入団テスト7
「最後に聞こう。なぜ入団したい? お前からだ」
「お、俺?」
ゲウィルはクラインを指差した。
「俺は……強くなりたい、から。わかんないけど……強くなりたいんだ。強くなればきっと色んなことができるから」
なぜ入団したいと言われてもイースラに連れてこられたからではあるけれど、クラインはなんとなく質問の意図を汲み取って答えた。
「強さか。もっともな理由だな」
ゲウィルは大きく頷く。
「君は?」
ゲウィルが次に視線を向けたのはサシャだった。
「私は……分からない」
なんでと聞かれても答えられない。
強くなりたいけどそこまで強い欲求もない。
イースラに流されるままにここにきてしまった感じはどうでも否めないのである。
「でも私にできることがあるなら頑張りたい。私たちは孤児だからあのままだったらどうなってたか分からない。でもそんなところからイースラが引っ張ってくれた。だからイースラのために何かできるなら……私もやるんだ」
「他者のため……か。それもまた一つ。最後に君は?」
「俺は守りたいものがたくさんあるんです。それら全てを守る。そのために力が必要で、利用できるものも必要です」
「俺のギルドを利用するつもりか?」
「はい! 守るもののためならなんだって利用します。それがあなたでも」
「ふふふ……守るもののため、か。そのためには俺すら利用するか。いいだろう。利用してみろ! お前にその価値があると俺に証明し続ける限り利用されてやる!」
ゲウィルが勢いよく立ち上がった。
「守るための力を証明し、何を守るのか見せてみろ。必要なら力を貸してやる。そして俺もお前を利用させてもらおう!」
魔力も何も使っていないのに空気がビリビリと振動するような威圧感がある。
「ムベアゾ師団長とクォンシー師団長の申し入れを受け入れる。イースラ、クライン、サシャ、お前たちは今日から我々の家族だ! たとえ道を違え、異なる方に進むことになろうとも敵対しない限りこの絆無くなることはない!」
ちょっと暑苦しいなとイースラは思った。
だけど嫌いじゃない。
「三人ともそれでいいな?」
「はい、よろしくお願いします」
「「よろしくお願いします!」」
イースラたちは頭を下げて入団を受け入れた。
本来想定したような感じではなかったけれども見事第一候補に入ることができた。
これからどうなっていくのか。
それにはイースラにもわからないことが多い。
けれども確実に前には進んでいる。
少しずつでもいい。
前に進むのだ。
足掻いて、前に進んで、諦めずにいることできっと今回は全てを守ってみせる。
世界を救う英雄イースラは小さくも、大きな一歩を踏み出したのであった。
ーーー第一章完結ーーー




