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入団テスト4

「んじゃ次は俺だな」


 サシャが使っていた木剣を受け取ってイースラが前に出る。


「俺の相手は誰ですか?」


 剣を軽く振りながらムベアゾのことを見る。

 実力を見せられればいいのでそんなに気負ってもいない。


「……ハルメード」


「私がいきましょうか?」


「いや、俺に剣を」


「まさか……」


「いいから早く」


 ハルメードが木剣を取ってきてムベアゾに渡す。


「俺が相手しよう」


「……それは厳しくないですか?」


「安心しろ、勝てなんて言わない。手加減もしてやる。もし仮に一撃でも攻撃を届かせることができたら上級扱いで入団を認めてやる」


「簡単に言ってくれますね」


 イースラは苦笑いを浮かべる。

 ゲウィル傭兵団はかなり大きな組織である。


 その中で兵士師団長という立場は団長、副団長に次ぐ役職である。

 決して政務能力だけでなれる役職じゃなく、高い実力がなければいけない。


 クラインの一撃を止めた時の動きといいムベアゾは只者ではない。

 イースラの記憶にある人ではないけれども強いことは確実だ。


「それではいつでもかかってくるがいい」


 剣を構えることもなくムベアゾは開始を言い渡す。

 他の人がやっているならナメているなと感じるところだが、イースラから見て剣を構えていなくともムベアゾに隙はない。


「仕方ないか……」


 わざと隙を作って引き込む気配もない。

 イースラから動き出すしかないのだ。


「……一撃くらわせてやる!」


 イースラは床を蹴って一気にムベアゾとの距離を詰めた。


「むっ!」


「これが見たかったんだろ!」


 剣が届くという距離に入ったイースラはオーラをまとった加速してムベアゾの後ろに回り込んで剣を振る。


「はははっ! 嘘ではなかったか! 魔法の殺気、思わず身がすくんだぞ」


「嘘つけ!」


 決まったと思ったのに気づいたら剣が弾き返されていた。

 ムベアゾの動きが速すぎる。


 それでも攻撃はしてこないので手は抜いてくれている。

 どうせ勝てはしない。


 ならば今の自分にどこまでできるのか確かめてやるとイースラは思った。


「三人ともオーラを使えるなんてどうなってるんだか……」


「それにあいつ強いぞ」


 周りで見学しているギルド員たちがざわつく。

 クラインもサシャもオーラを使った。


 さらにイースラまでオーラを使っている。

 その上にイースラの動きはクラインとサシャとは比べ物にならないぐらいである。


「後ろ……」


「こっちだ!」


 イースラが視界から消えてムベアゾは後ろを振り返った。

 後ろに気配を感じたのだがイースラは後ろまで回り込まずに横にいた。


「かすった!」


「あのガキやりやがったぞ!」


 コンパクトに突き上げられたイースラの剣はムベアゾの頬をわずかにかすめた。


「ヤバっ」


 茶色いオーラが込められた剣が迫ってイースラは自身の白いオーラを一気に剣にまとわせて防御した。

 力を受けきれなくてイースラが大きく吹き飛ばされる。


「危ねぇ……手加減するんじゃなかったんですか?」


 オーラを解放して防がなきゃ剣が折れていただろう。

 今の一撃は明らかにこれまでよりも加減のないものだった。


「手加減はしているさ。次で終わりにしよう」


 ムベアゾの体がオーラに包まれる。

 まるで大樹のような濃い茶色のオーラはとてもじゃないが手加減してくれているようには見えなかった。


「ルーダイ! シールドを張れ!」


 ハルメードがひっそりと見学していたルーダイに向かって叫ぶ。


「チッ! 分かった!」


 ルーダイが手を伸ばして魔力を集中させるとイースラとムベアゾを包み込むように半透明の魔力のシールドが展開される。


「これを受けられたらもっと良い待遇をしてやろう」


 グルンと剣を一回転させたムベアゾは体を捩じるようにして剣を引いて力を溜める。


「ここまでするのは望んでないんだけどな」


 イースラはため息をつく。

 別に良い待遇なんていらない。


 普通に入団できればそれでよかった。

 だがどうせならやるだけやってみる。


 向こうがその気ならこちらもやってやるとイースラも剣を構えて腰を落とす。

 薄くまとっていたオーラをより厚く解放してムベアゾの攻撃に備える。


「ふうううん!」


「オーラブラスト!」


 ムベアゾが剣を振ると茶色いオーラが四つの斬撃となってイースラに向かって飛んでいく。

 本来体から離れると消えてしまうオーラを固めて飛ばす上級技術がオーラブラストである。


 手加減も何もないなとイースラは驚く。

 全部撃ち落とすことなんて出来はしない。


「最小限……そして最大限!」


 少ない労力で大きな効果を生むことが戦いにおいても大事である。

 イースラはオーラブラストに突っ込む。


「イースラ!」


 全力でもオーラブラストを防げるのは一つだけ。

 イースラは高速で飛んでくるオーラブラストを見極めて斬撃のど真ん中を突き抜けようとする。


「おりゃああああっ!」


 一つ二つとオーラブラストを回避し、どうしてもかわせない一つをオーラを込めた剣で相殺する。

 オーラブラストを一個相殺するだけなのにイースラのオーラはほとんど持っていかれてしまう。


「見事……」


「まだ……終わりじゃないぞ!」


 イースラはオーラブラストを乗り越えた。

 オーラブラストがシールドに当たってルーダイは顔をしかめる。


 ムベアゾはオーラブラストを乗り越えたイースラを称賛しようとしたけれどイースラの目はまだ闘志に満ちていた。


「チッ……届かねえか……」


 真白なオーラに包まれたイースラの剣がムベアゾの目の前を通り過ぎた。

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