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LEPUS  作者: 杠まさよし
4/6

第4話 「説明ちゃんとせい!」

前回の簡単なあらすじ

狼にむしゃむしゃされた。

5000字超えちゃった。

以上。

ゆっくりと目を開けると、見慣れない白い天井が視界に入った。


鼻を突く薬品の匂いで、霞んでいた意識が次第にハッキリしてくる。


そうだ、自分は狼に襲われたのだ。


腹を割かれ、内臓を――そこまで思い出して、ミツキは弾かれたように上体を起こした。


慌てて病衣の上から自分の腹部をまさぐる。


痛みはない。生々しい傷跡も、血の感触も完全に消え去っていた。


深く安堵の息を吐き出し、ミツキは辺りを見回した。


白いカーテンに囲まれた一人用のベッド。


着ていた服は病衣に替わり、足元には自分の靴が揃えられている。


意識を失う直前、仲間のシオンが助けに来てくれたことを思い出した。


「敵の姿はない」と言っていたはずだ。


ならば、ここは組織の施設内だろう。


ベッドから降りて靴を履くが、足元がおぼつかない。


ふらつきながらもカーテンを開けると、そこは医務室のような部屋だった。


壁には薬棚や本棚が並び、中央には机と椅子、そしてソファが置かれている。


人の気配はない。


ミツキは力尽きるように、近くのソファへと腰を下ろした。


背もたれに深く体を預け、ぼんやりと天井を見上げていると、不意に扉が開いた。


「あ、ミツキ。よかった、目が覚めたんだね」


「……シオンくん。あ、う……ん?」


体を起こし、声のした方を見た瞬間にミツキは固まった。


「……その顔、どうしたの?」


「え、これ? ああ、ええと……まあ、気にしないで!」


シオンの左頬には、鮮やかな「もみじ」の形をした指の跡がついていた。


(めっちゃくちゃ気になる……)


ミツキは内心でツッコミつつも、本人が必死に誤魔化そうとしているので、それ以上追求しないことに決めた。


「息を吹き返したかと思ったらまた意識を失うから、本当にびっくりしたよ。……体調はどう? どこか痛むところはない?」


シオンはミツキの隣に腰を下ろし、心配そうに尋ねてくる。


「大丈夫。……ねえ、狼の面を被った人を見かけなかった?」


「……いや、俺が駆けつけた時は、倒れている君と魔物の死骸しかなかったよ」


「……実は、あの時……」


ミツキは五階で目撃した光景と、そこで起きた出来事をすべて打ち明けた。


シオンは途中で言葉を挟むことなく、最後まで静かに耳を傾けてくれた。


────── ────── ──────


「……なるほど。勤務初日から『役者』と出会うなんて、悪い意味でツイてるね」


「や、役者……?」


シオンの言葉に、ミツキは思わず首を傾げた。


「知らないの? いや、知らないはずはないよ。アカデミーの講義で必ず習うんだから」


「あ、いや、その……ほら、起きたばかりでまだ頭が回っていないというか。ね?」


必死に弁明するミツキに、シオンはジトッとした疑いの眼差しを向けてくる。


「じゃあ、頭が回るようになるまで待とうか。知っていることなら俺が説明する必要もないし、別の話をしよう」


「……すみません。嘘をつきました。座学の時間、たまに寝てました」


シオンは「やっぱりか」と言わんばかりに深くため息をつくと、観念したように語り始めた。


「まず、『新世会しんせいかい』については知ってる?」


「あ、新しい世界を創るのが目的の、宗教組織……だっけ? テレビで一度、見たことがある気がする」


「それもアカデミーで習うんだけどな。まあ、宗教というよりは犯罪組織だね。誘拐、殺人、非道な人体実験……やってることは極悪そのものだよ」


シオンは少し間を置いてから、再び語り始めた。


「その一員に『仮獣劇団かじゅうげきだん』という連中がいてね。黒ずくめに動物の面を被った集団だ。彼らは与えられた役を忠実に演じることから、通称『役者』と呼ばれているんだよ」


「……どうして、わざわざ役を与えられて演じているの?」


「それは第四部隊の隊長に聞いて」


「へ? え、ちょっと……」


突然投げやりな返答をされ、ミツキは目を丸くした。


そんな彼とは対照的に、シオンは落ち着いた様子で、震え出したスマホをポケットから取り出し、耳に当てる。


「……あぁ、はい。分かった。今から連れて戻りまーす」


手短にそう告げると、シオンはスマホをポケットに収め、スッと立ち上がった。


「あに……いや、第二部隊の隊長がお呼びだ。詳しい説明はまた後で。……歩ける?」


「あ、うん。大丈夫」


ミツキが立ち上がると、シオンはすぐに歩き出し、部屋を後にした。


その背中を追うように、ミツキも廊下へと踏み出す。


あの狼はなぜ、自分を連れ去ることなく姿を消したのか。


そもそも、なぜあの場所にいたのか。


次々と浮かび上がる謎は、霞がかかったように実体を結ばない。


今はまだ、答えに辿り着けそうになかった。





【舞台裏】シオンのもみじ模様の理由


ミツキを医務室のベッドに横たえた後、任務報告のために第二部隊へ戻ろうと廊下を歩いていた時のことだ。


「シ~オ~ン~!」


バシィィィッッ!


「イッテェッッッッ!!?」


不意打ちで尻に凄まじい衝撃が走った。


肉が激しく波打ち、爆ぜるような鋭い痛みが脳を突き抜ける。


衝撃は尾てい骨を伝って背骨まで一気に駆け上がり、あまりの痛熱さに、建物全体に響くほどの絶叫が漏れた。


火を押し当てられたようなジンジンとした痺れに耐え、尻をさすりながら恐る恐る振り返る。


「……あのチビを医務室に運んで、何してたのよ?」


そこには、腕を組みながら軽蔑しきった瞳でこちらを射抜くユイカが立っていた。


その隣では、ユイが何も言わず、ただじっと俺を見つめている。


「チビって……ミツキのこと? 何してたって、ただベッドに寝かせただけだけど」


反射的にミツキのことだと理解して答えたが、その言いぐさには少し棘を感じる。


「で? 寝かせてから何を『した』のよ」


「……?」


ユイカの意図が掴めず、俺は首を傾げた。


運んでいるところを見たのなら、彼が意識を失っていたことも分かっているはずだ。


気を失った相手をベッドに寝かせるのは当然の処置だし、それ以上のことなど、起こす以外に何があるというのか。


「どうせ服を脱がせたりして、いやらしい事でもしたんでしょ! さっさと白状しなさいよ!」


「……っ、してねぇわ!!」


濡れ衣もいいところだ。


思わず怒鳴り声が返る。


幸運なことに、今この廊下には俺たち三人しかいない。それがせめてもの救いだ。


「最初から、あのチビをいやらしい目で見てたのはお見通しなんだから! この、クソボケ!」


「見てえねぇわ! お前こそ何言ってたんだ、このボケ!」


売り言葉に買い言葉で、反射的に荒い言葉を投げ返してしまった。


驚いたように目を見開くユイカの顔を見て、すぐに「やっちまった」と胸の奥が冷える。


「あ……ご、ごめ……」


咄嗟に謝ろうとしたが、それよりも彼女の怒りが沸点に達する方が早かった。


ユイカは大きく身を沈め、腰の入った完璧なフォームから右腕を振り抜く。


「死ねぇぇぇぇぇっっ!!」


――パァァァンッ!!


乾いた破裂音が廊下に響き渡る。


視界が白く飛び、首がへし折れるかと思うほどの衝撃が脳を揺らした。


遅れてやってきたのは、左頬に焼き付けられた「手形」の鮮烈な熱と痛み。


「ふんっ。あたしにボケなんて言い返すなんて、百億年早いのよ。行くよ、ユイ! こんなクソ浮気野郎、野垂れ死ねばいいんだわ!」


ユイカは吐き捨てるように言うと、肩を怒らせて立ち去っていく。


妹のユイは、地面に倒れ込んだ俺を心配そうに何度も振り返りながらも、結局は姉の背中を追っていった。


「……理不尽すぎるだろ。完全な冤罪じゃないか……」


頬を走るジンジンとした拍動に耐えながら、俺は冷たい床に這いつくばったまま、ただ遠ざかる背中を見送るしかなかった。

簡単な次回のあらすじ

おいおい、子ども2人いて、50手前の年齢なのに、見た目年齢は20代後半で、たまに口悪いところあるけど、根っこはすんげー優しいママで、組織の中でも勤務歴も、隊長としてやってきた歴も1番長くて、頭いいのに、物理戦闘も強いキャラが出るなんて……性癖歪んじゃうだろ!!

(作者は洗脳済み)


第5話 3月22日 18時~19時の間に投稿

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