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異世界ダンジョン配信~回帰した俺だけが配信のやり方を知っているので今度は上手く配信を活用して世界のことを救ってみせます~  作者: 犬型大


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作戦会議1

「ほら、これでいいか?」


 エティケントは一冊の本を取り出した。


「おっ、これですこれです。ありがとうございます」


 イースラは本を受け取ってタイトルを確認する。

 本には歴代料理長レシピ集と書かれている。


「こんなものがあるなんてな。よく書庫に出入りするが、俺も知らなかったぞ」


 イースラとエティケントは町にある古ぼけた一軒家にいた。

 そこはイースラが買い上げた家であるが、住むために買ったのではない。


 料理配信のために買った家だった。

 周りの目を気にせず、作業できるようなちゃんとした場所として使っている。


 イースラたち以外に使っていることを知っている人はいない。

 なのでこっそり会うのにもうってつけの場所なのだ。


「安全管理のためにあるんですよ」


 レシピ集は王城の書庫からこっそり持ってきてもらったものだった。

 王族は食事にも気を使う。


 栄養的なことも当然だが、毒殺なんかの危険もあるという話だ。

 そのために料理にも最大限気を使うのだが、毒殺の危機はシェフからだけ起こる訳じゃない。


 料理の最中のみならず配膳時、あるいは食材を仕入れる段階から毒を仕込まれる可能性は存在している。

 なのでなんの食材を使ったか、どうやって料理をしたかとシェフはレシピにして残しておくのだ。


 仮に毒殺を狙った人がいれば、毒殺犯や毒殺ルートの特定なんかに役に立つのである。

 あとは時に、あの時食べたものがまた食べたいなんて要望が出ることもある。


 日々色々な料理を作るシェフが同じ料理を完璧に再現するためにも、レシピを残しておくことは大切なのである。

 そんなレシピを持ってきてもらった。


 歴代料理長と書かれているように書庫にはこんな感じのレシピ集が結構ある。

 毎日料理して、ちゃんとレシピを記載していけば当然かなりの量になってしまうのだ。


 一冊や二冊無くなっても気づかれるものでもない。


「なんに使うのかは分かっているから聞きはしない」


 他の人がこんなもの求めてきたら意図を疑うだろう。

 毒殺のルートを探るのに使うかもしれないなんて考えたりするのだろうけれど、イースラが相手ならそのままレシピとして使うのだろうと分かっている。


「にしてもわざわざ日を改めることはなかったのではないか?」


 もう食事会から数日が経っている。

 色々聞きたいことはあったのだけど、適当なところでイースラが切り上げてしまったのだ。


 あのまま会話を続けていてもよかっただろうにとエティケントは思っていた。

 おかげでイースラとまた会うまでの間モヤモヤとした気分であった。


「あまり長く話すと危ないですからね」


「何がだ? あの城に私や君を害するような人はいない。それに音を遮断する魔法も使っていた。危ないことなど……」


「まあ、万が一に備えて、みたいなことですよ。たとえ会話が聞こえずとも行動だけで噂が立つのが王城です。俺とエティケントさんが長時間会話すれば関係を怪しむ人が出るかもしれません」


 エティケントがイースラのことを気に入ったと思ってくれるのならいいだろう。

 だがもっと邪推する人がいるかもしれない。


 若くして交流大会の本戦にまで出てきたイースラの正体を疑ったり、あるいはユリアナの教育係であるエティケントが相手なのでユリアナとの関係を推測される可能性もある。

 あまりに会話が長いとイースラどころかゲウィル傭兵団との関係すら疑われてしまう。


「なるほどな。私は政治的なことに関心がないからな」


 会話一つからでも裏を探り合うような場所が王城である。

 エティケントは政治的な立場で言えば中立だ。


 ユリアナはまだ幼く、女性ということもあって勢力もなく、政治的な立場では警戒されていない。

 このまま警戒されていない方がユリアナも自由でいられる。


「確かに……ユリアナのためにはならなかったな」


 焦ってユリアナに何か損害が出るところだったことはエティケントも認める。

 イースラの配慮は、改めて子供にはできないものだなと感心してしまう。


「ともかくここでならバレない。まずは聞かせてほしい。どうやって彼女を治療する?」


「フロワさんは不治の病……石化症にかかってますね?」


「……その通りだ」


 石化症とはだんだんと体が石のように動かなくなっていく病気である。

 原因も治療法も分からず、神聖力の治療によってわずかに進行を遅らせることしかできない。


 フロワという人はその石化症にかかってしまっていて、エティケントは治療法を探している。


「やはり今の所エリクサー……万能治療薬を用いるのが確実です」


 イースラの記憶では、石化症の治療法は開発されていなかった。

 そのために石化症を治そうと思ったら、どんなものでも治せるエリクサーが必要となるのだ。


「やはりそうなのか……だがエリクサーなど世界中を探しても見つからない」


「だけどありますよ」


「なに? 一体どこに?」


「配信ショップで買えるんです」


「配信ショップ……」


 イースラから思わぬ言葉が出てきてエティケントは驚きの表情を浮かべる。


「一応私も登録はしている。ショップも覗いたことがあるけれど、エリクサーなんてものはなかった」


 こんなご時世だからエティケントも配信者として登録している。

 配信を見るためだけにしか使っていないが、一通り機能は確認した。


 ショップも見たことはあるし、エリクサーなんてものは売っていない。

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