木山宏美への復讐6
「なんで私がこんな目に合わないといけないの」
宏美はバイト先からの帰り道に呟く。
昨日、二番目の夫だった弘和に犯されて身体のあちこちが痛む。
弘和は「また来る」と言って出て行ったが宏美は弘和と復縁するつもりはない。
結婚した三人の男の中では弘和が一番クズ男だったからだ。
弘和と復縁するぐらいならまだ義彦と復縁した方がマシだ。
俺は力なく歩いている宏美を見て次の罠へと宏美を導いてやることにした。
「そこのお姉さん。元気なさそうですが一杯どうですか? 今日は女性のお客様に限り一杯無料サービスを行っております」
中村に変身した俺は宏美に声をかけて無料券を渡す。
宏美はしばしその券を見つめていたが俺を疑わしそうな目つきで見る。
「本当に無料なんでしょうね?」
「もちろんです。嘘は吐きませんよ」
「それなら一杯だけ飲むわ」
「ありがとうございます。どうぞ、お店へ」
俺は宏美をバーに案内した。
宏美が席に着くと俺はカクテルの準備をしながら宏美に声をかける。
「私は中村と申しますがお客様のお名前は何でしょうか?」
「なんで私の名前を言わないとなのよ?」
「私の特製カクテルはお客様の名前からイメージしてひとりひとり違う味の物を出しているのです。ですからお名前を教えていただきたくて」
「変わってるわね。まあ、いいわ。私は木内宏美よ」
「木内宏美様ですか? そういえば当店の常連様にも木内様という男性がおられましたねえ。下の名前は義彦様だったかな」
「え! 義彦がこの店に来てたの!?」
宏美は驚いて大きな声を上げる。
「ええ、昨夜もいらして飲んで行きましたよ。なんでも一千万の宝くじが当たったお祝いだと言ってましたが」
「い、一千万の宝くじですって!? 私には40万しかくれないで離婚したくせに!」
宏美が怒りで身体をブルブルと震わせる。
もっと悔しがれよ、宏美。
お前の悔しがる顔は何度見ても気持ちいいぜ!
「おや、宏美様と義彦様はご夫婦だったのに離婚されたのですか?」
「そうよ! 義彦に会って慰謝料をふんだくってやるわ!」
宏美が携帯電話で義彦に連絡するが着信拒否をされているらしく繋がらないようだ。
「義彦の奴、逃げたわね! どこに行ったのよ! ねえこのバーにまた義彦は来るの!?」
「いつ来るか分かりませんねえ。義彦様はしばらく忙しくて来れないと昨日仰っていましたし」
「そ、そんな……」
「宏美様。もし義彦様のことを探すならこの探偵事務所に頼んでみたらどうですか?」
俺は一枚の探偵事務所の名刺を差し出す。
さあ、宏美よ。この名刺は地獄行きの切符だ。受け取れ。
宏美は俺から名刺を受け取った。
「でも探偵事務所ってけっこうお金がかかるんじゃないの?」
「お金がかかったとしても義彦様から慰謝料をもらった時にそのお金で支払えばいいじゃないですか。だって義彦様は一千万持ってるんですよ。半分だって500万は宏美様のものになるのでは?」
「そ、そうよね……500万あれば貧乏ともおさらばだわ。いえ、今回は義彦が悪いんだから一千万全部慰謝料としてもらってやるわ!」
おいおい、義彦の全財産を奪う気か?
お前の性悪な性格は健在だなあ。だがそううまくいくと思うなよ、宏美。
「この探偵事務所に行ってみるわ。ありがとう、お兄さん」
宏美は嬉しそうに店を出て行く。
宏美にお礼を言われるとはねえ。
さて次は探偵事務所で宏美を待ち受けるか。




