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31 第二次遠征、始動

 その日のうちにレトゥグスが特別顧問権限で緊急会議を開き、あっという間に第二次遠征の日程を決めてしまった。


 第二次遠征は二日後の五月十八日。

 遠征場所は【帰らずの森】。


 遠征隊の人数は二十人で隊長は風紀委員長、副隊長はティナ。僕は隊員の一人に選ばれた。レトゥグスも指揮官として同行する。

 

 目的はダンジョン内にある次元錨(アンカー)の破壊――ではない。

 もちろん可能であれば次元錨を破壊する。でも、それはあくまで副次的な目的だった。

 最優先の目的は、日本の命運を左右する()()()()を手に入れることだった。


 翌朝、登校して教室に入った途端、クラスメイト達が一斉に僕に注目した。


 な、何事?


 もしかして、異世界からの転生者ってのがバレたのか? レトゥグスが箝口令の敷いたのに誰かが漏らしたのか?

 僕は冷や冷やしながら自分の席に着いた。みんなまだ見てくる。なんやねん。


「おはよ。ね、日都也君。聞いたよ」


 静馬が話しかけてきた。


「おはよう。聞いたって、何を?」


 僕は平静を装って返事をする。ちょっと冷や汗が出た。


「日都也君、明日の第二次遠征のメンバーに選ばれたんだよね?」

「あー」


 何だ、そっちかよ。思わず安堵の溜息が出た。


「うん、何か知らないけど選ばれた」


 そう惚けたのは、まさか第二次遠征を僕が言い出して、僕に行かせろってレトゥグスに迫ったからだなんて言えない。


「ずりーな、何でお前ばっかり」「けっ、昨日命令違反で持ち場を離れたくせによ」「死ぬかもだからマジ気を付けろよ」「骨は拾ってやらんぞ。ダンジョンまで拾いに行くのはまじダリぃだしな」「もう、縁起でもないこと言わないで。無事に帰ってくるに決まってるでしょ」「てか、今遠征する意味あんの? 防衛戦の準備が最優先じゃん」「防衛も無駄じゃね? 六月一日でどうせ死ぬべや」

 

 クラスメイトが口々に言う。口の悪い奴もいたけれど、みんな初等部の頃からの付き合いだから、何だかんだ言って心配してくれているのが伝わってくる。


「まあ、適当に行って適当に帰ってくるよ。お土産、何がいい?」

 

 僕が冗談交じりに言うと、友人の嶽愁平が笑いながら返事をした。


「クマの木彫り」

「北海道かよ」

「牛タン」と別のクラスメイトが言う。

「竜タンならワンチャン取ってこれるかも。食えるか知らんけど」

「東京ばな奈」また別のクラスメイト。

「自分で買ってこい」

「グ〇チのバッグ」

「僕はお前の彼氏か」

「韓国コスメ」

「国内旅行じゃ。大喜利かよ」


 最後に、静馬が珍しく真顔で口を開く。


「えっとね、わたしが欲しいのはね――」

「うん」

「日本の平和」

「……悪い、それは無理。でかすぎて僕の手に余る」

「むー」


 頬を膨らませる静馬に僕は笑顔で続ける。


「だから、それは六月一日にみんなで手に入れようよ」

「――うんっ!」


 静馬が満面の笑みを浮かべて頷いた。


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