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LEPUS  作者: 杠まさよし
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第1話 「トラックに轢かれたからといって、異世界転生する訳では無い」

今作にはややグロ(?)表現があります。

第1話始まりました~。

一応主人公はミツキです。



暖かな春の陽気が差し込む部屋で、目を覚ました。


「……外、明るい… 今何時……?」



床には空になったスナック菓子の袋が散乱している。


そのゴミの山にうつ伏せになったまま、手探りでスマホを掘り出した。


「……八時半……?」


画面に表示された数字を見て、心臓が跳ね上がる。


今日は能力者組織『天衡隊てんこうたい』の入隊式。


開始時刻は午前九時。


「ち、ち、遅刻だァァァァァァァァ!!!!」


跳ね起きると同時に、脱ぎ捨ててあったジャージに足を突っ込む。


リュックを背負い、強引に寝癖を抑えつけながら、スニーカーをかかとを踏み潰すようにして履いた。


「やばい、マジでやばい……!」


玄関を飛び出し、全力疾走でアスファルトを蹴る。


そもそも、昨夜の自分が悪かった。


「明日からついにエリート能力者の仲間入りだ」と浮かれ、深夜に一人で「入隊祝い(自称)」を開催。


お菓子を大量にドカ食いし、血糖値の乱高下に身を任せて気絶するように眠りこけた結果がこれだ。


生活習慣病への特急券を自ら切った報いが、最悪のタイミングで襲いかかっていた。


焦りすぎた彼は、信号の色なんて見ていなかった。


交差点のど真ん中、気づいた時にはもう遅かった。


鼓膜を突き刺すようなクラクション。


目の前に迫る、巨大な鉄の塊。


避ける術など、どこにもなかった。


――ドンッ!


体に猛烈な衝撃が走る。


一瞬だけ突き抜けるような青空が見えたかと思うと、少年の体は数度地面に叩きつけられ、無造作に転がった。



口の中に広がるのは、血と砂利の混じった嫌な味。


遠のく意識の中で、不思議と痛みは感じなかった。


ただ、体の末端から感覚が消えていく。


深く、深い眠りに落ちるように、彼はゆっくりと瞼を閉じた。


葬楽(さがら)ミツキ。齢十六歳。


天衡隊(てんこうたい)の入隊式当日、トラックに轢かれ死亡。


────── ──────


「遅い!」


「遅い……」


天衡隊(てんこうたい)の建物の外で、双子の姉妹が同時に口を開いた。


一人は、眉を吊り上げ怒りをあらわにする姉、中村(なかむら)ユイカ。


もう一人は、物静かに不満を漏らす妹、中村(なかむら)ユイ。


共に「天衡隊てんこうたい第二部隊」に所属する二人は、お揃いの黒い軍服風の隊服に身を包み、赤茶色の髪をハーフツインに結っている。


「いつまで待たせるつもり!?」


「もう一時間以上待ってる……」


赤い薔薇のピンをつけたユイカが詰め寄り、黄色い薔薇のピンをつけたユイがじっと見つめる。


二人の間に挟まれ、困惑しているのは、同じ部隊の虚月きょげつシオンだ。


彼は二人より頭一つ分背が高く、綺麗な金髪と澄んだアイスブルーの瞳が目を引く。


胸元には、二人とは異なるハナミズキのブローチが光っていた。


「……いや、あのさ……」


シオンは困ったように、ようやく言葉を絞り出した。


「……そもそも、なんで君たちはここにいるの?」


シオンの至極真っ当な疑問に、双子は揃って首を傾げた。


「あのね、俺は頼まれてここにいるんだ。『新人隊員の面倒を見てくれ』って。その新人が入隊式に来なかったから、寝坊の可能性も考えて、一応お昼まで待ってようと思ってさ」


「ぶえっくしょん!」


真面目に話を聞くユイと、豪快にくしゃみをするユイカ。


「……で、君たちは? 誰かに頼まれたわけでもないよね?」


「あ、鼻水出てきた」


シオンの問いかけなど耳に入っていないのか、ユイカが当然のように彼の隊服で鼻を拭おうとする。


が、その鼻先が触れるより早く、シオンの両手がユイカの頬を左右にむぎゅっと引っ掴んだ。


「さっさと戻って、魔物討伐の任務でももらってきたら?」


「なにするのよぉ!」


シオンがユイカの頬を左右に引っ張り、双子の妹・ユイがそれを静かに見守る。


そんな、いつも通りの平和な時間が流れていた――。


「ちっ、ちこっ……遅刻……遅刻だ……」


遠くから、今にも力尽きそうな少年がふらふらと歩いてくる。


「えっ、ちょっと君、大丈夫……!?」


シオンは慌ててユイカの頬から手を離し、少年に駆け寄った。


服は血まみれでボロボロ。


リュックの紐はちぎれかけ、靴は片方しか履いていない。


「あ……天衡隊てんこうたいの方ですか……? すみません……もう入隊式、終わりましたか……?」


少年は真っ青な顔でシオンを見つめる。


「入隊式? もうすぐ終わるけど……それより何があったの!? 魔物?」


「いえ……二回ほど事故って、死んだだけです……」


「……うん、ちょっと待とうか」


シオンは一度距離を置き、少年の全身をマジマジと観察した。


足はある。透けてもいない。


泥と血にまみれてはいるが、黒髪には白のインナーカラーが入り、右耳には鮮やかなアウイナイトのピアスが光っていた。


そして何より目を引くのは、必死にこちらをすがるように見つめてくる、赤と青のオッドアイだ。


年齢は自分より少し下、十六歳前後だろうか。


小柄な体躯も相まって、どこか小動物のような危うさを感じさせる少年だった。


「ねぇ二人とも、この子見える?」


「見えるけど」


「見える……」


後ろにいた双子に確認する。幻覚ではないようだ。


「あ、あの……遅刻しましたけど、入隊取り消しとか……されないですよね?」


「……ねぇ、君。自分が死んだことに気づいていないタイプの幽霊だったりする?」


「入隊取り消し! されないですよね!?」


少年のただならぬ気迫に押され、シオンは思わず答えてしまう。


「えっ!? あ、う、うん……ちゃんと理由があれば、たぶん大丈夫だと……思う……」


その言葉を聞いた瞬間、少年はさらにグイッとシオンに詰め寄った。


「本日から第四部隊に入隊予定の、葬楽さがらミツキです! 出勤中に二回事故って二回死んだので遅れました! 入隊取り消し、されないですよね!?」


「……色々聞きたいけど、まずは一番気になることからいい? 『二回死んだ』って何? 入隊したすぎて、怨霊にでもなって化けて出たの?」


シオンがもっともな疑問を口にすると、ミツキは突然スッと姿勢を正し、冷静な口調で語り始めた。


「僕の能力は『復活』です。どんな致命傷を受けても、一度死ねば元通り。ただ、負傷の度合いによって生き返るまでの時間が変わるんです」


「あ、なるほど。……生身なんだね」


一番の謎が解け、シオンはとりあえず胸をなでおろした。


「二回事故った」という点もかなり不穏だが、少なくとも彼が幽霊でないことは分かったからだ。


「あの……それで、遅刻したんですけど、やっぱりクビ……じゃないですよね?」


ミツキがおそるおそる尋ねる。


「ま、まあ……その理由なら、大丈夫……だと思う、たぶん」


シオンが答えた瞬間、ミツキの表情がパッと明るくなった。


「やったー! トラックの運転手さんとあの男の人には悪いことしちゃったけど、何はともあれ、やったー!」


「……ちょっと待って。トラックは分かるとして、その『男の人』って誰!? 二回目、何があったの!?」


思わず身を乗り出してツッコミを入れるシオンだったが、ミツキは「首の皮一枚つながったー!」とその場で小躍りして喜んでおり、全く話を聞いていない。


あまりの「ヤバそうな奴」感に、双子は関わりたくないとばかりに無言で、さらに一歩距離を置いていた


葬楽さがらミツキ、十六歳。


彼の持つ能力は、『復活』。


たとえ死に至る傷を負っても、一度命を落とせば、肉体は傷ひとつない完璧な状態へと再生される。


ただし、死から蘇るまでの時間は、負傷の度合いや遺体の状態によって大きく左右されるという。


そんな彼が本日、天衡隊てんこうたい第四部隊へと入隊する。


第2話は3月19日の18時~19時の間に投稿します。

次回のあらすじは、

天衡隊に入隊したミツキは、早速任務に取り掛かるようです。

え、てか、ミツキは第四部隊なのに、ミツキを任されたシオンは、第二部隊…なぜ?

という疑問も第2話で明らかになります。

お楽しみに!


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