作戦会議3
「ライアンウルフには会ったことないんですけど、ライアンウルフが抱えている問題については知ってるんです」
ライアンウルフは謎の多い人物である。
それはイースラも直接会ったことがないというほどであるのだけど、謎であるほどに人はその正体を知ろうと探ろうとし、噂するのだ。
ライアンウルフの正体のみならず、過去に何があったのかと解き明かそうとする人もいた。
その時にライアンウルフについて何があったのかを聞いてしまった。
この国にいるというのも同じくその時に聞いたのである。
「ちょっとズルいけど……ライアンウルフの問題を解決してこっちに引き入れるつもりなんです」
エリクサーを作れるだけじゃない。
優秀な薬屋で、ポーションの効果も高い。
仲間に引き入れることができたら、お金にポーションと心強いバックアップになってくれることだろう。
つまりライアンウルフの存在はエティケントに対する協力の対価になるだけでなく、これから先に活動していく上でも仲間として欲しい存在だった。
「フロワのためだからな。なんとしても探し出してみせよう。このビンはもらっていってもいいか?」
「もちろんです」
「それでこれからどうするつもりだ?」
「しばらくは……力をつけようと思います。欲しいもの、解決したい事件、助けたい人、止めたい出来事……多くありますけど……どれも今の俺じゃ力が足りない」
本当に力があるなら一人で色々やることも想定していた。
しかし子供の体はやはり非力なのだ。
回帰前の経験とオーラのコントロールを使ってなんとか取り繕っているものの、本当の強者には敵わないのが現状である。
まだまだオーラも発現したてである。
呼吸法を使い、正しく修練していけば回帰前のオーラを超えることも可能だろう。
ただそれには時間が必要となる。
無理をして死んでしまっては元も子もない。
「それに仲間も必要です」
クラインがオーラを扱えるようになったのは嬉しい誤算である。
若いうちから退屈で感覚を掴みにくい呼吸法を上手くやれば、オーラが発現するだろう可能性が高いことは分かっていたが、それでもクラインはオーラの才能があった。
サシャもオーラを扱えるようになったし、順当に成長していけば力をつけていけるはずだ。
ただしサシャにしてもクラインにしても、強くなるためにイースラと同じく時間が必要となる。
他にも回帰前の経験から仲間にしたい、関係を築いておきたいと思う人は多くいる。
「強くなって、強くして、問題解決して、仲間増やして、配信して……やることは沢山あります」
この体がいくつもあればいいのにとすら思ってしまう。
でも世の中全ての問題を解決することはできない。
目の前の問題から解決して、着実に進んでいくしかないのだ。
「手を貸してくれますよね?」
「……ここまできて何を言っている? 必要ならばいくらでも借りていくといいでしょう。フロワを救えるのなら返すことなどないのですから」
「ありがとうございます。ついでに一つお願いがあるんですけど……」
「ふっ、早速か。いいでしょう。私の力の及ぶ限り手伝いましょう」
頼もしい仲間を一人得た。
この影響がどれほど大きいかはまだ分からないが、滑り出しとしては順調じゃないかとイースラは思っていたのだった。




