プロローグ
お待たせしました!
三部目開始です(*^^*)昨日3/31より、マンガUP!さんにて
「猫にゃんにゃんにゃ~猫にゃんにゃんにゃ~」
今日のわたしは絶好調!
リヒャルト様が雇ってくれた音楽の先生であるボルヒェルト先生の伴奏に合わせて、わたしはとっても気分よく「猫の歌」を披露する。
もともと知っている曲の方がいいですからねってボルヒェルト先生が言って、ヴァイオリンで練習する最初の曲は「猫の歌」に決まった。
授業の最初にはリズムと音程を覚えるために「猫の歌」を通して歌い、そのあとでヴァイオリンレッスンに移るのだけど――
「ぷ……くくく…………」
どういうわけか、この歌を歌うと、授業を見学している人たちの間で笑いが起こる。
今日はリヒャルト様がいないからベティーナさんだけがレッスンに使っている部屋の隅に立っているんだけど、堪えきれていない笑い声がさっきから漏れまくりである。
……むむむ、なんでだろう? 今日は特に絶好調なのに。もっと元気よく歌った方がいいのかな?
笑われるのは、まだまだわたしが未熟だからだろうか。
わたしは絶好調のつもりでも、音程を外してたりするのかなあ~。よし!
「猫にゃんにゃんにゃん~!」
「ぶふっ‼」
手に持っているリズム感を取るためのベルを振り上げ、気合を入れて声を張ると、ベティーナさんが壁に手を当ててその場にうずくまってしまった。
……うーん?
貴族社会で生活しはじめてまだ日の浅いわたしには、貴族の笑いのツボがよくわかりません!
ボルヒェルト先生はにこにこと「お上手ですよ」って言ってくれるし、もうどうして笑われるのかは気にしないようにしよう。先生が褒めてくれるんだから大丈夫なはずだもんね!
絶好調で歌い上げた後、お茶とお菓子で一息つく。
食べても食べてもすぐにお腹のすくわたしには、レッスン中だろうとお菓子は手放せない。
ボルヒェルト先生もわたしの体質を理解してくれていて、間あいだで休憩を挟んではおやつタイムをくれるのだ。
「ボルヒェルト先生、今日のフランは料理長特製なんですよ! とってもクリーミーで美味しいんです!」
食べて食べて、とカットされたフラン(プリンのケーキみたいなやつ)をボルヒェルト先生に差しだすと、先生はにこにこしながらフォークを手にする。
美味しいね、と言い合いながら食べていると、うずくまっていたベティーナさんが復活して流れるような動作でお茶をいれてくれた。ベティーナさんのいれるお茶はいつも美味しい!
「フランはとっても奥の深いお菓子なんですよ! 硬めのしっかりしたものもあれば、今回みたいに中がふわっとろ~っとしたのもあるんです! 両方大好きです‼」
ヴァイアーライヒ公爵領のカントリーハウスにいる料理長フリッツさんと違って、王都のタウンハウスの料理長はお菓子作りはあまり得意ではないらしい。
だけど、わたしが領地でフリッツさんにお菓子を作ってもらっていたことを知った料理長が対抗心を燃やして、現在、お菓子作りの猛特訓をしているんだそうだ。
……料理人さんのプライドってやつだね、うんうん!
ベティーナさんは「スカーレット様の一番がほしいんですよ」とちょっとよくわからないことを言っていたけれど、要するに、ヴァイアーライヒ公爵家に仕える料理人として一番になりたいってことだよね! さすがリヒャルト様が雇っている料理長だ。向上心がすごい!
「明日は学園の始業式ですね。スカーレット様も参加なさるんですか?」
「はい! リヒャルト様が参加しておいた方がいいっておっしゃるので!」
わたしは学園の正式な生徒ではなくて「視察入学」という立場だから、始業式には参加する必要はない。だけど、せっかくなんだし雰囲気だけでも経験してみたらどうかってリヒャルト様が勧めてくれたのだ。リヒャルト様のおすすめなんだから、もちろんわたしは参加一択である。
……まあ、参加といってもただ見学するだけだけどね!
当日はシャルティーナ様が一緒にいてくれるそうなので、生徒側ではなく教師側の席で見学することになりそうだ。
……エレン様とも久しぶりに会えるかな? イザーク殿下とどうなったのか聞きたいな~。
前期はイザーク殿下のせいで「すわっ、婚約解消⁉」の危機だったからね。すっごくはらはらしたんだよ。だけど、何とかその危機を乗り越えて、エレン様がもう一度イザーク殿下を信じると選択してくれたから、何とか丸く収まった。
……こういうのって、そうそう、雨降って地固まる? なんで雨が降ったら地面が固まるのかは知らないけど。というか雨降ったら地面はどろどろになるから固まらないのにね。
ちょっと気になるから今度リヒャルト様に訊いてみよ~っと。どろどろになるのに何で固まるんですかって!
まあともかく、後期は前期のようにはらはらするようなことは何も起こらないだろう。
エレン様と楽しく学園を謳歌――ええっと、そうじゃなくて、視察入学という与えられた使命をまっとうするのだ!
「えいえいおー!」
「スカーレット様、何に気合を入れているのかはわかりませんが、ほどほどになさってくださいね。……夏休みの前に、仮面をつけてイザーク殿下を振り回したって聞きましたよ」
うっかり口に出てしまったわたしの「えいえいおー!」という気合に、ベティーナさんが額を押さえながら苦言を呈した。
だけど、わたしはあえて言いたい。
「ベティーナさん、あれは遊んでいたんじゃなくて使命をまっとうしていたんです! おかげでイザーク殿下もエレン様の真実を知ることができました!」
「仮面は必要あったんでしょうか……」
「もちろんです! わたしだと気づかれないように変装したんですよ!」
「……変装。そうですか。変装…………。まああの責任の一端はベルンハルト殿下にあると聞いておりますから、仕方がないと言えば仕方がないのですが」
「はい、お義兄様に素敵なものをいただきました!」
「学生のときの経験は得難いものです。ぜひ楽しんでくださいね」
ボルヒェルト先生がゆったりとした動作で紅茶を口に運びながら、好々爺然と笑う。
「はい!」と元気よく返事をしたわたしに、ベティーナさんは釘をさすように言った。
「後期でも、何かあれば必ず報告してくださいね。前期のように知らない間に王太子殿下の婚約問題に首を突っ込んでいたとかにならないようにお願いします」
ホウレンソウが大事、とベティーナさんは言うけど、どうしてここでお野菜が出て来るんだろう。謎……。
……何かあったらホウレンソウを持って行けばいいのかな? 渡せば伝わるってこと? うーん、貴族社会難しい!
孤児院と神殿で育ったわたしには、貴族のルールはまだほんのちょっとしか理解できていないみたい。リヒャルト様の妻になるんだから頑張って貴族ルールを学ばないといけないのに、謎ルールが多すぎる!
でも、前期にあれだけの問題が起きたんだから、後期はきっと何もなくすごせるはずだよ!
「任せてください! 何かあったらちゃんとホウレンソウを持って行きます!」
「はいお願い……ん?」
ベティーナさんが「何かおかしいぞ」みたいな顔をしてけど、何もおかしくありませんよ。今度料理長にホウレンソウを常備してもらうようにお願いしておきますね!
まあ、ホウレンソウを持って行くような大きな出来事は起きないと思うけど。
そんな能天気にそんなことを考えていたわたしのもとに、衝撃的な手紙が届くのは、来週のこと。
――わたくしは、リヒャルトと聖女スカーレットの結婚を認めません。
嵐は、すぐそばまで迫っていた――
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☆おしらせ☆
昨日3/31より、マンガUP!さんにてコミカライズの連載がはじまりました!
漫画は万波千夏先生が描いてくださっています!
読んでいただけると嬉しいです(*^^*)
↓↓作品ページ↓↓
https://www.manga-up.com/titles/1694
また、本作3巻目も準備中となります!!
どうぞよろしくお願いいたします。









