金色のベルとデート 2
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黒くてピカピカのピアノの前にリヒャルト様が座って、その膝の上にひょいっと抱っこされた。
どうしてお膝抱っこされるのか不思議だったんだけど、この方が説明しやすいからなんだって。
ピアノの蓋を開けると、中には白と黒の棒がたくさんならんでいる。
「左が低い音で、右に行くにつれて高くなる」
「ピアノは大きいから低い音なんじゃないんですか?」
「何の話だ?」
リヒャルト様が不可解そうな顔をしたので、ヴァなんとかの楽器の話をすると、何とも微妙な顔をされた。
「そこからなのか……、まあ、そうだよな」
リヒャルト様が「どう説明すべきか……」と悩みながら、ヴァなんとかについて教えてくれる。
わたしが一度で覚えられなかった楽器は、ヴァイオリンとビオラとチェロというらしい。
あれは弦楽器で、同じグループに属する楽器だそうだ。
基本的な作りは一緒で、だから大きくなるにつれて低い音が出るんだって。
大きいと低い音が出るのは何でかって訊ねたら、音の波長がどうとかって小難しい話になってわけがわからなくなったから、聞いたふりでスルーしておいた。
自分で訊いておいて聞いたふりは失礼だよねって思ったけど、聞いたってわからない。特に数字とか並べだされたらもうチンプンカンプンだ。ヘルツってなに? いやいいです聞きたくありません。頭がパンクするから説明しないで!
簡単に言うと、弦が長くなると低い音が出るらしいから、それだけ覚えておこうっと。
「ピアノも弦楽器だぞ。ゲルルフ、蓋を開けてくれるか?」
ゲルルフさんがピアノのてっぺんの板を持ち上げると、中には弦がたくさん貼ってあった。
「左の弦が長いだろう? だから低い音が出る。逆に右の弦は短いだろう? だから高い音がでるんだ」
説明しながらリヒャルト様が棒――鍵盤をたたくと、音が出た。
「これが音階」
「ドレミファソラシド!」
「なんだ、知っているのか」
「聖女仲間に聞いたことがあります」
聖女仲間の中には「絶対音感」とかいうのを持っている人がいて、コップとかをはじいて「ラ」とか「ファ」とか言ってたから、それは何かって訊いたら教えてくれたのだ。
その話をすると、リヒャルト様が苦笑しながら鍵盤をたたく。
「音楽はその音階の組み合わせだ。最初の手習いならそうだな……」
リヒャルト様がポンポンって鍵盤をたたくと、音がキラキラしはじめた。
音がつながって、知らないけど綺麗な曲になる。
……おお! ピアノ、すごい! そしてリヒャルト様、すごい!
「ダンスだと三拍子をよく使うが、最初は四拍子から覚えた方がいいだろうな」
「これは四拍子って曲ですか?」
「そうじゃない」
違うらしい。
リヒャルト様が困った顔で、ゲルルフさんを振り向いた。
「音楽の教師をピックアップしておいてくれ。穏やかな人物がいい。……できれば、幼い子供の相手も慣れているような」
リヒャルト様、わたしは幼い子供ではありませんけど。でも優しい先生がいいから口ははさみません。
「かしこまりました」
ゲルルフさんがくすくす笑いながら首肯した。
「ほら、スカーレット。最初は深く考えずに触って慣れるところからはじめればいい」
触っていいと言われたので、わたしは鍵盤をポーンと押す。
だけど、リヒャルト様みたいな綺麗な音にはならない。なんでだろう。
むーっとしながらぽんぽんと鍵盤を叩いていたら、リヒャルト様が「うーん」と唸った。
「リズム感が致命的だな……」
……うん?
「そう言えばスカーレットは細かいことを考えたりするのが苦手だったか……。ゲルルフ、何かないか?」
「……そうですね。音が出るものと言えば、ベルならありますが」
「それにしよう。最初はそのくらいの方がいいかもしれない」
どうやらピアノは終わりらしい。
ピアノの椅子からソファに移動すると、お茶とお菓子が運ばれて来た。
ご飯を食べたばかりだけど、もちろんお菓子も食べますよ!
リヒャルト様の隣に座ってクッキーを頬ばっていると、ゲルルフさんが金色のベルを持ってくる。
「よし、スカーレット、これをやろう。とりあえずこれでリズム感を養ってくれ」
くれるというので受け取って軽く振ると、チリンと軽やかな音がした。
……あ、綺麗な音!
ベルを持つわたしの手に手を重ねて、リヒャルト様が「四拍子」っていうのを教えてくれる。
……ほうほう、これが四拍子! わかったような、わからないような……。
しばらくベルを鳴らして四拍子を覚えろと言われたので、よくわからないけどそうすることにします。
というか、ベルを鳴らすのってちょっと楽しい!
リヒャルト様、ありがとう!
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