オオカミを捕まえろ1
冒険者ギルドに入ることにはメリットとデメリットがある。
メリットの一つは安定性。
お金の面でもそうだし、ゲートダンジョンの攻略だって計画的に大人数で行える。
ゲウィル傭兵団クラスになれば住居や鍛錬する場所もある上に、社会的信頼がないとみなされがちな冒険者としてもギルド員だとある程度の信頼を得られる。
こうした様々なことが安定するのはデカいメリットである。
対してデメリットもある。
それは自由が制限されること。
ギルドとしての活動があったりするので、何でも好き勝手に行動することができない。
特にギルドから遠く離れて何かをすることは難しいのだ。
何かしたいのなら、休みを取るか運良く任務でも入るかしかない。
「目指せ、ビルドリン村!」
だから遠くに行く用事がある時にはなかなか理由を作るのに苦労する。
ゲウィル傭兵団にはまだお世話になりたいので、辞めるという選択肢はない。
「私のポケットマネーから出ていること忘れないでくださいね?」
「お金たくさんあるでしょう?」
「薄給なのですよ?」
「そんなわけないじゃないですか」
先日、配信でライアンウルフの情報を求めた。
するといくつかライアンウルフなのではないか、というコメントが来ていた。
コメントを元にして、ライアンウルフがいる可能性が高そうなところをいくつかピックアップしてエティケントに伝えた。
そこからエティケントがライアンウルフらしき人を見つけ出したのである。
見つけたなら後はスカウトに行くのだけど、ここでギルド所属のデメリットが出てきた。
「あなたを雇うのにもかなり疑われて……相当警戒されました。もう彼にも話してはどうですか?」
「……それもいいかもしれませんね」
だがライアンウルフのスカウトにはイースラが必要だ。
そこでイースラを連れ出すためにエティケントと一計を案じたのだった。
エティケントが魔物の生態調査に行くのに人手が必要で、そのためにゲウィル傭兵団に協力を依頼するということにしたのである。
「依頼料もふっかけられたように高額……しかも監視までつけられているのですよ?」
「エティケントさんが自分で見つけられず、俺がヒントあげたんですからこれぐらいは当然ですよ」
「……まあ、そこを突かれると痛いですね」
ゲウィルには相当渋られた。
エティケントがイースラのことを指名したものだから余計にである。
魔剣については、自分ならば弱いからすぐに制圧できるとエティケントに自ら提案したと説明することでゲウィルを何とか納得させた。
ただゲウィルの中の不信感は完全には払拭しきれていない。
回帰してきたことを打ち明けて協力をお願いすることもあり得る考えだ。
ただイースラが周りにどんな影響を与えるのか分からない以上、軽く打ち明けるものでもない。
ただもうサシャとクライン、エティケントにウライノスは知っている。
サシャとクラインについては夢で見た程度に話しているものの、秘密にしておくのも今更な感じは多少ある。
もし仮にゲウィルが理解を示してくれて、協力してくれるならありがたい。
「後で……どうにか話してみようかな」
「今回は許していただけましたが、そう何回も使える手ではないでしょう」
エティケントはチラリと今回のメンバーを見る。
イースラは上級隊員であり、サポート的な下の隊員を選ぶことができる。
なのでサシャとクラインを引き連れてきている。
子供だけでは不安、そしてエティケントを信用できないということで他の隊員もつけられていた。
「まさか……副団長ついてくるとは思いませんでしたもんね。そんなに信用されてないんだな……」
エティケントを監視して、イースラたちを引率する人として来ていたのは、ゲウィル傭兵団の副団長であるサルドゥーラという人だった。
ゲウィル傭兵団の副団長は目立たない。
実力がないからとか、そんなわけではない。
ゲウィル傭兵団が単なる傭兵からちゃんとした冒険者ギルドに生まれ変わる立役者であり、ここまで徹底して影で全体を支えているのがサルドゥーラなのだ。
もちろん実力はゲウィルも認めるほどに高い。
そんな人が監視についているのだから、ゲウィルの不信感も高い。
本当はゲウィルがついてくるぐらいの勢いだったのだけど、トップがそんなことでギルドを空けるわけにはいかないとサルドゥーラに宥めすかされてのことだったりする。
「あなたの師匠までついて来ていますしね」
「こっちは俺がお願いしたんです」
ウライノスとギリウラもいるのだけど、それはイースラがお願いしたからだ。
事情を知っているし、やはり実力者は何人いても困らない。
結果的に実力者たちと子供という不思議なメンバーになっている。
「無事ライアンウルフをこちら側に引き込めればいいのですが……」
「フロワさんのこともありますしね」
「ライアンウルフがフロワのことを治せなかったら、私は怒りますからね」
「そうなったら頑張ってエリクサー買うんで許してください」
回帰前にはエティケントとこんなふうに会話するとは思いもしなかった。
これだけでも回帰前とはだいぶ違うものだとしみじみ感じる。




