№13
昼過ぎ、俺は一度部屋に戻り軽くシャワーを浴びて学校へと向かった。
新学期がはじまってから二度目の大学。
一度は入学式の日、俺はその時に三年にあがってするべき事を全部済ませてから
アトリエに向かったからだ。
真 「おーー、やっと出てきたな。忘れるとこだったぞ。」
疲れている俺は何も言わずに椅子に座り机に突っ伏していく。
それでも俺の親友と言うべきこの男は話すのをやめない。
まったく俺が興味もない事を延々と話している。
そんな中、真が言った一言に俺は眉があがった。。
真 「一年にクールビューティーがいるぞ、すげー綺麗だ。」
面白そうに話す真。俺は咄嗟に理沙の事が浮かんできた。
真 「まぁ、女に興味のないお前には関係ない事かも知れないがな。」
わかって言ってるのか、それともわざとなのか、真は俺をイライラさせる。
真 「お前の事だから、適当によろしくやっているとは思うけどな。」
俺は返す言葉がなかった。否定できないのは自分が一番知っている。
俺も男なわけで、一応健康な身体を持っている。
たまにやってくるどうしても回避できない欲求を満たす事をこいつは知っている。
真 「でもな、その子はどう言うわけか俺に夢中らしい。」
思わず机から顔を上げた俺に真はニヤニヤと笑っている。
真 「お前にはあげない。悪いけどな。」
淳二 「いらねーよ…。」
俺のイライラがますます増殖していく。
真 「欲求不満だって顔に書いてあるけど、そうなのか?」
図星をつかれた俺は、たぶん真から見てもそんな表情をしているはずだ。
真 「あっはは……。慎み深いね淳二君は…。」
淳二 「何が言いたいんだよ…。」
真 「いや、別にただ…、身体に悪い事はしないほうがいいんじゃないかなって思っただけさ。」
たぶん今の俺は変な顔をしているはずだ…。
それが何なのかはわからない。
いや…、わからないようにしている俺だからだ。
真 「今夜街に出るか?付き合うぞ。」
淳二 「行きたきゃ勝手に行け。俺にかまうな…。」
真 「素直じゃないな~~~。」
ニヤニヤと笑う真。ますます不機嫌な俺。
淳二 「俺、帰るわ…。」
それだけ言うと俺は真の言葉を振り切り気づいたら車に乗っていた。
そして、俺は真の言葉に動かされるように欲求を満たす為に携帯をつかんでいた。
亜子 「久し振りね、もう、来ないのかと思っていたわ。」
淳二 「ああ、そのつもりだったけどな。」
亜子 「相変わらずつれないわね。まあいいけど…。」
淳二 「お前も忙しいだろ?」
亜子 「ふふ…、まあね、いろいろと…、忙しいわ…。」
首筋に残る紅い印が男の存在を知らしめる。俺は亜子につけた事は一度もない。
そんな俺たちは似たもの同士なのかも知れない。
俺と亜子には会話もなければ、そこに辿り着くまでの甘い時間もなかった。
簡単に言えばそれだけの関係。それしかお互い望んではいない。
亜子が俺の目の前に立つ。それはいつもの事。
それに応えるように俺も亜子のTシャツを一気に脱がした。
無数に散らばる紅い印。
ブラを引き上げると血のような紅い印が色濃く残っていた。
俺の下半身をまさぐる亜子の手と口。
もう既に俺は限界に来ていた。
視線を落とすといつものように傅く亜子と俺の分身を咥える亜子の唇。
引き離そうとしても亜子がやめない。このまま俺にイケと言うことらしい。
亜子が俺を丁寧に濡れたタオルで拭ってくれている。
亜子 「淳二…、今日が最後よ、私…、好きな人ができたの。ごめんね…。」
淳二 「そっか…、良かったな。幸せになれよ。俺の事は忘れろ。俺もお前の事は忘れる。」
好きな男への一途な思いと俺への最後の思いやりだった。
亜子が俺に身体を許さなかったのは……。でも俺を果てさせてくれたのは…。
虚しさとやりきれない思いとで俺は部屋に帰ってきた。
そのままバスルームに直行した俺は亜子の香りを落とすように頭からシャワーを浴びる。
決して愛してなどいなかった。性欲処理の為だった。
それでも、嫌ではなかった亜子。最初に拒否したのは俺。
それだけの関係に持っていったのも俺。
真とは違う俺の事を理解してくれている人が去っていったのが寂しかった。
会話もないが、俺を受け入れていた亜子に対して、
勝手に親友の位置を与えていたのかもしれない。
酷い男だったろうな…、俺って奴は。
そんな事を思いながら俺はシャワーを浴びていた。
「理沙……。」
その名前を呼んでる俺がいた。
無意識に理沙を求める俺、
淳二 「しばらくは…、逢えないな……。」
自分の行動に自信がない俺は逢わない事を選んでいた。