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復讐のバトンタッチ  作者: エデンの園の魔界蛇


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2/13

閻魔大王の判決



 まったく状況は呑み込めないがこの何もない暗闇にいるのは耐えられない。

 扉の中から声が聞こえたということは扉の向こう側には誰かがいるはずだ。


 少なくとも人の声だったのだから扉を開けて熊やライオンがいることはあるまい。


 勇気を出して恐る恐る俺は扉を開けて中に入る。

 そこは正面にいかつい顔をした男と右側の机に書類を置いて座っている痩せた男がいる大きな部屋だった。


 男たちのことは知らないが部屋の中は明るくてそれだけでも俺はホッとする。



「松嵐幸人。席に座りなさい」



 右側の机に座ってる痩せた男が俺に声をかけてくる。

 俺はこの男のことは知らないが相手は俺の名前を知っているようだ。事情を説明して欲しいが俺自身も何から質問していいか頭が混乱していた。



「早く座りなさい」



 俺が身動きできないでいると、再度、痩せた男が俺に言葉をかけて部屋の中央の方を指差す。

 そこには部屋の真ん中にポツンと椅子が置いてある。



 ここに座れってことか。



 とりあえず俺は大人しく椅子に座ることにした。

 そして俺の目の前のいかつい顔の男の方を見る。



 こいつは誰だ? なんか怒ったような顔してるけど俺とは初対面のはずだし。



 さらによく見るとその男の机の上にはプレートがあって「閻魔大王」と書いてある。



 えんまだいおう?

 閻魔大王って死んだ奴を天国か地獄に行くか決める奴のことじゃなかったっけ?

 え? ちょっと待ってくれ!ってことは俺は死んだのか? マジで? あの島から自由になれる一歩手前までいったのに?



「これより審議を始める」



 閻魔大王と思われるいかつい顔の男が低い声で宣言した。



「ちょ、ちょっと待ってくれ! 俺は死んだのか!?」



 動揺した俺は椅子から立ち上がろうとしたが不思議な力が働いているのか立ち上がれない。



 なんだよ! 縛られてもいないのに身動きできねえじゃねえか!



「審議中は静かに。お前は死んだからここに来たのだろうが」



 焦る俺に閻魔大王は不機嫌そうな表情をして冷たい視線を俺に浴びせる。



 マジかよ! クソッ! 本当に俺は死んじまったのか!?



 俺はショックを隠せなかった。この場から逃げ出したい気分になったがやはり身体は椅子から動かない。

 すると右側の痩せた男が書類を見ながら話し始める。



「松嵐幸人。享年18歳。住所○○県△△島✕✕町。保育園の頃から同級生にいじめられる。主ないじめとしては……」



 痩せた男が俺の保育園からの同級生から受けたいじめの数々を書類を見ながら読み上げる。



「給食に鉛筆削りのカスを入れられること数十回……」



 そんなこともあったな。

 だがそんなのはまだ序の口だ。


 過去に奴らにやられたいじめの数々が脳裏に蘇ってくる。

 しかし自分の受けたいじめの数々を他人に説明されるほど惨めなことはない。


 痩せた男は淡々と俺の今までの人生を語っていく。

 俺は身動きすることを諦めてその言葉を聞いていた。自分が経験してきたいじめとはいえ聞いてるだけで胸くそ悪くなってくる。



 よく俺って自殺しなかったよな。

 あ、でも結局死んだんだから同じようなもんか。



「高校を卒業した日。道路に飛び出して車に轢かれて死亡」



 やっぱりあの最後に聞いた音は車のブレーキ音だったのか。



 最後に右藤の奴に卒業証書の筒を道路に投げられた光景を思い出した。



「ふむ。なかなか悲惨な人生だな」



 閻魔大王に「悲惨な人生」って言われるなんてなんだか笑えてくるぜ。



「では判決を言い渡す。松嵐幸人は魔界の地獄行きとする」


「はあ!? ちょっと待てよ! なんで俺が地獄行きなんだよ!?」



 どう考えても俺は悲惨ないじめを受けた被害者だろうが!

 そんな俺がなぜ地獄に行かないとなんだよ! この閻魔大王は頭おかしいのか!?



「お前を轢いた車の運転手は死亡した。お前が道路に飛び出さなければ運転手は死ぬことはなかった。よってお前は地獄行きだ」


「それなら俺の卒業証書の筒を道路に放り投げた右藤はどうなったんだ! そいつが原因だろうが!」


「その人物はまだ死んでいない。よってその人物を今処罰することはできない」


「そんなのおかしいだろ!? 俺が受けた同級生からのいじめに対する慈悲があってもいいんじゃないのか!?」



 俺は閻魔大王の言葉に嚙みついた。


 俺が地獄行きなんてどう考えても納得がいかねえ。

 それに俺が死んで同級生たちが生きてることにも納得できない。



「とにかく判決は出た。魔界の地獄行きの船を待て」


「だから、ちょっと待てって! …うわああ!」



 どこからか現れた二匹の鬼に両脇を抱えられて俺は閻魔大王の部屋から退室させられる。



 クソッ! なんなんだよ! この判決は!




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