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異世界ダンジョン配信~回帰した俺だけが配信のやり方を知っているので今度は上手く配信を活用して世界のことを救ってみせます~  作者: 犬型大


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食事会を抜け出して4

「今度ぜひお菓子とかも作ってください! できれば簡単なものとか……あっ、着きました」


 意外とおしゃべりなユリアナの話を聞き、後頭部にエティケントの視線を浴びながら歩いているとあっという間に食事会の会場に着いた。


「ははっ、似合いではないか」


 社交の場でもないのに、イースラがエスコートして入っていったものだから注目を浴びる。

 王であるアルゼスト・ブリッケンシュトは初々しい二人の姿に笑顔を浮かべていた。


 流石に席まではユリアナの近くではない。

 王族がまとまっていて、近くには大きなギルドのトップがいて、次に交流大会上位組がいて、さらに次が少ない招待組だった。


 つまりイースラの位置はユリアナから遠いのである。

 大きなギルドのトップ、つまりはゲウィルもいる。


 なんなら一緒に連れて行ってくれればよかった何とすら思う。


「よく来てくれた」


 イースラたちが来たのは後の方だったらしく、もうすでにほとんどの席は埋まっていた。

 何人かイースラたちの後にやってきて、食事会が始まることとなった。


「この国にもまだまだ新しい才能が芽吹いているのだと戦いを見て私は強く実感した。君たちがこれから次の世代を率いて行ってくれることに期待している」


 グラスを持って立ったアルゼストがみんなのことを見ながら軽く挨拶をする。

 アルゼストの記憶も正直多くはないが、王としては悪くはない人だったと思う。


「……彼の死がユリアナを変えるんだったな」


 どの道あまり知りはしないのだけど、アルゼストはユリアナにとっては父親である。

 アルゼストはどこかで亡くなり、その影響からユリアナは今のような明るさを失って落ち着いた女性となる。


 何がそんなにユリアナを変えてしまうのか、直接聞いたことはなかった。


「何があったのか聞いておけばよかったな」


 ユリアナ自らがそのことに触れはしなかった。

 だからイースラも触れなかった。


 こんなことになるのならもっと細かく聞いておけば、この先に起こることを防げるのかもしれないと少しの歯痒さがある。

 アルゼストの挨拶が終わって食事が運ばれてくる。


 交流大会で王城のシェフの腕前は分かっているので期待している。

 まどろっこしいコース料理など大会を勝ち抜く男たちは好まないのを分かっているのか、大皿に山盛りの料理が運ばれてきて好きに取れという形だった。


 何回も交流大会をやっていれば、こうしたところも変なマナーなんて気にしないで食べられるようにしてくれているらしい。

 お酒も飲めるが、イースラは現状子供なのでジュースしか出してもらえない。


「君はイースラ君だったね?」


 食事しながら王様は一人一人に話を振っていく。


「はい、そうです」


 それほどマナーを気にして食べているわけではないけれど、乱雑に見えないようには気をつかっていた。

 イースラより酷い人はいるので、子供ということを含めても品行方正には見えるだろう。


「その年で交流大会に出場、本戦まで勝ち抜き、さらには一勝を挙げている」


 同時に行われている試合の一つでしかなかったので、アルゼストがイースラの試合を見ていたのが本当かどうか微妙なところである。


「オーラも使えるらしいし、まだまだ伸びしろは大きい。特にユリアナが君のことを気に入っているようだ」


「お父様!」


「ははっ、良いではないか。普段ならつまらなそうにしているお前が熱心に試合を見ていたのだからな」


「うぅ……」


 ユリアナは恥ずかしそうにうつむく。


「ユリアナにもそろそろ専属の護衛が必要だと思っている。年が近ければ気兼ねすることも少ないと思うが……どう思う?」


「アルゼスト……」


 イースラを遠回しに誘っている。

 ゲウィルがアルゼストに対して厳しい視線を送る。


 ギルドのトップが王族の近くに置いてあるのは、こうした勧誘を牽制するためであった。


「確かに年が近いと良いと思います。ですが、やはりユリアナ様のことを考えた時に同性の護衛の方がいいかもしれません」


 イースラはニコリと笑って答える。

 話としてはちょっと惹かれないわけでもない。


 しかし専属の護衛になると身動きは取れなくなる。

 それにユリアナには回帰前、立派な護衛もいたのである。


「なるほどな。それはその通りかもしれない。だが良い人がいなければ君に声をかけることがあるかもしれない」


 イースラの遠回しのお断りにアルゼストも気分を悪くすることはない。

 むしろしっかりとした断り方で好感すら持っている。


 ゲウィルも嬉しそうに目を細めている。

 場の空気を壊さずに上手く話題を流したのだから内心では感心している。


「ユリアナ、そろそろお前は……」


「分かりました」


 デザートまで食べ終えた。

 お酒も進んできて、少しずつ場の雰囲気も変わってきた。


 大人の時間になってきたので、子供のユリアナはここで退席する。

 ユリアナが退席するならイースラも退席する。


 イースラも子供だし、ユリアナが招待した客だから仕方ない。


『……お部屋にてお待ちいただけますか?』


 イースラの頭に声が響く。

 それはエティケントの声だった。


 イースラはエティケントに視線を送る。

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