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異世界ダンジョン配信~回帰した俺だけが配信のやり方を知っているので今度は上手く配信を活用して世界のことを救ってみせます~  作者: 犬型大


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先輩に認められよう3

「交流大会?」


「ああ、お前も選考に参加することができるぞ」


 やれることをやるしかない。

 機会はきっと訪れる。


 そう思いながら日々を過ごしていた。

 いつもの訓練を終えたところで、五級から一級の下級隊員の訓練を担当している上級隊員がイースラに声をかけてきた。


 マジュエットという人で、訓練を担当してくれているのでイースラでも接点のある上級隊員だった。

 中年に差し掛かるぐらいの年齢であるが、まだまだ若々しくて戦闘技術は非常に高い。


 イースラが真面目に訓練に取り組んでいるためか、いつしかイースラにも優しくなった。

 少し前に外に出てのモンスター討伐であわあわとしていた隊員とは別の人である。

 マジュエットによると交流大会なるものがあるらしい。


「そもそも交流大会ってなんですか?」


 イースラは汗を拭きながら聞いたことがないなと思った。


「そうか、お前この辺りで暮らしてたわけじゃないもんな。交流大会ってのは誰が、そしてどこが強いかを競うもんだ」


「誰が、は分かりますけど、どこがってなんですか?」


「ギルドさ。だから交流なんだよ。元々あるギルドがどっちが上かを決めるためものを国の管理下で行ったのが始まりだ。それがいつしかギルド同士が競い合い、一番強いギルドはどこか、なんで決めるイベントになったのさ」


 知らなかったなとイースラは思った。

 回帰前はあっちこっち連れて行かれたり、イベントを楽しむ余裕なんてなかったので知らなくとも仕方ない。


「選考はなんですか?」


「全員出してたら終わるまで時間がどれだけかかるか分からないだろ。だからあらかじめ各ギルドから出られる人数が制限されている。そのためにギルドの中で誰が大会に出るのか選考……要するに戦って決めるわけだ」


 つまり交流大会というどのギルドが強いのかを決める太海があって、そのための選考大会がギルドの中で行われるという話であった。


「そうなんですね」


「興味なさそうだな」


 そっけない態度のイースラにマジュエットは目を細める。

 なんとなくイースラが興味なさそうなことは分かっていた。


「マジュエットさんはどうなんですか?」


「俺は選考に勝てはしないから出られないさ」


「それって」


「オーラが使えないからな」


 少し寂しげにも見える表情でマジュエットは笑う。

 世の中誰しもがオーラを使えるわけじゃない。


 使えても程度の差があるものなのに、使えないという人のほうが多い。

 上級隊員になるのにオーラは必須ではない。


 オーラが扱えれば昇級は早いものの、実力があれば上級隊員にはなれる。

 才能によってはもう一つ上の小隊長補佐や、タイミングや人望によって小隊長まで狙うことができる。


 それ以上はオーラによる強さがないと厳しい。

 マジュエットはオーラが使えない。


 ひたすらに剣の腕を磨き、技術だけなら他の人にも負けない自信があるマジュエットでもオーラを前にすれば技術では埋められない差ができてしまう。


「上級隊員にオーラを使えるやつはお前を含めて六人だ。上級隊員から選ばれるのは四人。二人余るわけだな」


 マジュエットは指を四本立てる。


「四人ですか……」


 少ないなとイースラは思った。


「上級隊員は今現在十六人、選考はトーナメント方式だ。準決勝に上がった四人が出場というわけだな」


「……うーん」


 正直あんまり乗り気ではない。

 頑張ればなんとかなるかもしれないけれど、あまり目立つのも良くはない。


 せっかく馴染んできたのにここで目立てば反感を買う可能性もある。


「交流大会って優勝したら何か貰えるんですか?」


「もちろん色々あるさ。賞金も出るし、魔力エリクサーがもらえる」


「おっ、魔力エリクサーですか」


 魔力エリクサーという言葉にイースラは反応を見せる。

 エリクサーと魔力エリクサーは少し違う。


 エリクサーは怪我の治療などを行える万能な薬で、魔力エリクサーは服用した人の魔力を増やしてくれる効果がある薬なのである。

 オーラが使えない人でも、魔力エリクサーを飲めばオーラを使えるようになる。


 オーラが使える人が飲めば、オーラが一段階強化されるという優れものなのだ。

 手に入るなら手に入れたいものである。


 しかし滅多に手に入るものではない。

 配信ショップでも売っていることがあるけれど、そんじょそこらの人では手に入らないぐらいの高級品だった。


 ちょっと興味は出てきた。


「もちろん名誉ということもあるし、優勝すればうちのギルドからも色々優遇される。給料の昇給に役職の昇級も決まったようなものだ。あとは……王族とメシが食える」


「メシ?」


 急に変なものが出てきたなとイースラは思った。


「昔はギルドしか出られなかったが……今は一般の人も出られる。そして国の方でも大会に関わる理由はスカウトという側面がある」


 大会で実力を見て、国の方で引き抜く。

 あるいは一般参加者でいい人がいれば声をかける。


 ただ大会の最中でそんなことをすればギルドとの軋轢にもなる。

 だから大会後に食事会と称して人を集めるのだった。


「上位入賞者、あるいは目をつけた人が招待される。多少堅苦しい場だがメシは美味いらしい。堅い立場が欲しいならスカウトされてもいいかもな。もしお呼ばれされるなら、だけど」


「……その場には王女様も来るんですか?」


「あっ? ああ、来るらしいぞ。珍しいな? そういうのに興味あるのか? あの子……サシャっていう子とそういう関係じゃないのか?」


「まあ王女様ってのにちょっと興味があるんですよ」


 マジュエットは目を細めてイースラのことを見る。

 どこか大人びているイースラだが王女様なんてそんなことに興味があるのかとニヤリとしてしまう。


 イースラの方は少し慌てたように笑って誤魔化す。

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