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【第二章完結】異世界ダンジョン配信~回帰した俺だけが配信のやり方を知っているので今度は上手く配信を活用して世界のことを救ってみせます~  作者: 犬型大
第三章

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師匠現る2

「構わないですよ。俺ももう年です。いつ引退するのか、それは頭にありました。良いタイミングだったのですよ」


 ビブローは穏やかに笑う。


「後進の育成にも関わっておりますし、完全に引退というわけでもありません」


 騎士団長まで務めた男が五体満足で勇退するのだから、王国としても惜しいと思うところはある。

 ユリアナの護衛をしたいというので国の騎士として留まってもらい、ついでに若手の騎士の指導も関わってもらうように説得したのだった。


 ビブローは指導の方は断ろうとしていたのだけど、上手くいけば若手騎士をユリアナの側に取り込めるかもしれないとイースラが勧めて、少し関わる形になった。

 それでも騎士団長の頃に比べるとビブローの余裕は大きくなった。


 そんな余裕の時間にイースラはビブローに相手をしてもらっている。


「次! 俺お願いします!」


「ええ、構いませんよ」


 クラインが勢いよく手を上げる。

 アルドッグの制圧はうまくいって、攻略に成功した。


 それはいってしまえば結果的にであって、周りから見るとイースラはかなり危ない橋を渡っていた。

 いざとなればエティケントに拘束してもらうなんて策もあったし、安全には気をつけていた。


 魔剣を制圧できるという自信あったのだけど、ヒヤヒヤした人も多い。

 ギルドの一員として、クラインとサシャはリアルタイムで配信されていた攻略の様子を見ていた。


 危ないことをしたとイースラはサシャにすごく怒られた。

 そして、二人はイースラに追いつこうとまたやる気を燃やしているのだ。


「まだ怒ってる?」


「怒ってなーい」


 クラインがビブローと戦い始めて、イースラはサシャの横に行く。

 サシャを宥めるのには苦労した。


 周りはニヤニヤとしていたが、イースラにとっては最大の修羅場であったのだ。

 その場はなんとか収めたけど、時折また不機嫌になる。


 イースラがどうにかするしかなかったというところは理解したのだろうが、やはりイースラが何か危ないことをするということに納得しきれない自分がいるのだろう。


「機嫌……治してくれよ」


 イースラは気恥ずかしさを我慢して、サシャの頬に手を伸ばす。

 くすぐるように指の背で頬を撫でると、サシャはわずかに耳を赤くして身をよじる。


 回帰前に女性を得意としていた奴がこんなことをやっていたことをイースラは覚えている。

 その後頬にキスまでして、イチャつき始めていたのだけど、そこまでは真似できない。


「デュッ!」


「うぐっ!」


 くすぐったくて顔も赤くなり始めたサシャはイースラの脇腹に手を突き刺す。


「どこでそんなの覚えたの!」


「み、見よう見まねです……」


「別に……嫌じゃないけど…………まあ、ちょっとなら……そうじゃなくて!」


 実際そんなに嫌じゃなかった。

 他の人がやっていたらすごく冷たい目で見るだろうけど、やられてみると案外悪い気のするものではない。


 イースラの気持ちだって分かっていて、伝わってくるしモヤモヤとした気持ちも不思議とどこか行ってしまった。


「そんな遊び人みたいなのは……その、人がいない時にこっそりやるもん…………だよね」


 やるな。

 サシャはそうは言えなかった。


 イースラがやった仕草は女の子慣れをした人のものであり、あまり似合わない。

 ただやって欲しくないとまでは言えず、サシャは顔を赤くしてモジモジとする。


『イースラの兄貴もちょっとこんなふうにしてみればいいんすよ! そうすりゃ一人二人ぐらいならコロッと落ちますよ』


 イースラの頭の中で声がこだまする。

 そんな言葉をかけられた時、やらないよと渋い顔をして答えた。


 だが、思いの外効果はあった。

 恥ずかしさで胸がゾワゾワとするものの、ちょっとぐらいは聞いてもよかったかなとイースラはとある顔を思い出して笑うのだった。


「ケッ……なんだよあれ!」


「ふっ、戦いの最中に集中を乱してはいけませんよ」


「んでっ!?」


 甘ったるい空気を感じて、クラインが顔をしかめる。

 そうして剣筋の乱れたクラインの頭に木剣を落とす。


「イースラ、いるか?」


「はい、なんですか?」


「お前に客だ」


「客?」


 クラインが頭を抱えて、痛みにピョンピョンと飛び回る。

 次はサシャかなと思っていたらマジュエットがイースラを呼びにきた。


「後、サシャの相手お願いします」


「ええ、分かりました」


「サシャもしっかりな」


「うん、イースラのこと、超えてやるんだから!」


 恥ずかしさを我慢しただけあってサシャの機嫌も治った。

 イースラはマジュエットについていく。


「それで誰なんですか?」


 イースラに客なんて珍しい。

 訪ねてくるような知り合いなんて、数えるほどしかいない。


 一番可能性がありそうなのはエティケントだが、基本的には関係が表にバレないように堂々と訪ねて来ないはずだ。

 ただアルドッグのゲートダンジョンの攻略配信から、ゲウィル傭兵団所属ならことがバレてファンレターのようなものが届いたことはあった。


「さあな……俺は知らない人だ。名乗りもせずお前のことを呼んでる」


「そんな怪しい人に俺のこと合わせるんですか?」


「そうは言ってもお前を名指しで来てるしな」


 マジュエットは困ったように顔をしかめる。

 今の所ファンレターのみで直接会いにくる人はいない。


 とうとう厄介なファンでも現れたか、とイースラも内心で面倒に思っていた。

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