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異世界ダンジョン配信~回帰した俺だけが配信のやり方を知っているので今度は上手く配信を活用して世界のことを救ってみせます~  作者: 犬型大


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交流大会本戦3

「お前のようなやつが勝ち上がれるんだからな」


「なんだと……このガキ……」


 イースラの挑発に男は顔を赤くして怒りを見せる。

 こんなところまで来て子供に分かりやすい挑発をされれば、気も悪くするだろう。


 しかし簡単な挑発に乗る時点で大したことないと自ら表しているようなものだ。


「ぶっ殺してやる!」


「へぇ、オーラユーザーなんだ」


 男の体からオーラが溢れ出す。

 黒みを帯びた赤いオーラが広がって、イースラのところにまで届く。


「スッカスカ……」


 普通の人だったらオーラを差し向けられれば、恐怖を感じたりするのだろう。

 しかしオーラユーザーであるイースラにオーラを差し向けたって、なんの意味もない。


 むしろオーラに触れて分かったことがある。

 男のオーラはただの見掛け倒しであると。


 オーラは魔力であり、全く同じに見えるものでも本人のコントロールや才能、魔力量などによって実質的な中身が異なる。

 男のオーラはただ見た目に禍々しさがあるだけで、魔力は薄くてペラペラのオーラだった。


 おそらくオーラの修行などまともにしたこともないのだろう。

 オーラだって発現すればただ使えるというものではない。

 

 鉄のように鍛え上げてこそ強靭なものとなっていくのである。


「ふんっ! 降参するなら今だぞ!」


 動かないイースラを見て怯えているのだと思った男は、もうすでに勝ち誇った顔をしている。


「やってやるよ」


 呼ばれそうだし、ある程度戦ったら負けてもいいかなと思っていた。

 しかしこんな奴に負けるのは嫌だなと思った。


「それでは一番イースラと二百三十五番クルーン・ウェルビオの試合を始める」


 イースラは剣を構える。


「試合始め!」


 始まると同時にイースラは一気に走り出す。

 白いオーラをまとい、クルーンの赤黒いオーラの中に切り込んでいく。


「オーラだと!?」


 体に沿わせるように薄くまとわせた白いものがオーラだと気づいて、クルーンは驚きに目を見開く。


「くっ!」


「へぇ……」


 イースラが突き出した剣は防がれた。

 魔力の殺気も差し向けたのに、クルーンはほぼ動きを止めることがなかったのである。


 ただのボンクラではなさそうだ。


「はっ!」


「このガキが!」


 オーラを込めたイースラの斬撃がクルーンのオーラを切り裂く。

 戦いが始まってもクルーンはオーラをまとうような気配がない。


 できないのか、やったことないのか、どちらなのか知らないが、オーラユーザーとしてのレベルはかなり低そうだ。


「舐めるなよ!」


「そっちこそ!」


「ぐぅ!?」


 クルーンがちゃんとオーラを込めてもない剣を振り下ろす。

 焦って攻撃したのか動作が大きくて、かわすことも難しくない。


 イースラはサッと上半身をねじって剣をかわすと、反撃で剣を振る。

 クルーンの方は素早くコンパクトなイースラの攻撃をかわしきれなくて胸を浅く斬りつけられる。


「ちょっとは差が縮まったと思ってたんだけどな」


「うん……強いね」


 限られた人しか入れない観客席で、クラインとサシャはイースラの戦いを生で見ていた。

 イースラの戦いは見るたびに強くなっているように思える。


 体格による力の差はどうしてもあるのでイースラは回避に重点を置いている。

 しかし防御一辺倒にならないように、次の動きを踏まえて回避していることがクラインとサシャにも分かった。


 クルーンの赤黒いオーラがイースラを包み込んで目立ってしまうが、イースラはクルーンのオーラに惑わされず鎧のように美しく皮一枚でまとっている。


「あの子は昔からああなのか?」


「えっ? ええと……最初から強いわけじゃなかったけど……あっ、なかった、です」


「ふふ、そう硬くなるな。緊張しなくともいい」


 クラインとサシャに話しかけたのは髭面の男性である。

 低くて渋みのある声をしていて、クラインは声をかけられてピンと背筋を伸ばした。


 声をかけてきたのはゲウィル・サダルディアン。

 役職は団長。


 つまりゲウィル傭兵団のトップなのであった。

 なんでそんな人が横に座っているんだ、とクラインはサシャに目で問いかける。


 サシャは知らないと気まずそうに目を逸らして、イースラの戦いに視線を戻す。


「ある時から変わって……なんか、その、いつってのは分かんないですけど……急に強くなって」


 流石のクラインも自分が所属する組織のトップが相手となれば緊張もする。

 ゲウィルからイースラについて聞かれるが、クラインからしてもイースラは不思議な存在だ。


 気づいたら強くなっていた。

 オーラを使い、剣術だっていつの間に覚えたのか知らない。


 孤児院にいる時には確かにただのイタズラ坊主だったはずなのに、気づいたらそうなっていたとしか言いようがない。

 以前に、世界が滅びる夢を見て、その中で一度人生を経験しただなんて言っていたことはクラインも覚えている。


 しかしそんな話をしても信じてもらえるわけがないし、イースラも気軽に人に話さないでくれと言っていたので他に説明のしようがない。


「配信ショップで能力を買ったのか?」


「多分……まだ買ってないです」


「買ってない……ということは存在は知っているということだな。加えて買っていなくてあれなのか。才能というやつなのかもしれないな」


 聞き返すでもなく買っていないと答えたということは、配信ショップで能力を変えることをクラインは知っているということになる。

 だが能力を買わず、自前の力だけで戦っているのだとしたらイースラには才能があるのだと認めざるを得ない。

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