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異世界ダンジョン配信~回帰した俺だけが配信のやり方を知っているので今度は上手く配信を活用して世界のことを救ってみせます~  作者: 犬型大


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勝ち残れ!2

「相手は三級……少し厳しいかもな」


 サシャの相手は女性の三級隊員である。

 三級隊員となれば仮所属ではなく本所属となる。


 しっかりとした実力があると認められたも同然だ。

 同じく女性同士の戦いにはなるので体格的な差は小さいが、それでも大変な相手だろう。


「でも勝てなくはないぞ」


 難しい相手ではあるものの、勝てなくはないだろう。

 クラインが勢いと力で押していくようなタイプなら、サシャは素早さのある鋭い一撃を繰り出すタイプだ。


 真面目に鍛錬に取り組むサシャは、技術的なところではクラインよりも上になる。

 相手の出方によってはサシャにも勝機がある。


「始め!」


「いくよ!」


 女性隊員が先手を取ってサシャに斬りかかる。

 クラインが戦った相手のようなギラつく感じはない。


 性格的な違いもあるが、サシャと女性隊員には等級的な差がないこともあるのかもしれない。

 下の等級からすれば勝てればアピールのチャンスになる。


 対して上の等級だと負けられないという意識がある。

 同じならどうしても負けられないほどではないけれど、勝っても大きなアピールにもなりにくい。


 決してやる気がないわけではないものの、他の場合に比べて燃えにくい、やや緩めな意識で戦ってしまうところはあるのだ。


「ふっ!」


 試すような軽い攻撃を受け止めて、サシャは反撃を繰り出す。

 互いが互いを探り合うような斬り合いが続く。


「うーん……思ってたよりもやるね」


 オーラだけで三級になった子供。

 まだそのイメージは根強い。


 今も五級、四級と剣の基礎や仕事の基本的なことを教わっているから、三級以上の人はイースラたちを色眼鏡で見ていてもおかしくはない。

 ただ実際に手合わせしてみると、ちゃんと鍛錬していることは分かった。


「でも……まだまだだね!」


「うっ!」


 女性隊員の攻撃が激しさを増した。

 サシャはなんとか防いでいるけれど、押されてしまってまともに反撃もできない。


「サシャー! 頑張れ!」


「あー……」


 やはり同じ等級の中でも差はある。

 四級に近い三級と、二級に近い三級では実力は違うだろう。


 女性隊員は二級に近い三級である。

 もしかしたらもう昇級間近なぐらいかもしれない。


 サシャにはちょっと無理な相手だった可能性がある。


「諦めない!」


 少しでも気を抜けば負けてしまう。

 サシャは必死に攻撃を防ぐ。


「……どうしてそこまで頑張るの?」


 まだ実力不足なことは目に見えている。

 入って日も浅いし、子供なことは周りも分かっている。


 諦めて負けてもよく頑張ったと言ってもらえるだろう。

 そこまで粘る理由が分からないと女性隊員は疑問だった。


「……諦めたくない理由があるの。立ち止まったら……遠くに行っちゃうから」


 サシャはチラリとイースラを見た。


「ふぅーん……」


 なんの事情かは分からない。

 だが女の子に真剣な目をさせる罪作りな男がいることは理解した。


「あなた、オーラユーザーなのよね?」


「はい、そうです」


「じゃあ……最後はオーラで決着をつけない?」


「えっ……」


 女性隊員の体から黒みを帯びた濃い赤色のオーラが溢れ出した。


「オーラユーザーだったのか!」


 予想外の展開にイースラも驚く。

 かなりできる方だと思っていたが、まさかオーラまで扱えるとは想像もしていなかった。


 他にも驚いている人は多い。

 あまり目立ってオーラユーザーであるとは公表していないようだ。


「オーラを切磋できる機会がこれまではなくてね。近い実力の相手とオーラを競ってみたかったんだ」


「……分かった」


 どうせこのまま戦っても負けてしまう。

 剣の腕よりオーラの方が自信がある。


 サシャも勝負に乗ってみようと頷く。


「ちゃんと名乗ってなかったね。私はメルター」


「サシャ、です」


「一撃……それで終わらせるよ」


「うん!」


 サシャの体から青いオーラが溢れ出す。


「まさか下級隊員同士でオーラのぶつかり合いを見ることになるとはな」


 思わず誰かがつぶやいた。

 サシャはイースラをイメージしてオーラを体にまとわせる。


 鎧を通り越して、一枚の皮膚のようにまとうイースラのオーラには美しさも覚える。

 薄くまとうのは単にオーラを体のそばに留めるというだけの話ではない。


 拡散してしまおうとするオーラを動く体に合わせてコントロールし続けることに加えて、薄くするためにはオーラを圧縮するということも必要である。

 発するオーラ量を減らして薄くすることもできるが、それでは薄くまとう意味がない。


 やってみれば難しさが分かる。

 無理に薄くしようとするとコントロールが乱れてしまう。


 今自分ができる最大限でオーラをまとう。


「オーラの扱いはサシャの方が一枚上手そうだな」


 クラインが腕を組んで偉そうに一言。

 だが間違ってはいない。


 メルターはオーラを垂れ流しているだけだが、サシャはある程度オーラをコントロールしている。

 クラインのみならずオーラのことをよく分かっていない人から見ても、オーラのコントロールはサシャの方ができていると分かるだろう。


「いくよ!」


「はい!」


 サシャとメルターは同時に動いた。

 オーラを込めた剣を互いに振り、それぞれのオーラがぶつかって甲高い音が鳴り響く。


「あーあ……」


「ふぅ……」


 メルターの剣が折れて宙を舞い、天井に突き刺さった。

 流石にオーラコントロールの差が出てしまったようだ。


「降参」


 メルターは笑顔を浮かべて肩をすくめる。


「勝者サシャ!」


「なーんでそんな顔してるの?」


「メルターさんの強かったから……」


 普通に戦っていれば負けていた。

 オーラは少しサシャの方が強かったけれど、オーラ込みで剣の腕前を競い合っても負けていたかもしれない。


 そもそもまだ戦いながらオーラを維持することはサシャにも難しい。

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