広がる影響3
「今回のゲートダンジョン攻略は国が主導し、攻略したのだと公表させてもらう。その代わり、報酬はしっかりと支払わせてもらう」
「承知しました」
攻略の配信こそされているが、一般の人はゲウィル傭兵団と兵士の区別もしない。
国の方で攻略したのだといえばそれを信じる人は多い。
ゲウィル傭兵団はあくまでもサポート的な立ち位置であって、それに甘んじる代わりに利益を得るのだ。
元よりそうした話で動いていたのでゲウィルに文句はない。
王国はゲートダンジョンを攻略して国民を守り、第二王子の失敗も挽回できる。
ゲウィル傭兵団は王国の信頼を得て、大きめのお金を得られる。
互いにちゃんと利益のある話であった。
「ユリアナ、此度の件、ご苦労であった」
「あ、は、はい!」
急に声をかけられてユリアナは驚いた顔をする。
今回の件はイースラがエティケントに声をかけて、エティケントがユリアナに声をかけた。
そしてユリアナがイースラのために、アルゼストに提案してエティケントが後押しした。
ユリアナの関与としては非常に薄いが、ゲートダンジョンの攻略隊の起案はユリアナということになる。
ユリアナの教育係をしているエティケントまで進んで手伝ったのだから、否定しようもない。
「消極的だったユリアナがこうして動いたこと……嬉しく思うぞ」
アルゼストは目を細めて笑顔を浮かべる。
ユリアナは決して積極的と言える子ではなかった。
わがままを言わず大人しくてお淑やかといえば聞こえはいいが、消極的で内向的と見なす人もいる。
ゲートダンジョンの攻略に口を出してくるのは、アルゼストとしても意外なことだった。
目的こそイマイチわからないが、ユリアナに積極性が生まれた。
だから今回のゲートダンジョン攻略も許可したのだ。
「エティケント殿もご苦労であった」
「いえ、私は何もしておりません」
エティケントは優雅にお辞儀をする。
ユリアナが一人で考えてやったことだとはアルゼストも考えていない。
エティケントも教育者としては優秀だが、政治に関わろうとはしない。
そのためにやや消極的な教育にもなっている。
何かがユリアナとエティケントを変えた。
こうなる前にユリアナとエティケントに対して新しく関わりを持ったのはイースラである。
「ん?」
イースラはアルゼストと目があった。
だいぶ緊張も落ち着いたけれど、目を見られるとまた少し緊張がぶり返す。
「……期待しているぞ。新たな魔剣の持ち主としてもな」
「ご期待に添えられるよう、努力します」
イースラが本当にユリアナとエティケントに影響を与えたのか、アルゼストは知る由もない。
だが王として周りのことを見る目は確かに持っている。
ゲウィル傭兵団に現れた期待の新星。
「ふふ、これからが楽しみだ」
イースラは大物になるかもしれない。
魔剣を渡した選択が大きな実を結ぶのかどうか、アルゼストは楽しみになった。
「成長次第では……」
アルゼストはチラリとユリアナのことを見る。
かつてないほどの才能だとハッキリしたら取り込むために手段は選ばない。
幸にして、今のところイースラとユリアナの関係も悪くはない。
「ささやかながら食事会を開くつもりだ。よければ食べていってくれ」
人の良さだけでは王になれない。
腹の中に抱える計算を少しも表に出さないようにアルゼストは笑顔を浮かべた。
イースラという存在は、確かに回帰前とは違った流れを作り出しつつあったのだった。
ーーー第二章完結ーーー




