魔剣7
「そのために可能ならばオルトーンを殺さずに制圧して、魔剣をどうにかしたいと考えている」
次期騎士団長とも言われる実力の人を殺してしまうのは、国としてもかなりの損失である。
可能ならばオルトーンを殺さずに制圧したいという目的もあった。
「ただ最悪の場合はオルトーンを殺すことも必要だろう」
当の父親を前にしての重たい言葉。
しかしビブローがいるのは、その重たい決断のためである。
誰かが殺すぐらいなら自分が、ということでビブローが来ているのだった。
もはや覚悟をしている。
他人に殺されるぐらいなら自分で手にかけるとビブローは決めていたのである。
「実際中での戦闘は多くないはずだ。前に入った第二王子たちの部隊がほとんどの魔物を倒しているからな」
今回も人数としてはそれなりの規模であるのだが、それはゲートの魔物を警戒してのことではない。
やはり魔剣を手にした人を制圧するためなのである。
「オルトーンは強い。無理に制圧や殺さないことを考えてやられないように気をつけろ」
オルトーンを生存させられるのなら、それが一番いい。
しかしそれを優先して死んでしまうようなことがあれば本末転倒である。
「全員肝に銘じろ。優先すべきは自分の命だ。たとえ地面を転がることになろうとも生き延びろ」
ゲウィル傭兵団はその名前の通りに、元々傭兵であった。
傭兵であった時から、生き延びることをゲウィルは大切にしてきた。
その考えは今でも変わらない。
むしろ今は傭兵ではないからこそ、命を捨ててまで戦うことはないとすら考えている。
命を懸けても戦え。
こんなことを言う人も多い中で、逃げても泥に塗れてもいいから生き延びろというからゲウィルについていくことを決めた人も多かった。
「攻略の優先も魔剣の処理だ。ただ、どうすれば魔剣を処理できるのか分かっていない以上警戒は怠るな。見るものを惑わす力もあるから気をしっかり持つように」
改めてゲートの説明を受けて、みんなの雰囲気がピリつく。
どう攻略したらいいのか分からない。
このことがみんなにうっすらとした不安を抱かせていた。
「本当にやれるのですね?」
ゲート近くの野営地で、思い思いに過ごす。
もしかしたらこれが最後の日かもしれないと、みんなはほんの少しの覚悟を胸に抱く。
そんな中でエティケントはイースラに声をかけた。
「やりますよ」
イースラはニコリと笑う。
他の人が感じているような不安などないと言わんばかりである。
「これから何をやろうとしているのか……それを知ったら姫様がお怒りになりそうだ」
「俺も怒られそうな気がします。でも必要なことだから」
「厄介なことに首を突っ込みますね」
「リターンはありますから」
「私は死ぬつもりありませんからね」
「俺もですよ」
イースラとエティケントに白いカメラアイが向けられている。
いつもの執事だけど、こんなところにまでついてくるなんて何者なんだと思う。
とりあえずユリアナが見ているかもしれないので、イースラはカメラアイに対して笑顔で手を振っておいた。




