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異世界ダンジョン配信~回帰した俺だけが配信のやり方を知っているので今度は上手く配信を活用して世界のことを救ってみせます~  作者: 犬型大


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魔剣4

「イースラ……気をつけてね」


「もちろん。こんなところで死ぬつもりなんてないさ」


 外されるような可能性も考えていたが、イースラは臨時で第二大隊所属として同行させてもらえることになった。

 ブレイクを起こしてゲートダンジョンから出てきた魔物は、すでに討伐されている。


 大規模な討伐隊を編成する必要はない。

 そこで今回連れていかれるのは上級隊員以上の者だけとなった。


 サシャとクラインもお留守番である。

 心配そうな顔をするサシャの頭をイースラはワシャワシャと撫でてやる。


 もちろんこんなところで死ぬつもりはない。


「イースラ!」


 サシャはギルドから出発しようとするイースラの服をクイっと引っ張った。

 そしてイースラの頬に軽く唇を当てた。


 みんなが出発しようとしている中の片隅で行われたことなので、見ているのは数人だけだった。


「無事に帰ってきてね……」


 サシャは顔を真っ赤にしている。

 見ていた人はあらあらという生暖かい感じで様子を見守っている。


「帰ってくるって。お返しは……帰ってきてからな」


 イースラはニヤリと笑うと、サシャの唇を人差し指で軽く触れる。

 あまりにも子供らしくない返しにサシャの顔はさらに赤くなってしまう


「かぁ〜……口から砂でも吐き出しちまいそうだ」


 キザすぎる。

 クラインはイースラのやり方にしょっぱい顔をしていた。


 ただやられた方は幸せそうなので、それならいいのかとため息をついた。

 前回の出征では第二王子が直接同行するということで、王城から練り歩くようにしてアピールした。


 しかし今回はそんなことしない。

 ひっそりと出発するために街の外で王国軍と合流する。


「よろしくお願いします」


「よろしく。今回隊長を務めさせていただきます、騎士団長のビブローです。まあ知っているとは思うけどな」


「まさかあなたが出てくるとはな」

 

「二回も同じ失敗はできないからな。それに……」


「事情は分かっている」


「悪いな」


 ゲウィル傭兵団のトップであるゲウィルと今回騎士や兵士を率いる騎士団長のビブローが握手を交わす。

 ビブローは全身鎧の中年の男性である。


 ゲウィルの体つきがいいので小さく見えるが、決してビブローも小さい人ではない。


「今回状況を伝えるために限定配信を行う。攻略の様子も記録しておき、成功した場合は配信が公開される」


「まあ仕方ないか」


 数匹のカメラアイが移動する一行の周りを飛んでいる。

 公に見られるようには配信しないが、王城やギルドの方で現在の進行状況を確認できるように限られた人だけが見られる限定配信というものを行なっていた。


 生配信してもらった方がパトロンしてもらいやすい。

 しかし全滅の瞬間なんて見せられたら民は混乱してしまう。


 直接配信しないという判断も必要なのだ。


「それにしても……ずいぶん若いのがいるな。どこかで見たような気もするが……」


 歩きながらゲウィルとビブローは今後について話し合っていた。

 最初は気づいていなかったのだけど、若いを通り過ぎて幼いとも言えそうなイースラがいることに気づいた。


「あの子もウチの上級隊員だ」


「あの子が?」


「どこかで見たのも……おそらく先日の交流大会だろうな」


「交流大会……本戦に出て、さらに一勝してしまったオーラユーザーの子か」


 思い出したビブローは手を打つ。


「なあ、ゲウィル」


「あの子はやらんぞ」


「そうか……」


 先に断られてビブローは苦笑いを浮かべる。


「若い才能はどこでもほしいからな」


「それにあの子は第一王女のお気に入りでもあるんだ」


「第一王女の? なるほどな……だからエティケントが動いたのか」


「どういう内情で動いたのか知らなかったのか?」


「知らないさ。ゲートダンジョンの攻略隊が組まれることも後で知って立候補したんだ。それにしてもユリアナ様がお気に入りか。見る目はありそうだな」


「引き抜かれては困るからこちらも大変なんだ」


 本当なら経験不足なイースラは外すつもりだった。

 しかし外したことでイースラに拗ねられても困る。


 どうすべきか悩んで結局連れて行くことにした。


「ユリアナ様のお気に入りなら勝手に引き抜くわけにもいかないな」


「やめておけ。俺でも手に余している」


「それほどか? どれ……少し手合わせてでもしてみようか」


 ーーーーー


「イースラ、頑張れー!」


「倒してしまえ!」


「団長、手加減してやってくださいよ!」


「…………どうしてこうなった?」


 ゲートダンジョンも一日で着く距離にはない。

 町の間隔によってはどうしても野営しながら進むところも出てきてしまう。


 上級隊員以上しかいないということは、イースラはゲウィル傭兵団で一番の下っ端になる。

 せっせと野営の準備を手伝っていたらビブローが声をかけてきた。


 軽く質問をされて、気づいたらビブローと手合わせをすることになってしまったのだ。

 それを聞きつけてみんなも面白半分で見学し始めた。


「安心しなさい。ちゃんと手加減はするから」


 ビブローは剣を抜いてニコリと笑う。

 騎士団長という地位につくのにコネなんてものだけじゃ届きはしない。


 やはり他から文句が出ないほどの実力が必要である。

 つまりビブローは強いのだ。

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