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21 勇者クラインとの思いで3

 だが、結果的にはクラインが正しかった。


 それから約一年後に僕らはようやく魔王の元に辿り着き、魔王と対峙した。

 

 魔王にはどんな攻撃も通用しなかった。

《全攻撃無効》の防御スキルでも持っているのかと思ったが、僕の愛剣に付与された《防御スキル貫通》が通用しなかったので、スキルのせいじゃないことはすぐに分かった。


 魔王が鎧の上から羽織っているサーコートのせいだった。夜の空を糸にして織り上げたような深い深い闇色のサーコート。それが斬撃も魔法も全て吸収してしまうのだ。


 そのせいで僕や仲間たちは魔王に手も足も出なかった。

 でも、クラインは違った。

 

 クラインがまばゆく輝く聖剣アルクトスで斬りつけるたびサーコートは闇が晴れるようにさあっと霧散したのだ。転生前と変わらず魔王の弱点は聖剣であった。


 魔王と激しく打ち合い全身に傷を負いながらも、クラインは魔王に幾度も太刀を浴びせ、そのサーコートを剥がしていった。


 サーコートがなければ僕たちの攻撃は魔王に通用した。

 

 クラインと僕が攻め立て、要所要所でイングリッドとヘリファルテが強力な魔法を浴びせる。

 司教オーランテが仲間に能力向上魔法(バフ)をかける。僕やクラインが致命傷を負って死んだときは、魔王の隙を突き蘇生魔法で復活させてくれた。

 ギオが魔王の死角から接近して、鎧の隙間からダガーを叩き込む。


 一時間にも及ぶ死闘の末、僕たちは魔王を倒した。


 ……イーシュラー王国で、僕は罪のない竜を殺すことに反対した。

 でも、クラインはそれを平然とやってのけた。聖剣を手に入れるために。

 

 あのとき竜を殺していなければ、聖剣を手に入れることができず魔王を倒せなかっただろう。結果論だけど、世界を救うための行動を取ったのはクラインだった。

 

 もし僕やヘリファルテやイングリッドが勇者だったら、目先の優しさに囚われて間違いなく世界を滅ぼしていた。


 それがクラインの言った中途半端な優しさなんだろうと僕はそのときに思った。


 世界の人々を救うために罪のない竜を殺し靴の裏を喜んで血に染める。

 その冷酷な決断を下すことがクラインの言う真の優しさだとするならば、多分、クラインは世界で最も優しい人間だろう。


 ……だからこそ、こいつが勇者に選ばれたのかもしれない。

 クラインとは反りは合わないけれど、僕は彼のその優しさを尊敬していた。


 ちなみに、これは蛇足なんだけど……。

 魔王を倒した後、僕たちはネルムス三世から借り受けた聖剣を借りパクしてしまった。


 いや、借りパクは言葉が悪いな。正確に言えば返せなかったのだ。

 僕たちが魔王を倒したときにはもうイーシュラー王国は滅亡していたのから。


 ネルムス三世は僕たちが国を出た直後に、神になるべく竜の心臓を食べて食中毒であっけなく死んだ。

 

 その後、王の二人の息子が王位をめぐって骨肉の争いを始めたのだが、その最中に南の砦が陥落し王都になだれ込んできた魔王軍によってイーシュラー王国は滅亡したのだ。二人の息子を含む王の一族はそのときに全員亡くなったと聞いている。

 

 返すべき相手がこの世からいなくなったから、結局、聖剣はクラインが持ったままになっている。


 ……そう言えば、クラインは国重ら遠征隊に土地を奪い返されたことをどう思っているのだろう?

 多分、自分が殴られたみたいにめちゃめちゃ怒っているに違いない。

 

 怒ったあと、あいつならどうする?

 僕が知っているクラインのままだったら、きっと殴り返してくる。全力で。


「――まさか」


 思わずそんな言葉が口を突いて出て教師にじろりと睨まれた。そうだ。授業中なことをすっかり忘れていた。


 背筋が凍った。

 教師に睨まれたからではない。自分の思い付きにぞっとしたのだ。

 


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