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異世界ダンジョン配信~回帰した俺だけが配信のやり方を知っているので今度は上手く配信を活用して世界のことを救ってみせます~  作者: 犬型大


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友の運命を変える3

「それじゃあ入るぞ」


 カメラを持ったイースラはみんなの後ろからついていくようにダンジョンに入っていく。

 見ている人が画面酔いをしないようにできるだけカメラアイを揺らさないようにするのも一つの技術である。


 もっとお金があれば撮影の揺れも抑制してくれるカメラアイなんてものがあるのだけど今は手元でなんとかするしかない。


「なんか……変な感じだな」


 穴の中に入っていくと肌に感じる空気感が変わってクラインはキョロキョロと周りを見る。


「洞窟型か」


 ダンジョンの中はゲートダンジョンと同じくどうなっているのか分からない。

 穴の中に入ってきたのに外のような光景が広がっていることもあるのだけど、このダンジョンの中は洞窟の中のような光景が広がっていた。


「比較的明るいな」


 洞窟の天井に光る石が一定間隔で露出していて意外と中は明るい。


「道がいくつか分岐しているな。印をつけながら進んでいこう」


 全く何もせずに適当に進んでいくなんて人たちもいる中でベロンは意外としっかりしている。

 ベロンはベテラン冒険者ではないにしても基礎的な冒険者の知識としてはちゃんと身につけて冷静に活かしていた。


 入り口横の壁にナイフで縦の傷をつけ、これから進む道の横に横の傷をつけておく。


「こっちに進むぞ」


 どの道がいいかなんて見ても分からない。

 ベロンは適当に端の道を選んだ。


「音がいたしますね」


 慎重に進んでいると道の先の方からカサカサという音が聞こえてきた。

 人が立てる音ではない。


 一気に空気に緊張感が走り、各々武器を構える。

 盾を持ったデムソが前に出て、後ろにベロン、バルデダル、ポムが横に並び、三人の後ろにスダーヌが杖を手に警戒する。


 イースラたちはスダーヌのさらに後ろで待機して、カメラアイをしっかり構えて攻略の様子を配信する。


「来るぞ!」


 カサカサとした音が近づいてくる。

 黒い何かが見えてデムソはその正体を確認しようと目を細めた。


「ケイブアントだ!」


 走ってきた魔物はケイブアントと呼ばれる昆虫型の魔物であった。

 鈍い黒色の外骨格に覆われていて頭と腹にくびれがある。


 六本の足を使ってカサカサとイースラたちの方に向かってきていた。


「スダーヌ!」


「任せて!」


 スダーヌが意識を集中させると杖の周りに細く炎が渦巻き始める。

 杖の先に炎が集まって人の頭ほどの大きさの火の玉を作り出す。


「燃えなさい!」


 スダーヌも普段は何をしているのか分からないような人であるが魔法の実力はそんなに低くない。

 回帰前色々な人を見てきたイースラからすればまだまだな魔法使いであり、サシャが本格的に魔法を学び始めれば簡単に超えてしまえるような実力ではある。


 しかし片田舎の小さいギルドにいるにしてはそこそこ優秀だ。


「ポム、無理はするな!」


 スダーヌが火の玉を放ち、先頭を走るケイブアントに見事にヒットする。

 燃え上がるケイブアントを避けて他のケイブアントが後ろから飛び出してくる。


 人ほどの大きさもあるケイブアントの攻撃をデムソが盾で防ぎ、隙をつくようにベロンたちが前に出て攻撃を仕掛ける。

 それぞれの実力は高くはないけれどスダッティランギルドの連携は悪くない。


 ただその中でポムは少し浮いた存在となっている。

 動きも良くなきゃ連携としても邪魔になっているぐらいにイースラには見えた。


 普段はカメラアイ係で戦うことも少ないポムは明らかに連携が分かっていなかった。

 必死に剣を振って戦っているが正直酷いものである。


「ふぅ……みんな、怪我はないか?」


 五体のケイブアントを倒してベロンはみんなの様子を確かめる。

 みんな、というよりもポムの様子である。


 これぐらいの相手ならベロンもデムソも大きく問題なく戦えていたが、ポムはたった一回戦っただけで汗だくになっていた。

 張り切って全部空回りしている。


 体力も少なければ動きに無駄も多いからこんなことになるのだとイースラはカメラアイにポムが映らないように気をつけながら撮影していた。

 ポムのことを撮影してしまえば動きが悪くて苛立つ人も出てきてしまう。


 顔が良いやつの汗だくの姿なら需要もあるが、汗だくのポムを映しても視聴者の気分は良くないだろうと上手く外して映している。


「デムソ、魔物を回収するんだ」


「はいよ」


 ベロンはポムのことを見て軽くため息をついた。

 汗だくで疲れているポムに雑用をさせるのは酷だろうとデムソにお願いする。


「クライン、荷物の中に小さい袋があるだろ? それをくれ」


「えっと……これですか?」


「それだ」


 デムソはクラインが荷物から取り出した袋を受け取った。

 大人の手のひらぐらいの大きさがある袋で、そんなもので何をするのだろうかとクラインは不思議そうにデムソの行動を見ている。


「あれなに?」


 配信に声が入らないようにサシャがこっそりとイースラに聞く。


「あれは魔物袋さ」


 これぐらいならいいだろうとイースラは普通に答える。


「魔物……袋?」


「そうだよ。魔物を入れておくための袋さ」


「あんなのに……あっ、吸い込まれた!」


 魔物を入れておくためなんていうけどあんな袋じゃ足の先っちょしか入らない。

 そんなことを思いながらサシャがデムソを見ていた。


 デムソが倒したケイブアントに袋の口を近づけるとケイブアントの死体が袋の中に吸い込まれていったのである。

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