側付きだよ、サリアさん(幕間)
初めまして。
コウモリ魔人族のサリアと申します。
はい、ご覧の通りメイドです。
どんな姿かわからない?
メイドに翼が生えてるとでも思っていただければ。
魔王様に代々使える側付きの一族、その長を務めております。
現在は魔王様とその直属であらせられる将軍様の側仕えを務めております。
デザイア様の側付きとして長年お世話をさせていただいておりましたが、最近異動がありました。
魔王様を訪ねてやってきた人間。
それも勇者召喚から離脱した者がやってきて、その人間が上司となりました。
猫やダークエルフと情報を交換してはいたのである程度はわかります。
剣の腕前はぼちぼち。
魔力はからきし。
装備はしょぼしょぼ。
ところが、話術がずば抜けて上手い。
魔王様の所にやってきた後も地方の情勢を含めて喧々諤々。
堂々と他の族長たちと口でやり合ってみせました。
見事、と言っておきましょう。
しかし、魔王様の思い付きとはいえいきなり三魔将のお三方と同様の扱いはいかがなものでしょうか。
丸め込まれたとは思いますがよしとします。
魔王様なので。
人間に個室があてがわれました。
デザイア様よりこの人間の側付きになるよう命じられました。
気楽にしてよいと仰るのであれば私とて遠慮は致しません。
一族にあてがってただいた部屋へ戻りましたが、これから上司となる事を思い出しました。
ダークエルフの長であるリリア様に遅れましたが、部下となる全員でご挨拶。
あの顔だと名前は覚えて頂けそうにありません。
狭くないとはいえ、部屋にギッチリ詰まって口々に名前を言ったので無理もありませんが。
挨拶もそこそこに、魔王様より勅命が下りました。
人間側の動向を探ってほしいとの事。
では、我々が影となり支えて差し上げなければなりません。
目下、鉱山で勇者に好き放題やられている実情。
魔王様にとって悩みの種とあらば部下である我々の出番です。
情報収集してまいりましょう。
勇者退治や街の制圧はヘンリー様にお願いすることになると思いますが。
と、思ったら我々を巧みに使い分けた人間が街も前線基地もあっという間に制圧してしまいました。
途中、保存食を強奪した部下の一人であるキッテが自慢げに報告に来ました。
お手柄です。
いきなりやってきた人間が上司とあっては反抗したくなるのも無理はありません。
認められないから勝手にやったというのも理解はできます。
デザイア様の命令なので私は逆らいませんが。
案の定、人間はキッテをその場に正座させました。
こんこんとお説教されています。
悪いことではないかもしれないが、事前に相談しなさいと。
怪我などしては元も子もないと静かにお説教されております。
そしてそのまま足がしびれて立てなくなったキッテに聞こえない位置に私が呼び出されました。
責任を取るのはあくまで自分だから、これ以上怒るのは止めてあげてねとの温情。
我々へのお慈悲ゆえのお説教でした。
寛大な措置に感謝いたします。
全員、聞いておりましたね?
魔王城に戻ってから、一族全員で客将となった人間の呼び捨て廃止を決定。
改めて「黒騎士様」と敬意をもって呼ぶように総意が固められました。
とうの黒騎士様ご本人はどうしてこうなったと頭を抱えております。
面白いので私は素知らぬ顔で鎧をピカピカに磨かせていただきましょう。




