じゃがいもだよ、黒騎士さん
ワイバーン大走査線から三日。
あれから人間側も多さが和しているとは聞いたが、
勇者一行が身動きしないので好都合と放置。
そのうちひとり食べる物に思い当たりがあったらしく、これは不味いのかと持ってきた。
人間の畑からくすねてきたそうだが果たして。
どう見てもジャガイモです本当に(ry
いやまて、私が知っているジャガイモと同じものとは限らない。
人間側の暮らしを参考にしているダークエルフさんやコウモリメイドさんに確認。
熱してやわらかくして食べているので、ほぼじゃがいもで間違いない。
畑を作るにあたってもじゃがいもというのは重要な作物だ。
でんぷん質が取れて、肉とも相性がいい。
可能なら畑に植えたい食物だ。
芽が体内に入ると毒なので取り扱い注意だが。
ワイバーンに説明。
魔王様にも説明。
美味しく食べられるような方法はある。
皮付きポテトなんて原始的でいいだろう。
ただし芽取りは忘れない。
人間はこの芽の毒を分解できないのだ。
気になる事があるとすればダークエルフさん曰く貧困食であることだろう。
食物として植えるのは非常手段であるとか。
しかも一部の魔物はこの毒については知ったこっちゃないので雑に食べるらしい。
魔物に狙われるし、廃棄分が多量に出るし、栄養が偏るが土の栄養素の違いなのか比較的育成しやすい。
だから非常手段で植えるもの。
そういう扱いらしい。
逆手に取れば、この芽の毒は人間が食べる物に放り込むだけで一時的に戦闘不能に追い込むことはできる。
人間がこの芽を食べてしまうと、めまいや下痢に嘔吐などで大変な目にあう。
これをスープ類に放り込んだらもうわからない。
芽を潰して積極的に口にするものに放り込むだけでもう調理済みの食物が使い物にならなくなるのだ、これほど怖いものもない。
保存食に混ぜ込んだら大打撃である。
一応そういう使い方もあると説明はした。
魔王様とデザイアさんが、こいつなんて邪悪なこと考えやがるという顔でこっちを見ていた。
どうしてこうなった。
食べ物を粗末にするなとデザイアさんからの説教。
魔族に兵糧攻めの考え方はないらしい。
それどころか毒攻めなど非人道的だと正座でお説教を聞かされるなんて誰が思ったろう。
足がしびれてまともに立てなくなるまで怒られた。
ヨタヨタしながら自室に戻って、コウモリメイドさんと一緒に他にも持ち込まれたものを確認。
薬草やハーブ等、臭みを抑えたり体の調子を整えたりするものはある。
知っている物はいくつかあったが、人間にとっての効果なのでダークエルフさんや私をはじめとした人型で過ごす前提の生き物以外にはどのような作用があるか分からない。
健康にいいなら食べておきなさい、作ってよしと魔王様は言う。
ダークエルフさんが美味しく食べられるなら、と言って協力を申し出てくれた。
魔王城周辺の畑で少しだけジャガイモが作られることになった。