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異世界ダンジョン配信~回帰した俺だけが配信のやり方を知っているので今度は上手く配信を活用して世界のことを救ってみせます~  作者: 犬型大


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食事会を抜け出して3

「はい」


「失礼します」


 剣が出来上がる様を見ていたら、ドアが控えめにノックされた。

 イースラがノックに返事するとドアが開いた。


 一瞬ドアを開けたいつもの執事が見え、その奥にドレス姿の女の子がいた。


「うわぁ……」


 思わずキレイだよと言いそうになった。


「私があなた様を招待したユリシア・ブリッケンシュトです。初めまして、イースラ様」


 ユリアナと、その後ろからエティケントも入ってくる。

 部屋に入ってきたユリアナはドレスをつまんでお淑やかに頭を下げる。

 

 まだまだ幼さがあって、小さい。

 けれども回帰前の記憶にあるユリアナとは大きな違いはない。

 

 配信や遠くにいる姿を見てはいた。

 でも間近で正面から見るとちょっと違っていて、胸に色々な感情が広がる。

 

 回帰前に愛した女性であり、イースラに希望を残すため自ら消えていった。

 愛する人を守れなかった悲しみと後悔、また元気な姿を見ることができた嬉しさ、そして今は自分のことを知らないのだというほんの少しの寂しさ。


「あ、あの……そんなに見つめられると……」


「あ、ああ、ごめん……なさい」


 あまりにも色々な感情が混ざり合って、大きくて、イースラはただユリアナのことを見つめてしまった。

 ユリアナは顔を赤くして目を逸らし、イースラもハッとしたようにユリアナから視線を外す。


「えっと……ゴホン」


 今回はあんなことにはさせない。

 また恋人に、なんて贅沢は言わないが今度は自らを犠牲にさせないようにはしてみせるとイースラは思った。


 咳払いを一つして、イースラはユリアナの前で片膝をつく。

 手を取って手の甲に軽く口づけをする。


「お会いできて光栄です。イースラと申します」


 回帰前、イースラとユリアナの出会いはあまり良いものではなかった。

 マナーもなっていない粗雑な男だと、ユリアナはイースラのことを怒っていた。


 いまだに貴族のマナーってやつはイースラには分かっていない。

 でもこれぐらいしておけばマナーがなってないなどと言われることはないだろう。


「あ……え……わ、私こそ光栄です!」


 ユリアナは顔を赤くしながらも笑顔を浮かべる。


「いつまでも女性の手を握っていてはいけませんよ」


 分かっていたが、ユリアナはイースラに対して好意的だ。

 回帰前の出会いとはだいぶ違う。


 そうなると問題は別の方にある。

 エティケントが杖でイースラの手に触れた。


 するとユリアナの手を握っていたイースラの手がパッと勝手に開かれる。


「初めまして……エティケント様」


「ほう、まだ自己紹介はしていなかったと思いますが」


「大魔導師様のお名前を知らないことがあるでしょうか」


「だいぶ前に隠居した魔導師の名前を知っている方が珍しいだろう」


 その問題とはエティケントのことだった。

 観客席でユリアナが声援を飛ばしてくれている横でエティケントは冷たい目をしていた。


 どうしてそんなにイースラに対して厳しい態度を取るのか、理解できていなかった。

 話したこともないのに不快感を与えるも何もない。


 ユリアナにも会いたかったが、どちらかといえばエティケントの方が接触したい相手だった。

 なのに最初から少し印象が悪いのはイースラとしても苦笑いするしかない。


「エティケントだ。姫様の教育係兼護衛をしている」


「イースラです。偉大な大魔導師様にお会いできて光栄です」


 やはりイースラに対する態度はそっけない。

 これにはユリアナも少し困り顔である。


「食事会も始まりますし、いきましょうか」


「そうですね」


 イースラが腕を差し出すとユリアナは少し驚いた顔をした。

 すぐに笑顔を浮かべてイースラの腕を取る。


 これは流石に回帰前の行動が出過ぎたかなとは思うが、もう腕を取られた以上、今更振り払うわけにもいかない。


「ああ、それと……麗しきメリー・フルワはお元気ですか?」


 エティケントの横を通る時にイースラはボソリとつぶやいた。


「なに……」


 エティケントの目が驚きに見開かれた。


「まずは食事会です。楽しみしてたんですよ」


 イースラはエティケントの顔を見て笑顔を浮かべると、そのままユリアナと部屋を出ていく。


「あの子は……一体……」


 ただユリアナに近づく馬の骨だと思っていた。

 しかしこれはもっと複雑な事情かもしれない。


 エティケントはギュッと杖を握りしめる。


「実は……イースラ様のことは大会が始まる前から知っていたのです」


「えっ?」


 イースラはドキッとした。

 もしかしたらユリアナにも回帰前の記憶があるのかもしれないと期待したのだ。


「お料理の配信やってますよね? あれを見ていたんです」


「あ、ああ……あれを?」


 だがユリアナは屈託のない笑顔でイースラの予想を裏切った。


「あまり血生臭いのは苦手で……でも、暇で何かないかなと思ってた時に見つけたんです。楽しそうにお料理してて、仲が良さそうで……できた料理も美味しそうでした!」


 ユリアナが料理配信を見ていたのは初耳だった。

 どこで誰が見ているのか分からないのが配信であるが、そんなところでユリアナと細い繋がりができていたことは予想もしていない。

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