27 絶望の宣戦布告
「てめえ……。どうやってオーランテの居場所を突き止めた」
「そんなの簡単だ。だって、オーランテに身を隠す方法を教えたのは僕だし」
「はあ? てめえ、何を………………。――? ――? いや、待てよ。その気取ったようなムカツク喋り方、俺に面と向かって文句を言う度胸。何よりその馬鹿みてえな表情。てめえ、もしかして――。いや、まさか、あいつは死んだはずだ!」
「お前と同じだよ、クライン。何か知らんけど生まれ変わった。僕はもうグロウゼビア人じゃない。日本人だ」
ムーンリーパーが厳密な意味で日本人と呼べるのかはさておきだけど。
クラインはしばらく驚いたように目を見開いていたが、突然、狂ったように笑いはじめた。
「てめえ、やっぱりウルグラフの馬鹿か! 聖騎士ウルグラフ、久し振りだなこの野郎。一度殺してやっただけじゃ満足できねえから、もう一回俺に殺されにきたってか?」
「殺された? 僕が? お前に……? いや、お前、何言ってんだよ。僕は帰らずの森で邪竜にやられて……」
「はっ、相変わらずめでてえ野郎だな。そう思いたきゃ一生思ってろよ。……ああ、くそ。久し振りに大親友様の馬鹿面を拝んで、さすがの俺も気が抜けたぜ。
……まー、今日は元々宣戦布告だけのつもりだったんだが、お前らがちょろちょろうるせえからついカッとなっちまったぜ。でも、終わりだ終わり。もう気分じゃねえ」
クラインは雑な口調で言って溜息を吐き構えを解く。
「宣戦布告だって?」
クラインは大きくバックステップをして僕たちから距離を取ると、聖剣を鞘に納め高らかに宣言した。
「日本に告ぐ。我々グロウゼビア王国は来たる六月一日、東京を奪い日本を終焉に導く。そのために派遣する戦力は、この俺、勇者クライン率いる五千人の王国兵だ。俺らを止められたらてめえらの勝ち、それが無理なら日本終了。どうだ、シンプルだろう?」
「た、たった五千人で東京を落とせると思ってるのか。俺たちを舐めるな!」
生徒の一人が声を荒らげたが、その声は情けないほどに震えていた。
ムーンリーパーの精鋭十名と元魔導士団の団長をもってしてもクラインに傷一つ付けられなかったのだ。
しかもクラインは手抜きの舐めプ。もしこいつが本気を出していればこの場に生き残っている生徒はいなかっただろう。
クラインならばムーンリーパーの千人や二千人容易く皆殺しにしてしまうだろう。そのことをこの場にいる全員が肌で感じ取っていた。
そんな超人が五千人の兵士を引き連れてやってくるのだ。
間違いなくこいつは本気で東京を奪うつもりだし、冗談抜きでそれをやってのけるだろう。
しかも、こいつは「東京を奪う」と言ったが、ムーンリーパーが防衛線を張るここ条彩市については一言も触れなかった。
それが全てを物語っていた。
こいつにとって僕たちムーンリーパーは敵ですらないのだ。僕たちはきっと、害はないけど目の前を飛ばれたらうっとうしい羽虫程度にしか思われていない。
クラインが退いてその姿が見えなくなる。
僕はクラインが消えた先を呆然と眺めていた。
ティナがレトゥグスの止血にあたり、他の生徒が保健委員会に救護ヘリの出動を要請し、残りの生徒が国重の遺体を囲み声を上げて泣いている。
そんな中、僕はただその場に立ち尽くすことしかできなかった。
全ての攻撃を無効化し、唇を歪めてにやりと笑うクラインの姿が脳裏によみがえる。
あんなやつ、どうやって倒せって言うんだよ。
絶望で目の前が真っ暗になりそうだった。




