美味しい学園生活 5
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休憩時間が終わると、音楽の先生と、楽器を持った四人の男女が入って来た。
……おんなじ形だけど大きいのと小さいのがある。
弦が張られた茶色い楽器が四本。
みんなそれぞれ一本ずつ持っていて、同じ大きさのが二本と、それより一回りか二回りくらい大きいのが一本と、とっても大きいのが一本だ。
「エレン様エレン様、あれ、なんですか?」
リヒャルト様のお邸にはピアノと言われる楽器が置かれていて、それを遠くから眺めたことはあるけど、あの茶色いのは見たことない。
「あら、楽器を見るのははじめて?」
「ピアノは知ってます。黒くて大きいやつ。でもあれは知りません」
「黒くて大きいやつ……」
エレン様が何とも言えない顔をしてから、こほん、と小さく咳ばらいをする。
「あれは弦楽器よ。向かって左側の二本がヴァイオリンで、その横がビオラ、一番右がチェロね」
……ヴァ……?
だめだ、一度じゃ覚えられない。
なので、名前はまた今度にしよう。
「同じ形なのに大きさが違うのは何でですか?」
「大きさによって音色が違うんだよ」
エレン様に訊ねたのに、右隣に座っているイザーク殿下が教えてくれた。
「あの三本の中だと、ヴァイオリンの音色が一番高い。次がビオラ、チェロの順に低い音が出るよ」
ほうほう、つまり大きくなったら音が低くなるんですか!
じゃあピアノは低い音が出る? とっても大きいもんね。
「あなた、音楽は聞かないの?」
「聖女仲間が歌を歌っているのは聞いたことがありますけど、神殿に楽器は……あるかもしれないけどわたしは見たことがありません」
そう言えば、礼拝堂だか聖堂だかに何かあった気がするけど、聖女は神父さんやシスターのようにお勤めをしないからあのあたりには用がないもんね。
というか、聖女が礼拝堂とか聖堂に出入りしていたら、お祈りに来た人が聖女に勝手に助けを求めるかもしれないから、あまり人の出入りのあるところに行くなって言われてたし。
「そうなの。じゃあ今日はよく聞いておくといいわ。リヒャルト様と結婚するなら、音楽に触れる機会は多いわよ。リズム感がなければダンスもできないでしょうし。踊れなければ恥をかくわよ」
ダンスですか! ダンスは少しだけ教えてもらいましたよ! サリー夫人の手拍子で練習しただけですけど。
「エレン、だからそのような言い方は……」
「わかりました、よく聞いておきます!」
イザーク殿下が何か言いかけたけど、わたしが言葉をかぶせちゃったから何を言いかけたのかよく聞こえなかった。
何を言おうとしたのか訊ねようと思ったとき、音楽の先生がパンパンと手を叩く。
今から演奏する曲の説明と、そのあとで感想をレポートにするようにと言われて、わたしはうえってなった。
え? 何か書くんですか?
音楽初体験のわたしには、レポートは荷が重いです!
不安になってエレン様を見たら「あなたはレポートは必要ないわよ」と教えてくれたのでホッとする。
よかったです!
数曲連続で演奏するそうなので、わたしはバスケットからお菓子を取り出して机の上に並べて置いた。
イザーク殿下が目を丸くしているけど、お菓子はわたしにとって必須なんです。お腹がぐ~って鳴ったら大変でしょう?
準備万端! とわくわくしながら演奏のはじまりを待つ。
奏者たちがちらりと互いに目配せして――ふわわわんって、演奏がはじまった。
ブックマークや下の☆☆☆☆☆にて評価いただけると嬉しいですヾ(≧▽≦)ノ
また、SQEXノベルの公式サイトに出ましたが、早くも2巻が出ます(//∇//)
詳細はまたご報告しますね(*^^*)









