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06S.空間のクビキ

蜃気郎は「ホタルのツガイ」でしたので「彼女の過ちを見届ける義務が、有りました。」彼女は、気乗りしなかったので、彼だけでも「その場所を見に行きたい」と、思いました。しかしホタルが蜃気郎に、べったりでしたので、彼女も「蜃気郎と一緒だったら、見に行っても良い。」と、言いました。そこで、彼女と2人で「拷問部屋」の埋葬場所まで、行くことにしました。


「ホリエナ城」は、西洋風の大きな城でしたので、現場まで行くのに、時間が掛かりました。暗い地下階段を、降りて行くと、この屋敷の地下施設に、やって来ました。ホタルは、何も考えて居ないようで、無邪気に蜃気郎の腕に、身体を密着させて、付いて来ました。「仕置き部屋」が、有り「拷問部屋」は、若い娘達が殺害されて、埋葬された場所でしたので、少し「嫌な感じ」のする場所でした。「殺された怨念」が、籠って居るからでしょうか。不気味で、恐怖を感じる場所でした。


蜃気郎とホタルは、まず「仕置き部屋」に、入りました。その部屋は意外な程、広くて「何も無い場所」でした。奥の方に牢屋が有り、その牢屋に被害者達を監禁して、日々ホタルが通い詰めて、彼女達のバイタリティを、奪いました。その牢屋からは、微かに「若い淫獣」のような匂いが、漂いました。彼女は、その部屋には、もう既に興味を、無くしました。蜃気郎は、その部屋を一通り調べると「ここは問題無し」と、判断しました。


次に被害者達が、埋葬された「拷問部屋」の探索に入りました。ここも「広めの部屋」で有り、昔は拷問具が、たくさん置かれて居たと、思えるような痕跡が、見られました。今は何も置かれていない「殺風景な部屋」でした。部屋の手前側には、石畳が敷かれて、奥の方が土間のような、手付かずの土が、露呈しました。


そこに「3つの盛り土」が、された場所が、有りました。そこが、ホタルが殺害した娘達を、埋葬した場所でした。ホタルは全く、無表情な顔でした。別に悔い改める訳でも無く「こんな場所に、連れて来ないでよ。」的な、態度でした。


この世界は「善なる神」で有る「左側神ミカエフ」が、支配する世界でした。この世界には「悪人の居場所は、有りませんでした。」この世界の魔人類達は皆、心の奥底に「どす黒い悪意」を、宿しました。それは、この世界の魔人類で有る、蜃気郎の内面にも、有りました。ただそれは皆が皆、決して開いてはイケないものでした。開けた者には、それ「相応の代償」を、支払わなければ、この世界に存在することが、出来ませんでした。


ホタルは「悪意を開放」しましたが、まだその代償を、支払って居ませんでした。或いは、このときを、待って居たのかも、知れませんでした。彼女が「悪意の代償」を、支払うときは、彼女のツガイと成った蜃気郎が、ここに来るときだったのです。その為、敢えて「空間のクビキ」が、保留に成りました。


すると「ホタルの身体」が、空中に舞い上がりました。これから何が起きるのか彼女は、理解したようでした。彼女の顔が、急に真っ青に成りました。彼女の、身体中の骨が、軋むような音がしました。それから彼女の内部の骨が、粉砕されるような音もしました。ホタルは、物凄い激痛を感じました。そして蜃気郎に救いの手を、差し出しました。「由美ちゃん、助けて!」


蜃気郎はホタルが、このような目に、遭うことを、初めから分かって居ました。彼に取って彼女は、今ではとても大切な「ツガイ」相手でした。そのホタルを失うことは、断じて出来ませんでした。すると蜃気郎の目が、妖しく光りました。そして不思議なことに「空間のクビキ」が、止まりました。


ホタルは、激痛を我慢しながら、空中に浮かんで居ました。すると今度は、ホタルの目が、妖しく光りました。そして彼女の身体が、空中から解放されて、静かに蜃気郎の腕の中へと、降りました。ホタルが彼に、言いました。「早く病院へ、連れて行って。」彼女は、それだけを言うと気を失い、蜃気郎の腕の中で、深い眠りに就きました。


鳴神蜃気郎は、ホタルの「Mサークル」を、取り出すと、自分の部屋の中に、直結しました。すると2人は、彼の部屋に戻ることが出来ました。そして蜃気郎は、ホタルを、病院に連れて行きました。ホタルは、緊急入院と成りました。病状は「全身複雑骨折で、全治半年と、診断されました。」


また、彼女を診察した医者が、驚きました。「ホタルの症状は〝空間のクビキ″に依る外傷に、極めて近い症状で有る。」と、言われました。また一度でも、それに襲われると、途中で解放されることが無く「生還出来た者は、この世界には、まだ1人も居ない。」と、蜃気郎は聞かされました。彼は、見たことを黙って居ました。ホタルが入院中の「彼女の保護者」は、彼に成りました。これから長い間、彼が彼女のリハビリを、手伝うことに、成りました。


ホタルが入院中に蜃気郎は、気に成ったので1人で、ホタルの屋敷に、行きました。そこは既に彼の部屋とは「Mサークル」で、繋がって居たので、容易に入ることが、出来ました。そして、ホタルが「空間のクビキ」に、捕縛された場所に行きました。


その「拷問部屋」に、初めて行ったときには「殺された者の怨念」が、籠って居るような「不気味な恐怖」を、感じる場所でした。しかし今では、全く雰囲気が、変わりました。何の陰気さも無い、普通の場所でした。蜃気郎は、改めて1人で「拷問部屋」に、入りました。そこは以前と同じように「殺風景な石畳」の続く部屋でした。


そして部屋の奥には確か、あの「3つの塚」が、有りました。しかしこうして、あれから再び、ここに来たのですが、不思議なことに、その塚が有りませんでした。「誰かが、塚を暴いて、死体を何処かに運んだのでしょうか。」しかし屋敷内には、初めから誰も居ませんでした。またここには、外部から他者が入ることも、出来ませんでした。「塚が無い」それは、不思議なことでした。


しかし蜃気郎は、直ぐに理解しました。それはホタルが「空間のクビキ」に、遭ったときです。そしてクビキが中断したときのことでした。そのときにホタルが、犯して居た「3人の殺害」と、言う事実が、瞬時に無くなったのです。「無くなった」と、言うことは「彼女は3人を、殺して居ないことに、成りました。」殺害した事実が、根本から無くなったので「3つの塚」が、消滅したのです。だから、あの3人の被害者達は、今では生前のままに、ホタルに殺される前の生活に、戻りました。


そんなことが目の前で、一瞬に起きることは、神にしか出来ないことでした。そしてホタルを襲った「空間のクビキ」が、停止したのは「左側神ミカエフ」の力が、作用したからだと、思われました。また「クビキ」と言う言葉は「右側神の前神」で有る「原初の魔神」が、良く使う「御力みちから」でした。


その「空間のクビキ」には「昔から右側神の力が、作用して居る。」と、この世界では、言われました。あのとき偶然に「左右神の御力」が、作用したので、ホタルを襲った「空間のクビキ」が、停止したものと、思われました。


「城ヶ崎ホタル」は、長いリハビリと「鳴神蜃気郎」の懸命な介護により、奇跡的に体調が、回復しました。彼女には、クビキに依る障害が、何も残らずに、以前のような、美しい状態に戻りました。彼女は、そこで半年後に退院すると、以前と同じように、蜃気郎との「2人の生活」に、戻りました。


突然ホタルが、言いました。「ねぇ由美ちゃん。あいつらのこと、覚えて居る。綺麗だった由美ちゃんに、いつもちょっかいを出した、あの2人組よ。実はね、そいつらが、あの屋敷の中に居るのよ。私が以前、捕まえておいて、拘束して居るの。由美ちゃんと再会出来たら、引き合わそうと思ってね。」と、嬉しそうに、ホタルが言いました。彼女の心の中には、まだ深い闇が有りました。

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