魔剣2
「はぁぁぁぁあっ! オーラスラッーシュ!」
クラインは剣にオーラを集める。
刃がオーラによって黄色く輝く。
クラインが大きく剣を振ると、オーラが三日月状の斬撃となって飛んでいく。
「はっ!」
飛んできた斬撃をイースラはオーラを込めた剣で叩き落として消滅させる。
「どうだ?」
「……成功だ!」
「ぃよっしゃあ!」
クラインは両手を突き上げて喜びを全身で表現する。
「おー、やったじゃーん」
「これで俺も必殺技ゲットだぜ!」
交流大会におけるイースラの戦いは、サシャとクラインにも影響を与えていた。
少しは実力も近づけたかなと思ったのに、また離されてしまったような感じがあった。
でも二人は諦めない。
イースラのそばにいるため、そしてイースラがそばにいようとしてくれるために頑張るのだ。
どうしたら強くなれるのか。
そんな話をしている中で、必殺技が欲しいなんてクラインが言い出した。
簡単に習得できるやつがいいなんてことも言っていたが、簡単に習得できるようでは必殺技なんて言えない。
ただ必殺技になりうる種ぐらいなら教えられる。
イースラはクラインとサシャに技を伝授することにした。
「まだまだだけど、だいぶ形にはなったな」
クラインにはオーラスラッシュという技術を教えた。
オーラを斬撃として飛ばす技術であり、極めれば剣ではあり得ないような距離からも相手を真っ二つにすることもできる。
意外と応用も効くし、見た目にも派手なのでクラインには合っているだろうと思った。
オーラを飛ばすということにはセンスを必要とするものの、クラインはセンスがあったようで斬撃を飛ばすことに成功した。
ただ斬撃といってもまだ形だけ。
触れれば簡単に打ち消してしまえるようなものである。
それに一回発動するたびに立ち止まって、剣にオーラを込めていたらたとえオーラユーザーではない相手でもその間に倒しに来ることだろう。
動きながら鋭い斬撃を飛ばせるようになることが最終的な目標となる。
「私の方はまだまだだし」
サシャはぷくっと頬を膨らませる。
「魔法も習いたてだからしょうがないよな」
サシャに教えたのは魔法剣である。
魔法は魔法、オーラはオーラであるが、どちらも魔力がベースになっている。
魔法とオーラを混ぜて戦うことも実際には可能なのだ。
クラインには魔法の才能がないけれど、サシャには魔法の才能もある。
オーラの魔力を素早く魔法として使うことを可能にするのが魔法剣という戦い方、技術である。
まずは剣にまとわせたオーラを魔法に変えるというところから練習しているのだけど、まだ魔法も習ったばかりで上手く扱えないサシャは苦戦していた。
こういうのも普通は基本ができてからやるべきなのだけど、やる気を出してもらうためにもこういうのは大事だろう。
「もうちょっと魔法が上手く扱えるようになってからでもいいかもな」
魔法剣の練習は魔法の練習にもなるが、魔法の基礎ができてからでも遅くはない。
「変なところでやろうとするなよ? 魔法が暴走して怪我でもされたら困るから」
「分かった……」
サシャは少し不満そうに答える。
イースラに追いつきたいという思いもあるが、同時にユリアナに負けたくないという思いもある。
強くなれればイースラのそばにいられる。
ぬくぬくとした場所でぬくぬくと育っているユリアナになんかイースラを取られてたまるか、と思っていることをイースラは知らない。
「イースラはいるか?」
「あっ、はーい」
今度はサシャが剣にまとわせたオーラを魔法に変換しようとしていると、年配の隊員が訓練場に入ってきた。
「上級隊員の招集だ。第一会議室に集まれ」
「分かりました」
自由に活動したいところではあるが、ギルドに所属している以上はギルドの活動に参加しなければならない。
イースラは二人との鍛錬を切り上げて第一会議室に向かう。
「おっ、イースラ君。今日は何かあるのかい?」
「会議室に呼ばれてるんです」
「そうかい、頑張りなよ」
交流大会に出てから周りの態度も変わった。
オーラの才能だけでギルドに入っただけの子供という目で見る人は多かった。
だが交流大会以後はそれなりに強いのかもしれないという認識が多くの人に生まれて、単純に見下してくるような人は減ったのである。
むしろ声をかけてくれる人も増えた。
人付き合いは良い環境を整えるために必要なので一応丁寧に応じておく。
上級隊員身分だけど気取ったところのないイースラは、話してみると良いやつだと周りも認識し始めてくれた。
エティケントに接触するための行動だったけれど、思わぬ良い効果を生んでくれたものである。
「失礼します」
第一会議室にイースラは入る。
会議室の中でも第一は大きなところであって、イースラを含めた上級隊員の他にそれより上の役職の人たちも集まっていた。
「来たな」
こういう時所属がハッキリしていれば情報も早めに伝達されるのだろうけど、イースラはまだ細かく誰の下に付くのか決まっておらず、集まるのが最後の方になってしまった。
イースラは端っこの席に座る。




