迷探偵スカーレットと参謀三号 4
お気に入り登録、評価などありがとうございます!
「スカーレット、今日はとても機嫌がいいのね」
三限目がはじまる前に、わたしはイザーク殿下と別れて急いで聖女科の棟に向かった。
三限目はエレン様と一緒に授業を受けるので、エレン様が迎えに来ることになっていたのだ。
イザーク殿下はまだ気になることがあるみたいで、三限目も調べ物をするって言っていた。
ハルトヴィッヒ様から、授業中は仮面を外すように言われたので、ベルンハルト様からもらった仮面は鞄の中に納めてある。
「はい、今日はとってもいい日です!」
「美味しいお菓子でもあったのかしら?」
「お菓子ですか? はい、お菓子も美味しかったです!」
さっきここで食べていたバスケットの中のお菓子も美味しかったし、ベルンハルト様のお部屋で食べたお菓子も美味しかった。いつもならバスケットの中身だけでお昼休憩までをすごすんだけど、理事長室でお菓子をもらったから余分に食べられてお腹も大満足である。
「エレン様もいい日ですか?」
「わたくし? そう、ね……いい日というより、変な日かしら?」
「変な日、ですか?」
「ええ。今までなかったことが起きたと言うか……たまたまなのかしらね」
エレン様が首をひねっている。きっと、さっきのビーカー事件のことを言っているんだろうね。
でも、わたしがイザーク殿下と探偵をしているのは内緒だからね。余計なことは言わないよ!
エレン様と一緒に教室へ向かうと、最後尾の窓側の席に座る。
そして、エレン様がわたしの隣の空席を気にするように視線を向けた。
「……今日は、ご公務はなかった気がするのだけど、イザーク殿下はどうなさったのかしら?」
ぎくぎくぅ!
まさか、わたしの参謀三号やってますなんて言えないし、三時限目にイザーク殿下が何をするのかは知らないので言えないんだけど……いやな汗をかいちゃったよ。こそこそするのは心臓に悪いね。
……でも、イザーク殿下とお別れするって決めても、エレン様は殿下のことを気にするんだね。
好きという感情はそう簡単になくならない。エレン様はやっぱりまだイザーク殿下のことが大好きなのだ。
エレン様が決断を下す前にイザーク殿下がエレン様が素敵な女性だって気づいてくれればいいけれど、どうだろうか。
エレン様が学園で危害をくわえられていたと言うのは、先ほど屋上で見たからイザーク殿下も理解しただろう。
あとは、それをきっかけにエレン様に向き合ってくれるかどうかなんだけど……、イザーク殿下、ちゃんとエレン様を知ってくれるかなあ。
イザーク殿下は優しい人だし、エレン様がいじめる側ではなくいじめられる側だったってわかったら、殿下の中のエレン様に対する誤解が解けると信じたい。
誤解が解けて、ちゃんと、ごめんなさいをしてほしい。
「スカーレット、あともう少しで夏休みでしょう? でもその前に、ちょっとお願いしたいことがあるのだけれど……いいかしら?」
エレン様からのお願い! これってはじめてじゃない?
「もちろんです!」
頼られている気がして嬉しくなって即答すると、エレン様がにこりと笑う。
「それでは、終業式のあと、時間を取ってちょうだい。リヒャルト様もご一緒で構わないわ。改めて、わたくしの方から連絡を入れるから」
「わかりました!」
――何も考えずに二つ返事で了承したわたしだったけれど……、終業式の日、わたしはそのことで、とってもあわあわすることになる……。
ブックマークや下の☆☆☆☆☆にて評価いただけると嬉しいですヾ(≧▽≦)ノ









