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勝たせる才能は、評価されない  作者: 砂肝


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6/8

第6話 数字を捨てた男」

 敗退から一週間。


 グラウンドは、いつもより静かだった。

 スポンサーのロゴが入った備品は、すでに片付けられている。


 金が引いた後は、驚くほど早い。


「後悔してるか?」


 鷹宮が、珍しくストレートに聞いてきた。


「……いいえ」


 即答だった。


「勝率を下げた。

 評価も、金も、全部失った」


「それでもです」


 鷹宮は、しばらく俺を見てから、息を吐いた。


「なら、いい」


 それ以上、何も言わなかった。



 その日の午後。


 見知らぬ番号から、電話が来た。


『桐生恒一くんだね』


 落ち着いた声。

 年配の男だった。


「はい」


『先日の大会、見ていた』


 胸が、わずかに緊張する。


『君がエースを外した判断だ』


 やはり、その話か。


「結果は、敗退でした」


『承知している』


 男は、そこで一拍置いた。


『だが、私はあの判断を評価している』


 耳を疑った。


「……なぜですか」


『勝率ではなく、持続性を選んだからだ』


 持続性。

 初めて聞く評価軸だった。


『短期の勝ちは、金で作れる。

 だが、選手を守りながら勝ち続けるのは、難しい』


 男は名乗った。

 大学の研究機関で、スポーツデータと育成を扱っている、と。


『一度、話がしたい』



 指定された場所は、大学の施設だった。


 ホワイトボード。

 並ぶグラフと数式。


「君のノート、見せてもらった」


 男は、真剣な目で言った。


「勝率だけでなく、

 “壊れる確率”を書いているのがいい」


「書かないと、判断できないので」


「多くの人間は、見ないようにする」


 その言葉に、胸が静かに鳴った。


「君は、才能を失ったんじゃない」


 男は、はっきり言った。


「評価軸を変えただけだ」



 帰り道。


 夕焼けのグラウンドを見ながら、俺は立ち止まった。


 勝たせる才能は、評価されない。

 そう思っていた。


 だが。


 評価される場所が、違うだけだったのかもしれない。


 スマホに、メッセージが届く。


『次の大会、手伝ってほしい』


 送り主は、別の学校のコーチだった。


 勝率だけを求めていない、文面。


 俺は、ノートを開いた。


 最初のページに、こう書き足す。


 「勝たせる才能は、評価されない。

  だが、消えるわけじゃない」


 ゆっくりと、

 次の数字を書き始めた。


感想をいっぱい書いてください!!!!

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