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異世界ダンジョン配信~回帰した俺だけが配信のやり方を知っているので今度は上手く配信を活用して世界のことを救ってみせます~  作者: 犬型大


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食事会を抜け出して5

「さて……どう説明しようかな?」


 執事についていって部屋に戻りながら、イースラはエティケントとの会話について頭の中で色々と想定しておく。


「……早いな」


 部屋に入って、執事が出てすぐに変化を感じ取る。

 一見なんの変哲もないように見えるが、部屋を魔力が覆っている。


「お引き止めして申し訳ありません」


 ドアが開いて、エティケントが入ってくる。


「いえ、俺も話したいことがあったので」


 エティケントの雰囲気はややピリついている。

 興味を引くためだったとはいっても、なかなか触れられたくないところだったのかもしれない。


「君は何者で、なぜフルワのことを知っていて、何が目的で近づいてきた? 君はユリアナのお気に入りのようだが……答えによってはここで消えてもらうことになる」


 エティケントから魔力が放たれる。

 オーラと違う無形、無色のただの魔力は目には見えないが、確かにイースラに圧力をかけていた。


 イースラはオーラを身にまとってエティケントの魔力に抵抗する。


「その年でオーラが使えることもそうですが、見事なコントロールも怪しい。魔法で見た目の年齢を変えているのか?」


 エティケントは杖で床を叩きつける。

 魔力が広がって、ふわりと風が起こる。


 けれどもなんの変化もない。


「何も起きない……?」


「魔法じゃありませんから」


 イースラはニコリと笑う。


「ならば……」


「待ってください! ただ魔法を使っても魔力の無駄でしかないですよ。説明する時間をください」


「……そう、だな」


 イースラはエティケントに対して敵意を向けていない。

 これまででもイースラが怪しい行動をしたとか、敵意を向けるようなことはなかった。


 いささか冷静さを欠いていたのかもしれないとエティケントは少し反省する。


「なら説明してもらおうか」


「説明するので……疑問挟まないでくれますか?」


「なに?」


「途中で色々聞かれると話の流れも悪くなるので」


「…………いいだろう」


 少なくとも説明する気があると言うことはわかる。

 渋々エティケントは頷いた。


「俺は……あなたと知り合い…………でした」


「知り合い?」


「そうです。ダメですよ?」


「くっ……」


 疑問を口にしようとして先に止められる。

 こんな子供と知り合いではない。


 知り合っていたら覚えているはずだ。

 それにでしたという過去形なのも気になる。


「知り合いだったのは以前の話。俺が回帰する前のこと。時間が戻った……回帰した……そんなことが俺に起きたんです」


「ふざけるのなら……」


「ふざけていません!」


 イースラはエティケントをまっすぐに見つめる。


「メリー・フロワ……メリーアスト・フロアイヌスは不治の病で眠っている」


「彼女のフルネームを……それを知る人はほとんどいない」


「これもあなたから聞いたんです」


「…………本当に時間を回帰したというのか?」


 フロワという名前を知っていたとしても、フロアイヌスという名前を知る人はこの世に数えるほどしかいない。

 どの人だって軽く口にするようなことはないだろう。


 エティケントだって口が裂けても本名を言うことはない。

 とするとやはり回帰前に何か深い関係だったと考える方が納得できるのだった。


「しかし回帰など……時間を操る研究は太古より行われてきた。しかしわずかな間、対象の時間を止めるならともかく、時間をさかのぼることなど不可能だ」


「正確には魔法でどうにかしたわけじゃないですからね」


「……どういうことだ?」


「まず、この世界は一度滅びました」


 イースラの口から語られた出来事は、エティケントにも信じがたいものだった。

 ゲートとモンスターが増加して、強いモンスターが溢れかえって人類は敗北する。


 そして死の間際、神の魔道具を手に入れて、気づいたらイースラは記憶を保ったまま子供の頃に戻っていた。


「懐中時計型の魔道具……」


「多分それが原因……なんですが、自分で発動させようとして発動させたものではないので」


「なるほど……神の力が宿った魔道具だとしたら……可能……なのかもしれない」


 気が動転していたし、魔道具を手に入れた直後にイースラは死んでしまった。

 懐中時計ということは、時間に関する力を持つ魔道具だった可能性は十分にある。


 他に時間を回帰する原因など思いつかない。


「それで君が回帰したとしよう。だが大問題は他にある。世界が……滅びる……」


 エティケントはぐしゃぐしゃと髪を撫でる。

 まとまらない考えがあると昔から髪をぐしゃっとする癖がある。


「俺もどうしたらいいか分からないんです。一人じゃどうしようもない……だからといって回帰したといって信じてくれる人なんていないでしょう」


 関係性を築いていけば信じてくれることもあるかもしれない。

 だが普通の人は回帰して世界が滅びるなんて言えば、イースラのことを頭のおかしいやつだと思うことだろう。


 変に人に回帰したと言って回って孤立してしまうと、変えられることも変えられなくなってしまう。

 エティケントならば合理的に考えて信じてくれる可能性がある。


 ついでに能力もあって、世界の滅亡に対して知恵を出してくれることもあり得ると考えたのである。

 近くにいたのは運が良かった。

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