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異世界ダンジョン配信~回帰した俺だけが配信のやり方を知っているので今度は上手く配信を活用して世界のことを救ってみせます~  作者: 犬型大


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交流大会予選3

「その話は本当か?」


「い、いや……そんな奴がゲウィル傭兵団な訳ないだろ!」


「俺はちゃんと証拠を出した。そいつが持ってるよ」


「ケブラック?」


「あ、はい! こちらに」


 鎧の男ケブラックは手に持っていた証をヒューデウスに差し出す。


「ふむ……本物だな」


 ヒューデウスは証を受け取ることもなく、一目見て本物であると見抜いた。


「そんなもの……盗んだんだろう!」


「ならば証明してみせろ」


「はっ?」


「イースラ殿は参加者だと主張して、証拠も見せた。しかしそれを嘘だというのなら証明すべきはお前の方だ。盗んだというのなら盗んだ証拠を出せ」


 少なくともイースラの発言に不自然なところはない。

 子供であるというところに多少の不思議さはあるものの、受付を正当に通ってきた参加者であり、身分を証明するものも出している。


 ただ子供だからとヒューデウスは否定しない。

 疑って否定するのならそれを証明して見せるのは疑う方の責任である。


「盗んだことの証明なんて……うっ!」


「証拠も出せず、引っ込みがつかなくなって戦いの前でピリついた空気を乱すのか?」


 ヒューデウスが男の首を掴んで持ち上げる。

 男も決して小柄ではないのに、片手で成人男性を持ち上げるなんてとんでもない腕力である。


「この会場における管理は俺たちに任されている。貴様は失格だ。私闘厳禁の控え室にて大した証拠もなく他人に突っかかって騒ぎを起こしたことが処罰の理由だ」


「なっ……」


「そんなの認められるか!」


「認められないならどうした?」


「なに?」


「認められないならどうするというのだ?」


 ヒューデウスの体からオーラが放たれる。

 光の加減によっては黒にも見える濃紺のオーラが広がり、重苦しかった控室の空気がさらに重たくなる。


 男の仲間たちは押さえつけられるような魔力の圧に汗をかいて、反論するような余裕すらない。

 首を掴まれている男はだんだんと苦しくなってきているのか、顔が青白くなっている。


「良いだろう。ここで俺を納得させられるなら予選などせずに通過させてやる」


 ヒューデウスは剣に手をかける。

 その瞬間、男たちは重たくのしかかるような空気が変化して、首に刃でも突きつけられたような鋭いものになったのを感じた。


 何もしていないのに冷や汗が滝のように噴き出して止まらない。


「一撃。止めてみろ。ただし代償は命だ」


 ヒューデウスが剣を抜く。

 ケブラックすら冷や汗を流していて、状況に口を挟めずにいる。


 ヒューデウスが持っていると普通の剣に見えるが、実際は普通のものよりも一回り大きい。

 たとえ魔力が込められていなくとも、ヒューデウスが繰り出す一撃を防ぐことができるだろうかとイースラも自信がない。


「返事がないのなら肯定とみなす」


 男たちはやるとやらないも答えない。

 答えられないのだ。


 だが答えないことは肯定だとヒューデウスは受け取る。


「まずはお前からだ」


「……お待ちください」


「なぜ止める?」


 剣を振り上げようとしたヒューデウスをイースラが止めた。

 正直イースラもヒューデウスの圧力を感じている。


 しかし圧力を振り切って口を開いた。


「こんな奴らのためにわざわざ剣を血で汚すことはありませんよ」


 別に男たちが斬り捨てられようともイースラはなんとも思わない。

 これからの戦いに影響も及ぼすことはないだろう。


 だがイースラの問題でヒューデウスの剣を汚すことはない。


「こいつらが一撃も受けられないことは分かっているでしょう? 無駄なことはなさらないでください」


 ヒューデウスほどの実力がある人が、男たちの実力を分からないはずがない。

 たとえ万全の状態であってもヒューデウスの一撃など受けきれない。


「……ふむ、当事者がそういうのなら」


 他の誰でもなく当事者たるイースラが止めるのなら、ヒューデウスも引っ込むしかない。

 

「お前たち全員失格だ。もし挑みたいというのなら留まるといい。だが命が惜しいというのなら……さっさと立ち去れ」


 ヒューデウスは男の首から手を放し、剣を鞘に収める。

 押さえつけるような圧力が無くなり、男たちはハッとしたように動き出す。


 首を掴まれていた男はいつの間にか気を失ってしまっていて、男たちは抱えて控え室を出ていった。


「懸命な判断。イースラ殿に感謝するのだな」


 ヒューデウスは本気で一撃加えるつもりだった。

 おそらくイースラが止めねば男たちは全員真っ二つになっていたことだろう。


「こちらの不手際で騒ぎを起こして申し訳なかったな」


「いえ、そんな」


 ヒューデウスがイースラに頭を下げて、ケブラックも同じように慌てて頭を下げる。


「こちらはお返しします」


 ヒューデウスがケブラックからゲウィル傭兵団の証を受け取ってイースラに返す。


「それにしても……ゲウィル傭兵団は面白い人材を手に入れたようだ」


 ジッとイースラの目を見つめる。


「どうだ? うちに来るつもりはないか?」


「なかなか良いお誘いですね」


 ヒューデウスの誘いにイースラよりもケブラックの方が驚いて目を見開いている。


「俺の友達も連れてきていいですか?」


「友達? 実力次第だな」


「今はまだまだですけど、きっと強くなりますよ」


「ふっ、君が言うなら期待もできそうだ。……だがこんなところで引き抜いたら君のところのゲウィルに怒られてしまうな。これを」


 ヒューデウスは懐から一枚の金属の板を取り出してイースラに渡した。

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