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異世界ダンジョン配信~回帰した俺だけが配信のやり方を知っているので今度は上手く配信を活用して世界のことを救ってみせます~  作者: 犬型大


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作戦会議2

「そりゃないでしょうね」


「……どういうことだ?」


 エティケントは眉をひそめる。


「配信者にも、冒険者と同じく等級があるのは知っていますか?」


「ああ、知っている。見るだけなら一番下でも構わないから私も一番下だ」


「配信ショップは等級によって解放される品物が増えていくんです」


「まさか……」


「最高等級……オルハリコンクラスになるとショップにエリクサーが並びます。待ってくださいよ? 話は最後まで聞くものです」


 今にでも飛び出していきそうなエティケントを止める。

 普段は非常に冷静で理性的な人なのにフロワのこととなると、途端に理性を失う。


「たとえエティケントさんが全財産はたいてもオルハリコンクラスにはなれないでしょう」


「なぜだ? 自慢じゃないが、そこそこ金はあるぞ」


「お金の問題もありますし、お金以外の問題もあります」


 金を払ってエリクサーを手に入られるならエティケントもそうしていただろう。

 しかしそう簡単なことではないのだ。


「ブロンズ、アイアン、シルバー、ゴールド、プラチナ、ミスリル、そしてオルハリコン……これが配信者階級です」


「冒険者よりは少ないな」


 冒険者の階級は下は十級から一番上で一級となる。

 十段階となる冒険者よりも七段階の配信者階級の方が段階が少なく、上に行きやすいようにも思えるだろう。


「でも簡単じゃないですよ。むしろ金銭面よりも大切なことがあります」


「それはなんだ?」


「配信者の等級ですよ? 配信が大切に決まってるじゃないですか」


 配信者階級を上げるために必要なものは、もちろん配信である。

 

「配信時間、配信の視聴者、パトロンの数や金額、配信の評価……そんなものが総合的に判断されて等級を上げるのに必要になるんですよ」


 当然のことながら登録料も必要になるし、等級が上がると高額にもなっていく。

 だがお金を払おうと配信者としての活動が認められなきゃ等級を上げることは難しい。


 本当に金に糸目をつけなきゃ上げられるらしいが、活動なしで金だけだと金額が跳ね上がるのでせいぜいゴールドぐらいまでである。


「お金で解決するのは現実的じゃありません。エリクサー買うのにも莫大なお金が必要ですからね。言ってしまえば……買うのはほぼ不可能です」


 世界滅亡ギリギリまで生き残れば可能性はあるが、もうそこまで生きていられないだろう。


「ではどうするというのだ?」


「買えないなら……作るしかないでしょう」


 エリクサーを買うのが不可能なレベルで難しいということは、最初から分かっていた。

 だからそんな方法で軽々しく治せるとは言うつもりはない。


 ちゃんと方法は考えてある。

 買えなら作ればいいのだ。


「作るだと? それこそ不可能な話ではないか」


 作れるならエティケントが作っている。

 しかしエリクサーなんてものの作り方誰も知らない。


 本当にあるのかと疑ったこともある。

 ただエリクサーというものの話は時々出てくる。


 ならば存在はするのだろうが、作り方が分からないから作りようもない。


「エリクサーがあるんだから製法はあります。そして製法が分かれば……作れる人もいます」


「心当たりがあるのか?」


「はい」


 世界で一人だけ、エリクサーを作ることをできる人がいる。


「ライアンウルフ……彼ならエリクサーを作ることができます」


 イースラの頭の中にはウルフの図柄が思い浮かんでいた。


「ライアンウルフ……聞いたことがない名だな」


「今はまだ有名じゃないですからね」


「そうか……未来の情報か」


「俺は彼を仲間に引き入れたいと思ってます。ただ……会ったことないんですよね」


「会ったこともないのに、どうやって探す?」


「多少のヒントはあります」


 イースラは立ち上がると棚に置いてあったビンを手に取る。

 エティケントの目の前に置かれたビンは三角形のフラスコ型で、ウルフの図柄が描いてあった。


「これがライアンウルフの薬瓶です。これは配信ショップに出品されたものを購入したのですが、どの薬もこの形のビンで提供されます」


「あまり見ない形だな」


 薬、特にポーションなど冒険者が持ち運ぶものは細長い試験管のような形をしているものが多い。

 他には円柱形のビンぐらいで、三角形のフラスコ型のビンはあまり見ない。


「ライアンウルフはこの国にいるはずです。なのでこの国で、この形のビンを使っている薬屋を探せば……」


「それがライアンウルフか」


「俺だけだったなら諦めてましたけど……」


 イースラは期待する目でエティケントのことを見る。

 正直ヒントとしてはかなり少ないし、これだけで探すのは骨が折れる。


 だがエティケントならば可能かもしれない。

 能力も広い人脈もある。


 今は王城にいるのだから何か使える手段もあるかもしれない。


「それを私に探せというのだな?」


 エティケントはビンを手に取る。

 ビンそのものの質も高い。


 透明度が高く、しっかりとした厚みがあって適当なものではない。

 ウルフの図柄は表面を軽く削って描かれているもので、意匠としても手が凝っている。


 ビンは特徴的だ。

 探して探せないこともなさそうだとエティケントは思った。

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