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異世界ダンジョン配信~回帰した俺だけが配信のやり方を知っているので今度は上手く配信を活用して世界のことを救ってみせます~  作者: 犬型大


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交流大会予選4

「これは?」


「俺の知り合いだと証明するための身分札だ。これを見せれば、ウチのギルドは君がどんな容貌をしていようが蔑ろにはしないだろう」


 ヒューデウスの名前が書かれた金属の板はずっしりと思い。

 大きな家門の人は恩に報いて家門全体で相手に恩を返すために、家門の恩人という証拠を渡すことがある。


 そうしたものなのかもしれないとイースラは思った。


「他にも俺の名前が通じるようなら使ってくれて構わない」


「このようなもの、もらっていいんですか?」


 ただの身分札ではない。

 悪用しようと思えば悪用もできてしまう、ヒューデウスの後ろ盾を手に入れたようなものである。


「君がこれを悪用するとは思っていない。騒ぎの詫び代わりだと思ってくれ」


「……ではありがたくいただきます」


 あまり断っても失礼になってしまう。

 イースラは素直に受け取って懐に身分札をしまう。


「もうすぐ始まる」


 ヒューデウスは控え室全体を見渡す。


「たとえ子供だろうと実力があるなら参加できるし、勝ち上がれる。だが実力もないのに騒ぎ立てるようなら今すぐ失格とする」


 あんなことがあった後なので誰も声をあげる人はいない。


「いいか? 交流大会において必要なのは声のデカさではない。実力だ。もう少し大人しくしていろ」


 これだけしっかり言われては、もう誰も騒がないだろう。

 ヒューデウスはイースラの肩に軽く手を乗せて微笑むと控え室を出ていった。


「ヒューデウス第一隊長!」


 ケブラックが慌ててヒューデウスの後を追いかける。


「あれは……よかったのですか?」


「あれとは何だ?」


「身分札のことです」


「また作ればいい」


「そういう話ではなく……」


 ヒューデウスの力を借りることができてしまう身分札を渡してよかったのか、ということをケブラックは聞きたかった。

 騒ぎのお詫びにしては過ぎたもののように感じられる。


「……ここで他のギルドの者を引き抜くのは御法度だ」


「そうですね。後で問題になるでしょう」


 会場となっているギルドの立場を利用して他の人を引き抜くことは暗黙の了解として禁じられている。

 そんなことをしてしまえば後々ギルド同士の摩擦にもつながるだろう。


「だが俺はそんな禁忌を犯してもあの子をうちに引き込もうか迷った」


 冗談めかして話を終わらせたが、押していけそうだったらそのまま引き抜いていたかもしれない。


「身分札を渡しておくぐらいならば勧誘行為とはみなされないだろう。関係を繋いでおけるのならあれぐらい安いものだ」


「それほどの相手なのですか?」


「お前は気づかなかっただろう。イースラ……あの子はオーラユーザーだ」


「えっ!?」


 ケブラックは驚いて目を見開く。


「どうして……お分かりに?」


「ゲウィル傭兵団から出されるのは上級隊員と小隊長補佐、小隊長だ。あの子は上級隊員だろうな。上級隊員が何人いるか知っているか?」


「ええと……十……十五でしょうか?」


 他のギルドにいる人の数までなかなか把握は難しい。

 ケブラックは苦笑いを浮かべながら答える。


「それぐらいだろうな。ではそのうち何人がオーラユーザーだ?」


「確か五人ほどだったと思います」


「ゲウィルの上級から何人出る?」


「四人です……あっ、そうか」


 ゲウィル傭兵団から出られる人数は限られている。

 おそらくオーラユーザーがその席を取ることになる。


 イースラがゲウィル傭兵団から出ているのなら己でその席を勝ち取ったことにもなる。

 剣の腕もさることながら、最低でもオーラユーザーでなければ出場の席を勝ち取ることは難しい。


「だからオーラユーザーだと……」


「だかそんな連想からではない」


「えっ?」


「あの短い会話でそんなことを考えると思うか?」


「まあ……あるのでは?」


 そんなことないと答えると、ヒューデウスがあまり思考の深い人ではないようにも聞こえてしまう。

 ケブラックは誤魔化すように笑いながら答えた。


「ふん、まあレーナぐらいなら短い間でもそんな風に考えたりするのだろうな。だが俺はわざわざそんなことを考えん。今の話は……俺の感覚が間違っていないと補強するためのものだ」


「……ではどうしてオーラユーザーだと?」


「一度オーラを放っただろう? 控え室丸ごと威嚇するつもりでな」


「はい……」


 ケブラックもヒューデウスのオーラに冷や汗が止まらなかった。

 オーラだけでも人を殺せてしまいそうだとすら思った。


「あの時あの子は自らもオーラを放って自分を守ったのだ」


「えっ? そんなようには見えませんでしたが」


 ケブラックは控え室での様子を思い起こしてみる。

 しかしイースラがオーラを放っていたような記憶はない。


「当然だ。放つというが、薄く身にまとい、防御してみせたのだからな」


 見ていても分からないほどに綺麗なオーラのまとい方だったとヒューデウスは舌を巻いてしまう。

 ほんの一瞬でも怯むと命取りになる戦いの世界で、オーラによる威嚇の硬直を防ぐためにとっさにオーラでガードした。


 しかもよく観察していないと分からないほどに薄く、ヒューデウスのオーラに晒されても乱れることがなかった。


「卓越したオーラコントロール……若くしてあれなら将来は有望だろうな」


 才能という言葉で何かを片付けることは気に食わないが、イースラの能力は天から授けられた才能という他にないとヒューデウスは思う。


「ゲウィルめ……羨ましい原石を手に入れたものだ」


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