一生旦那様と子作り行為したいので
イゼロガンダ・グラドム公爵令息が薬物の研究を王族に認められ、オダック男爵位を得て半年後、彼のもとに一人の令嬢が輿入れに来た。
ナルムエリラ・ラーダン男爵令嬢。
貧乏男爵家で育った彼女が、イゼロガンダを選んだ理由。
まずは家柄だ。
今は男爵だが、公爵家の後ろ楯はバカにならない。
次に金銭。
前述のように薬物の研究を認められ、さらに販売したことで富を得たから。
そして所作。
正直外見は、下ぶくれの顔で肉に目鼻が埋もれていて、小躯で太り気味。だが、公爵家の出身なだけあってしぐさが洒脱で上品で、つい見とれてしまったのだ。
さすが元上級貴族、と間抜けにも口を開けてしまい、慌てて閉じたのは秘密。
はっきり言おう。あの指で自分を触ってほしいと、さらに深い密接を肉体が求めたのだ。
初夜を迎えるに当たって、イゼロガンダは申し訳なさそうな表情を浮かべていた。
「すまない、君ほどの愛らしい女性なら他に求婚した令息がいただろうに」
「イゼロガンダ様、そんなことはおっしゃらないでください。あなたがわたしを選んでくれてわたしは嬉しいのですから」
このあとがよければ最高です。
本音は必死で押さえた。
期待に胸をふくらませて迎えた本番。
予想を遥かに上回る僥倖に、ナルムエリラは身も心も蕩けてしまった。
いや、イゼロガンダの慈愛を受けるだけで満足できず、煩悩に従って欲に溺れた。
結果、日が昇る頃には声が嗄れ、全身を筋肉痛が襲った。部屋中には情交の残り香なんて生易しい質ではなく、牡と牝の臭いが濃厚に染み着いた。
お互いの使用人がたじろがず、ニヤついていたのが幸いか。
さて、オダック男爵領は正直娯楽らしき娯楽はなく、平たく言えば花街や娼館なんてものはない。女性相手に性を売る男性を供する店は尚更だ。
ゆえに、性欲をぶつける方法は限られている。
それは、オダック男爵夫人となったナルムエリラにも言える。
何せ旦那との行為で官能の花が咲いてしまったのだから。
結果-ー
結婚して一年で新たな生命を授かったナルムエリラ。イゼロガンダはそれまで以上に仕事に励み、領地を潤した。
やや子を身体に宿した妻を夫は気遣い、乳母を雇うだけでなく、自らも妊娠や育児について学び、その一方で考えを新たにした部分も存在した。
病気を治す薬剤を作るだけでなく、病気になりにくくする方法を、領民に知らしめたのだ。
第一子はまるでそれが当たり前のように、するりと産まれた。もちろんそれは当たり前でない。
イゼロガンダは眼球がしぼむ程の涙を流し、妻と子供の無事を感謝した。
乳母と夫と一丸となって、子育てに時間を費やす日々。三ヶ月も経つ頃には、オダック男爵夫人はお預けになった性欲のぶつけ合い……もとい、二人目を作ることも考えていた。
でも、オダック男爵に難色を示される。
母体に危険が伴う、と。
自分の身体が自分のものでないと痛感したナルムエリラ。その場は引いた。
再開が許された直後、ケダモノになったのはしかたなかろう。
十年後、オダック男爵が子爵に陞爵されたのだが、イゼロガンダとナルムエリラとの間には男子四人女子三人の合計七人の子宝に恵まれていた。
しかし、社交界では密かに別の噂が流れていた。
ナルムエリラの容姿である。
子を宿して産み落としても、時を重ねても、外見に陰りが見られず、むしろ磨かれていく彼女。イゼロガンダは不老の薬を開発したなんてデタラメが飛び交ったこともあった。
無論イゼロガンダは否定した。
そのような秘薬を作れる能力はない。ナルムエリラの気質だと。
ナルムエリラはこう答えている。
「わたしの大切な人への愛が作用しているようで嬉しいです。旦那様や子供たち、領民の方々に」
自明の理を率直に言うには破廉恥だ。
「一生旦那様と子作り行為したいので」




