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異世界ダンジョン配信~回帰した俺だけが配信のやり方を知っているので今度は上手く配信を活用して世界のことを救ってみせます~  作者: 犬型大


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魔剣5

「何秒持つと思う?」


「5秒」


「いや、手加減するって言ってるし1分は持つだろ」


 周りではイースラを対象にした賭けまで始まっている。

 内容はイースラがどれだけ持ち堪えられるか、である。


 酷い人だと一瞬だなんて言っているが、ビブローが本気ならまさしくそんな結果になるだろう。

 だけどそんなふうに終わらせるつもりはないはずであるとイースラは思っている。


 オーラは使えば強くなる。

 格上の相手が受け止めてくれるというのなら力を出してもいいかもしれないと考えながら、軽く剣を振って体の調子を上げておく。


「さて、いつでも来るといい」


 ビブローは剣を軽く構えて、余裕の笑みを浮かべている。

 まだオーラも出していない。


 交流大会でオーラは見せたのだから、もうみんなの前でオーラを隠すような意味はない。


「…………感心してしまうな」


 イースラの体からオーラが溢れ出してくる。

 白いオーラは一瞬ふわっと広がりを見せた後、イースラの体を包み込むように覆った。


 服でも一枚羽織ったかのように薄く覆われたオーラは美しい。

 卓越したオーラコントロールだとビブローは目を細める。


 子供にしては、という話ではない。

 大人、あるいはビブローの周りのオーラユーザーを考えてもイースラのオーラのコントロール能力は高い。


 オーラの薄さなんて比べたことはないが、イースラのオーラの薄さは長年オーラを修業してきたもののようである。


「行きますよ!」


 イースラは地面を蹴って走り出す。

 魔力を鋭くビブローに向ける。


 魔力の殺気だ。


「はっ!」


 剣にも同じくオーラをまとう。

 まともに当たれば人間を真っ二つにできるだろう、手加減のない一撃をビブローに振り下ろす。


「ははっ、少し驚いたぞ!」


 魔力の殺気は確かにビブローに襲いかかった。

 なのにビブローはみじろぎの一つもせずに、イースラの剣を受け止めていた。


 明るい琥珀色のオーラがビブローの剣にまとわれている。

 流石にビブローほどの相手になると、魔力の殺気は通じない。

 

 ただほんの一瞬の動揺すら誘うこともできないのも、イースラには分かっていた。

 通じれば儲け物ぐらいの気持ちであった。

 

 だから通じなくても驚きはない。


「ふっ!」


「もう本気か! いいな!」

 

 イースラはオーラを爆発させるように放つ。

 オーラの力で体を強化して、そのまま攻撃を続ける。


「その剣はどこかで習ったのか?」


「ちょっとだけ」


 イースラの剣術は鋭い。

 時に素早く、時に重たく、変化にも富んでいる。


 ビブローが知る、ゲウィル傭兵団で教えている体系化された剣術の動きではなかった。

 ただ自己流というには洗練されている。


 誰かに習ったような動きだとビブローは感じた。


「そろそろ……こちらからもいくぞ!」


 ここまであえて防御に徹していたビブローが、反撃に出始めた。

 攻撃はできる人も多い。


 剣の振り方は誰でも覚えるし、仮に何も知らなくても剣ぐらいなら振ることもできる。

 防御こそ熟練度がよく出てくる。


 上手く防ぐのは意外と難しい。

 イースラの攻撃はかなりレベルが高いが、防御はどうだろうかと力と速度を徐々に上げていく。


「これならばどうだ!」


 イースラはビブローの攻撃をさばき、反撃まで繰り出す。

 ビブローはさらに攻撃の速度を上げる。


「くっ……」


 オーラの総量や力強さも、体の能力としてもビブローと差がありすぎる。

 剣術の技量だけなら回帰の経験があるので負けない自信はあるが、体が剣術を十分に活かせるほどにも成長していない。


「くらえ……!」


 このままでは押し切られて負けてしまう。

 イースラは起死回生の一撃として、ビブローの懐に入り込んで掌底を放つ。


「思い出したよ……そんなこともやっていたね」


「くっ……!」


 ビブローはイースラの掌底を腕で受け止めていた。

 腕の中に響くような衝撃にビブローはまた驚きを覚えていた。


 オーラを解き放って相手にダメージを与えるのは、一見簡単そうに見えて難易度が高い。

 相手当たる瞬間にオーラを放たねばならず、少しタイミングがズレると衝撃が相手の内側に届かずオーラの無駄になる。


 だがイースラがオーラを放つタイミングは完璧なものであった。


「…………参りました」


 イースラの首に剣が突きつけられる。

 気づけばイースラは汗だくになっていて、まとわれたオーラも波打ち始めている。


 もう戦うのにも限界だった。


「ふむ、よくやったな」


 ゲウィルが大きく拍手する。

 すると周りのみんなも、イースラを讃えるように拍手し始める。


 みんなが想像していたよりもイースラは長い時間を戦った。

 時間の長さとしてはそれほどでもないが、みんなが賭けの対象として予想していたものは超えていた。


「腕、大丈夫か?」


 みんながイースラによくやったと声を掛けて、頭をワシャワシャを撫でたりしてもみくちゃにされていた。

 ゲウィルはそっとビブローの隣に立つ。


 ビブローの腕にチラリと視線を向ける。

 それはイースラの掌底を受け止めた腕であった。


「折れたか?」


「折れてはいない。せいぜいヒビが入ったぐらいだろうな」


 ビブローはイースラの一撃をまともに受け止めてしまった。

 掌底から放たれた衝撃は防具を貫通して直接骨にダメージを与えていたのである。

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