先輩に認められよう4
「今回はまあ運が良ければ簡単に出られるかもしれないしな」
「そうなんですか?」
「考えてもみろ。トーナメント方式で戦うのにオーラユーザーは六人だ。準決勝まで勝ち上がれば交流大会に進めるということは二勝すればいい。当たる確率として高いのはオーラユーザーじゃない上級隊員の方だ」
「確かに……」
仮に一回戦でオーラユーザー同士が当たらないように組み合わせたとしたら、一回戦で戦うのはオーラユーザーではない人になる。
そして二回戦に進んだとしてもオーラユーザーと戦わない可能性があるのだ。
つまり組み合わせによっては準決勝までオーラユーザーと戦わないことがあるのだった。
オーラユーザーと戦うとしても一回勝てれば準決勝まで勝ち残れるかもしれない。
「まあ組み合わせも完全にランダムではないから……お前の場合は一回勝てれば、だろうな」
マジュエットは目を細める。
全てを運に任せた組み合わせてトーナメントを行うと、オーラユーザーが偏ってしまうこともあり得る。
そのためにある程度作為的な組み合わせにされてしまうことは仕方ない。
ギルドとして出したい人はいる。
イースラはきっと出したい人には入らない。
となるとイースラは自分で力を証明しなければならないだろう。
「本気でやるつもりか?」
「ええ、やるだけやってみるつもりです」
エティケントまでの道が見えた。
かなり細い道であり、今のイースラにはかなり厳しい道のりだろう。
だが挑戦もしないで諦めるようなことはしない。
「……ならば手助けしてやろうか?」
イースラの目を見て、本気なのだなとマジュエットは察した。
「手助け……ですか?」
「少しでも勝ち抜ける可能性を上げてやる」
「どうやって……」
「人にはそれぞれ癖ってものがある。お前はそんなものがないほど綺麗に剣を学んでいるが、多くの人が戦いの中で抜けきらない動きがある。それを知っていれば隙をついたり、先読みして動くことができるはずだ」
「どうして教えてくれるんですか?」
癖を教えてくれることはありがたい。
動きが分かっていればそれだけイースラの方が有利になるからだ。
しかしそこまでしてくれる理由が分からない。
「…………気に入らないからさ」
「気に入らない……」
「オーラユーザーってやつがな。言ってしまえば嫉妬だが……それを鼻にかけてる奴もいる」
同じ上級隊員であっても、オーラユーザーとそれ以外ではやはり差がある。
明確に見下すなんてことをする人はいないが、オーラユーザーの中にはどこかで自分の方が上だという意識がある。
マジュエットの中にもオーラユーザーが羨ましいと思う気持ちもある。
上級隊員にはイースラという新たな存在をよく思っていない人もいる。
新たな才能を脅威に感じ、あるいは嫉妬しているのだ。
特にオーラユーザーたちは同じくオーラユーザーなイースラに対して複雑な思いだろう。
もしここで、イースラが下剋上を起こしたら。
普段偉そうなオーラユーザーの奴らはどんな顔をするだろうか。
純粋な好意も少しある。
だがちょっとしたイタズラ心みたいなものがマジュエットを動かした。
「四つの枠の一つを奪い取れ」
イースラが勝ったら酒の席で言ってやるのだ。
あいつが勝つと思っていた。
俺の目に狂いはなかったと。
「じゃあお願いします」
イースラは素直に頭を下げる。
こんなところも教えたくなるところなのかもしれない。
「まずロンダルのやつはだな……」




