女…。」


クスリと笑う女達に俺はわかってると言う顔をした。


淳二   「そんなに心配なら、少しは助けろ。」


平然と言ってのける俺に呆れた様子だが、それでもそれがわかっていたように頷いてくれた。


      「はいはい、そうね。淳二の頼みだもんね。」


      「おねーさん達が居るから大丈夫よ。理沙ちゃん。これから宜しくね。」


      「たまには淳二貸してって言いたいけど、それはやめておくわ。」

 

一斉に女達が笑いだす。理沙はわけがわからないって顔をしている。


淳二   「おい、あんまり言うなよ、こいつわかってないからさ…。」


      「理沙ちゃん、淳二がかっこ良過ぎだから皆連れて歩きたいのよ。」


淳二   「俺は物かっ、ごめんだね。」


      「いいじゃない、これくらい。言わせてよ。」

 

      「そうそう、私たち淳二狙いだったしね。残念だわ…。」


      「理沙ちゃん、こいつこんな奴だけど、いい奴だからね。あっ、知っているわね。」


淳二   「当たり前だ。俺の良さは理沙が一番知っている。」


首を傾げる理沙に周りが笑う。


      「ふふふ、私たち友達になれそうよ。淳二安心していいわよ。」


      「まずは、合格ってとこかしら。」


淳二   「ふん、知ってるさ、俺はお前達がいい奴だって事くらいな。」


      「私たちも知っているわ、淳二がいい奴だって事くらいはね。」


      「それに、身体もいい事も知っているわ。ねーー。」


淳二   「その言い方やめろ。誤解を招くだろが。」


      「海にプールに川、どんだけ淳二の水着姿見た事かしらね。」


      「そうそう、どうしても見れない部分もあったけどね。」


淳二   「簡単に見せるかっっ。」


      「意外と身持ち堅いのよね。見かけによらずね。」


淳二   「なんなんだよ、お前ら、俺はいたって真面目な男なんだよ。」



最後の俺の言葉は無視して、笑いながら向こうに歩いていった。



理沙   「ジーン、愛されてるね。嬉しいね。」


たぶん理沙は本当にそう思っているんだと思う。


俺は、≪まあな≫ とだけこたえていた。








真がこれからの行程とかいろいろと説明をした後、それぞれの車で目的地を目指す。


台数を減らす為に乗り合わせが普通だが、俺達は二人で行くことにした。


真もいつも単独で車を出すからそれに関しては俺に何も言えない。


皆がそれぞれに車へと向かっていく中、真に付き合って俺達は最後までその場に残っていた。




真    「ちょっと待ってろ。俺のクールビューティーを連れて来るからさ。」


他の奴らが居なくなるまで口にしなかった真のクールビューティー。


真は、麻子を気にしてのことだと俺は思っていく。


麻子はサークルには入ってないが、ここの仲間同然。皆麻子が好きだからだ。


真が連れて来たのはスラッとしたショートカットの綺麗な女の子だった。



理沙   「容子…。」


隣の理沙が容子とつぶやいたのを聞いた俺は、まさか、と嫌な予感がしてきた。


容子   「理沙…、バレちゃったね。」


理沙が容子と言う子へと走っいき、いきなり抱きついていく。


そのまま何やら会話をしているようだったが、今は俺の隣にいる。



真    「理沙ちゃん、容子と友達?」


理沙   「うん、友達。とっても仲良しなの。」


真    「あ…、そっか、俺の大切な人だからね。容子。心配しないで…。」


理沙   「でも……。」


淳二   「理沙、いいから、真と彼女の問題だからな。俺達が口出す事じゃない。」


理沙   「うん…。容子を…、宜しくお願いします。」


切実そうな理沙の声に苦笑いの真がうなづいていく。




理沙と彼女が話しているのを見ながら俺は真をじっと見ていた。


真    「悪かったな…、理沙ちゃんの友達って知らなくてさ。」


淳二   「仕方ないさ、理沙をお前に逢わせなかった俺が悪いからな。」


真    「あのさ…、俺、麻子は好きだ。大事だよ。でも、容子も好きなんだ。勝手だけどな…。」


淳二   「ああ、勝手な奴だな。お前って奴は。すぐばれるぞ。わかってるのか?」


真    「ああ…、覚悟している。俺も、容子も…。」


淳二   「そっか…、それなら俺は何も言わない。ただ、理沙を巻き込むな、いいな。」


真    「ああ、それは約束する。悪いな…、いつも。」


淳二   「ああそうだ。お前はいつも俺にやっかいごとを持ってくる。」


真    「淳二、良かったな。幸せそうだな。」


淳二   「勿論、幸せだ。これ以上ないくらいだ。」


真    「お前の口からそんな事聞くなんて思ってもいなかったよ。」




俺は何もこたえずに笑うと、行くか? と歩き出していた。



俺達の前を真と彼女が仲良く歩いていく。


その微妙な距離が二人の罪の分の距離だと思ってしまう。



理沙   「ジーン、真さんには…、その……。」


淳二   「そうだ。だから、俺達みたいにべったりくっつけない。」


理沙   「もう、ジーンたら…。」


淳二   「余計なことは何も言うな。たぶん、皆気づいている。でも知らないふりをしているはずだから。」


理沙   「それって…、何で?」


淳二   「真を見ていたらわかるからな…、彼女を好きだって事がな…。」


理沙   「皆…、優しいんだね。」


淳二   「優しいかどうかは微妙だけどな。麻子、真の彼女を思うとそうは言えないしな。」


理沙   「うん…、哀しいね…。」


淳二   「理沙、せっかく楽しい週末、二人で楽しく俺はしたい。」


理沙   「うん、私も、ごめんね…。」


淳二   「気にするな、でももう何も言うなよ。ここまでだ。いいな。」




俺は理沙を引き寄せて安心させるように歩いていた。




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