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異世界ダンジョン配信~回帰した俺だけが配信のやり方を知っているので今度は上手く配信を活用して世界のことを救ってみせます~  作者: 犬型大


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交流大会予選2

「えーと、あっちか」


 控え室こちらと矢印の描かれた張り紙が壁に貼ってある。

 案内に従って進んでいく。


 流石に建物の中に入ると人の数は減って、落ち着いた雰囲気になる。


「ガキ?」


「なんでこんなところに」


 控え室に入ると、もうすでに大勢が集まっていた。

 入ってきたイースラのことを見て若干のざわめきが起こる。


 流石にイースラのような子供の姿はない。

 どうして子供がこんなところにいるのかとみんな不思議そうにしている。


「はっ! ガキが何してる!」


 誰も絡んでこないのならそれでもいいかなと思っていたが、そう簡単にはいかなかった。

 ガラの悪そうな男たちがイースラに絡んでくる。


「迷子か? こんなところに勝手に入ってくるもんじゃねぇぜ!」


「俺たちは戦いの前でピリついてんだ」


 イースラの返事も聞かずに迷子の子供が勝手に入り込んできたのだと決めつける。

 たとえ迷子じゃないと言っても聞いてはくれなかっただろう。


「おい! 無視すんな!」


 ただイースラは迷子でもなければ勝手に入ってきたわけでもない。

 ちゃんと参加申請した交流大会の参加者であり、因縁をつけられる覚えはない。


 わざわざ参加者だと弁明する必要もなく、そんなことに体力を使うつもりもなかった。

 男たちのことを無視したイースラは、参加者のために用意されている軽食を眺める。


「おいっ! ……なっ!」


「触るな」


 そのままほっといてくれればいいのに、男の一人がイースラの肩を掴んだ。

 口先だけならともかく、手を出してくるなら話は違う。


 イースラは腰につけていたナイフを取ると、肩を掴んでいる男の手に突きつけた。

 ナイフの先っちょがちょっとだけ突き刺さって血が滲んでいるけれど、これぐらいやらなきゃイースラの本気も伝わらないだろう。


「こ、このガキ!」


 男は慌てて手を引っ込める。

 こうした手合いは相手にするだけ面倒なので無視したいところである。


 しかしされるがままになっているようなつもりもない。

 一応ゲウィル傭兵団の代表としてもきているのだから舐められるのも良くないのだ。


「ふざけた真似しやがって!」


 手を刺された男が剣を抜く。

 相手の様子をしっかり観察しなくて、どんな相手なのか分からない奴がこんなところにもいた。


 ここまで堂々とここにいて、忍び込んだ無関係のガキじゃない可能性の方は考えないものなのかと呆れてしまう。


「何をしていんですか! 試合以外での私闘は禁止されています!」


 一触即発の空気の中、控え室に鎧姿の若い男性が入ってきた。

 イースラの記憶にあるような人ではないが、そこそこ強そうだなと一目見て思った。


「迷子のガキが忍び込んでいる! こっちに文句言うんじゃなくて、お前らが仕事しろよ!」


 鎧の男は交流大会の管理を行うディラインハルトギルドのギルド員のようだ。


「君はどこから……」


「俺も参加者です」


「えっ?」


「ゲウィル傭兵団のイースラ。ちゃんと受付通ってきましたよ」


 イースラはゲウィル傭兵団の証をポンと鎧の男に投げ渡して、軽食として置いてあるサンドイッチを手に取った。

 ハムが挟んであるサンドイッチは意外と悪くない。


「これは……本物」


「人のこと勝手に迷子だって勘違いして絡んできたのはそっちだ」


 意図的に弁明こそしなかったが、別に男たちがイースラに絡むような理由もない。

 無視すればよかったものを絡んできたのは男たちの方である。


「ゲウィル傭兵団だと? 嘘に決まってる!」


 男は馬鹿にしたようにイースラのことを見る。

 子供というだけでも信じがたいのに、国内で三、四番手となる大型ギルドから来たなんてとてもじゃないが信じられない。


 仮にイースラが逆の立場であったなら同じように思うのだろうなと驚きはない。


「何を騒がしくしている!」


 聞こえてきた重低音の声は魔力を孕んでいて、ズンと体にも響くようだった。


「これはヒューデウス第一隊長!」


 控え室に大柄の男が入ってきた。

 左目に眼帯をしていて、身長がかなり高い。


 鎧の男は背筋を正してヒューデウスと呼ばれた男に、胸に手を当てる敬礼をする。

 鎧の男も強そうだが、ヒューデウスはもっと強そう。


 それどころかイースラはヒューデウスのことを知っていた。

 回帰前に会ったことがある。


 イースラの記憶ではもっと傷だらけの人であった。

 最前線で戦い、芯から強くあって、そして悲しむ暇もなく死んでしまった。


「何が起きている? 報告しろ?」


「参加者同士の言い争いが……」


「言い争い?」


「俺は何も悪くないです。こいつらが言いがかりをつけてきたのです」


 オーラを発してもいないのにヒューデウスはすごい圧力がある。

 男たちは圧に押されているが、イースラはこれぐらい平気であった。


「俺は交流大会の参加者のイースラです。なのに人のことを迷子だなんだと言って追い出そうとしました。今だってゲウィル傭兵団の証見せてもそれが偽物だって、さらに言いがかりをつけてきたんですよ」


 変に下手に出るよりも堂々としていた方がヒューデウスには好感的に映る。

 そのことを知っているイースラはしっかりとヒューデウスの目を見て状況を説明する。

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