任務だよ、黒騎士さん
魔王城に行けたと思ったらピカピカの鎧を渡されて、客将。
どうしてこうなった。
わからないが、疑問に思ったことは間違いない。
あのまま人間側についていてはロクな目に合わなかったのは間違いない。
勇者と握手したときの社会人センサーもまだ解決していない。
今後の動き方も考えなくてはならないが、まずは落ち着いて考える。
王宮で感じた社会人センサー。
あの危機感とも言うべき感覚は、悪意だろう。
誰かからの悪意で、勇者と仲良くするのが彼らにとって都合が悪い。
では、それはなぜ?
異世界から召喚したけど弱いやつというだけなら、邪魔ではあっても都合は悪くないだろう。
弱ければ後々勝手に離脱することだって考えられる。
順を追って考えている間に魔王様からの呼び出しがあった。
用事は「さっそく人間側の動きを調査してほしい」という依頼だった。
部下とのあいさつは済んでいるだろうし、
長期的に考えてもらって構わないとのことだった。
時間がかかってでも徹底的に洗い出せという事だろう。
謁見の間を辞して、考える。
同時にあいさつに来ていた部下代表の三人?にも部屋に来てもらって話をする。
人間側の動き、と言ってもざっくりしたものだ。
こちらを攻めている国は二方向。
南側と東側にある。
魔王城の地域が雪の降る厳しい地域にあるせいか、
北側はほとんど人が住める土地がないので考えなくてもいい。
魔王城から西側はほとんど海。
南東方向には大陸が広がっているが、
東側は山脈のほかに森まで広範囲に広がっていて、
人がいる区域までかなり距離がある。
と、なれば注意するなら当面は南側。
勇者一行が今どこにいるかをチェックしたいし、
出来るだけ大きな街で人間側の動きと予定を調べたい。
代表のダークエルフさんから同行の提案。
コウモリメイドさんからは定時連絡の提案。
猫には勇者一行の動きを逐次報告してもらうのが良いと考えた。
それならすでに追っている、と猫。
部下が有能すぎる。
魔王城から南下した先に山脈があって、採掘資源用の鉱山がいくつかある。
これをダンジョン化し、要塞化し、一進一退の攻防を続けている。
と言っても、魔族側は攻める気がないので取られた以上のものを取らず、
本気で攻め返していないのだが。
それも勇者が来るまでの話だった。
私が魔王城までの旅を続けていた間に本格的に前線に出て、
装備を整えた勇者一行に好き放題にやられている。
鉱山のさらに南に前線基地のようなものを作り、そこに逗留しているらしい。
もちろん前線基地にも猫は忍び込んでいるし、
兵士が餌やりと称して食べ物を与えてくるのでそこにいて当たり前だし、
しれっと会議の横に寝転がるなど朝飯前なのだとか。
前線基地のさらに南には大きな街もある。
前線基地だけでは厳しく、物資の補充に戻ることがあるので、
そこでも勇者一行の動向をチェックしているとのこと。
となると当面の残りの調査は人間側のおおまかな動きとなる。
前線基地のさらに南にある街を目標にしよう、という話になった。
コウモリメイドさんはコウモリに化けつつ情報収集に出立。
猫も一度、手に入った情報を纏めるために出立。
ダークエルフさんと私もコウモリメイドさんのお付きを二名伴って出立した。
さて、何から調べようか。