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竜の国へ

作者: 吉川明人

 朝もやの中に漂う船の中には、年老いた者も含めて数人の男女が乗っていた。


 彼らは一様に疲れ切った表情で、甲板に寝そべっている。


「食べ物は、どうだ?」

「もう何も残っていない」


「金は?」

「前の寄港地の税金ですべて取られてしまっただろう」


 誰に問うことなく尋ねる声に、誰かがもうこの船には今、何一つ物資が残っていないことを告げた。


「いつまでこうしていられるんだ?」

「心配するな。そう長くはないはずさ」


 答える誰かが深いため息をついたが、それがただの希望でしかないことは、これまでの現実から明らかだ。

 だが……。


 チャリーン!


 その時、船の倉庫の奥から一枚の貨幣が転がり落ちる音がした。


「おっ! かかったぞ!」

 同時に釣り糸を垂らしていた者の竿に、ググッと“アタリ”の手応えがきた。


「とうとう変化するようだな」

「ついに目的の地に到着するのか?」


 寝ていた彼らはスクッと立ち上がり、遠くにうっすらと見えてきた岸辺をしっかりと見据える。


「さあみんな、これで休憩は終りよ!」

「待たせたな。去年までは色々あって準備が足りずに不自由をかけたが、今年は本気で用意してきたからな」


 彼らがそれぞれ手にしていた杖や楽器を高々とかざすと、宝箱からは金銀財宝が山のようにあふれ出す。


「よし! 今年からは、やっと忙しくなるぞ!!」


 七福神の乗った宝船は、ようやく目的地へと到着しようとしていた。

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