3話 はまゆうの香り
「はぁ~つかれた~。」
結局あの後、占い師に診断してもらったが、ライナーさんの言う通り、魔種は生で初期値+17だった。
「すごいなライナーさん....、にしても分かるもんなのか?」
「いいえ、分かりませんよ。
ただあの人は見えるそうです。」
すごいな。
意外と大物だったりして......
しっかし、初期値+17は驚いた。
占い師曰く、【初期値1につき、300だけ継続値に引き継がれ、継続値7000で派生先に進化する】らしい....。
「初期値って普通はどのぐらいなんだ?」
「私は刻でしたが、3でした。」
「ぶッッ!」
ぇ、俺もしや、やっちゃった?
......てか七菜、刻なの?
「なんか....ごめん七菜....」
「ふふ、そんな強ばらなくてもいいのに。
強いことはいいことですよ。」
「そ・の・か・わ・り、私のことを守ってくださいね?」
七菜は相変わらず圧がすごい......
「まぁ、言われなくてもそうするよ。」
「ふふ、そう来なくっちゃ!」
俺はこの命に変えてでも七菜の笑顔を絶対に守ると誓った。
「前のようにならないように......」
そう小声で呟きながら。
*
そうして寝室に戻ると......。
「ところでこれからこの部屋で2人で過ごすのか?」
俺はなぜか枕が2個並ぶベットを見ながらそう問う。
「えへへ、そうですよ。」
「じゃあもうひとつベットが必要なんじゃないか?」
「ん? ど・う・し・た・の?ゆきくん?」
「あ、なんでもないっす。」
か、勝てない。
かつて1度でも勝てたことがあっただろうか。
*
「七菜?その花はなんだ?」
前世でまだ七菜と一緒にいた頃、七菜は決まってはまゆうという花を部屋の片隅に生けていた。
そして今手入れしている花がそのはまゆうとそっくりだったのだ。
「はまゆうです。実は、植物だけはこの世界でも変わらないんですよ。」
「ぇ、植物だけ?」
「はい。動物、昆虫、鳥などは全くの別物なのですが......、植物というか花ですね。
なぜか、それだけは全く同じものが分布しています。」
へー。そうなのか?
それって要するは木とかは変わってんのか?
「花以外の植物はどうなんだ?」
「この世界では何故か生命、全てのものに共通して鮮やかな色が含まれている可能性があるのですよ。」
「ちなみに人間では瞳孔。つまり、目の色が値します。」
「そしてその色は魔種によります。
そしてオッドアイ。つまり両方の色が異なる場合、異色と呼ばれて、強者扱いされます。
異色は初期値が高いという特徴とそれぞれの魔法に有効という特徴があります。」
「ゆきくんは黄色と黒の2色なので蜂ですね。
効果は、いわゆる1番自然に関する魔種が強くなるタイプです。」
「七菜は......1色か?」
見た感じ左目が....微妙に..赤い?
「今はそうですね。」
「私は転生したての頃は、左目が赤、右目が黒の異色でしたが、今は色が落ち能力しか残っていませんよ。」
色が落ちる?
「色が落ちても能力は残るのか?」
「はい。そして色が残ったままの人こそが真の強者とされています。
だいたい20歳まで色が残ったままであれば、それ以降は色は落ちないとされています。」
「俺は....18歳だからあと2年か....」
......強者なりてぇぇ!
「はい。でも恐らくもう色は落ちないでしょうね。」
「そうなのか?ところで、王子は戦うのか?」
「戦うことをゆきくんが望んだ上で王が承諾したらですね。」
「ゆきくんが王になれば話は別ですけど。」
ところで王ってどうやってなるの?
*
「かぁ~~。」
王子って意外と大変なんだな。
俺の想像の三倍は辛い。
今日は兵士たちとの挨拶周りをして、この後は貴族学校の入学挨拶だ。
「では次は学校での入学挨拶ですのでこの場所にお乗り下さいルカ王子。」
この国では王子が俺しかいなく次の王は俺で決まっているらしい。
だから正しい呼び名は王子ではなく王太子だそうだ。
*
そうして数十分馬車を走らせると、宮殿の5分の1程の大きさの建物が見えてくる。
「貴族学校というのはあれのことか?」
「はい。この後あそこの全校生徒の前で挨拶をします。」
「ちなみに生徒は何人いるんだ?」
「3000人ほどと伺っています。」
3000!?
「多いな。」
「はい。」
「「............」」
前から思ってたけど人がいると話せることが限られるから、話題がない。
「着きましたよ、ルカ王子。」
「わかった。」
「「「「おはようございますルカ王太子」」」」
すごっ!
謎のボディーガード4人?に出迎えられる。
全校生徒から憧憬の眼差しで見られながら学校内に入る。
「ここはどこだ?」
学校内の小さな隙間を通り抜けると通路に出る。
「ステージ裏で、そこの扉から入るとステージです。」
「あと3分ほどで開始です。」
「わかった。」
俺は、急いでスピーチ内容を考える。
*
そうして経つこと5分弱、
「今日は特別にルカ王太子様とルダ王妃がいらしています。」
「「「おお~!!!」」」
表から盛り上がりが聞こえてくる。
「では行きましょう。ルカ王子。」
「......ああ、」
俺は今、極度の緊張状態にあった。
なんせ、こんなこと今までほぼなく、
何より俺がとても人見知りなのだ。
ステージに進むとそこにはおそらくゆうに3000人は超えるであろう数の人が憧憬の眼差しでこちらを見てくる。
......ああ、人がゴミのようだ。
「ご紹介に与りましたルカ・リーシェル・フランメです。
...............................ご清聴感謝します。」
やっとの思いでスピーチを終える。
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