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勝たせる才能は、評価されない  作者: 砂肝


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8/8

第9話 数字には載らない答え

「答え合わせは、あとから来る」


 それから数年が過ぎた。


 俺は、相変わらず同じ場所にいた。

 有名校でも、強豪でもない。


 スポンサーも、いない。

 評価表に名前が載ることもない。


 それでも、毎年グラウンドには人が集まる。



「先生、紹介したい人がいます」


 そう言って現れたのは、桐生だった。


 体つきは変わったが、

 走り方は、あの頃のまま。


「大学でも、壊れなかったですよ」


 笑いながら言う。


「使い切られなかった分、

 まだ余裕があるみたいです」


 それは、最高の報告だった。



 彼だけじゃない。


 あのチームの選手たちは、

 誰一人、競技を途中で辞めていなかった。


 トップに行った者もいれば、

 裏方に回った者もいる。


 だが全員、

 「続けている」。



 ある日、一本のメールが届いた。


 件名は短い。


 「指導法について」


 差出人は、聞いたことのある名前だった。


 昔、視察に来た元指導者。

 今は、育成部門の責任者らしい。


『君のやり方は、

 結果だけ見れば正解ではない』


 そこまで読んで、少し笑った。


 分かっている。

 最初から、正解じゃない。


『だが、

 長期的に見れば、

 うちが一番欲しいタイプの人間を育てている』



 グラウンドを見渡す。


 今日も、全力は出していない。

 無理も、させていない。


 それでも、

 選手たちは前に進んでいる。



 ノートを開く。


 最後のページは、白紙だった。


 しばらく考えてから、

 ゆっくり書く。


 「数字は、道具だ」

 「人を削るための理由にした時、

  それは凶器になる」


 ペンを置く。



 勝たなかった試合は、数えきれない。

 失った評価も、金も、確かにある。


 それでも。


 壊れなかった人生が、

 ここには積み重なっている。


 答え合わせは、

 いつも後から来る。


 そしてたいてい、

 数字には載らない。



 ――完。


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