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仮設風向計/詩集その3

失われた楽園

作者: 浅黄悠

 初めてのドライブ

 帰り道にいる猫

 友達が騒ぐ片隅での微睡み

 手紙を出しに行く夜の雪

 テスト勉強終わりの内緒話

 しろつめくさ畑の中

 無心で花冠を作った思い出

 どれも大切な過去




 本を読んだ

 栄華を極めた都市や人々の楽園が

 どのようにして消えていったのか

 権力争いの血に塗れ

 あるいは一夜にして? 

 僕たちはそこに人間の悲しさと醜さばかりを見つける


 僕は結果論の崇拝者だから

 自分が幸せな世界にいないという劣等感

 そんなもの無いはずだという疑りは年々膨らむばかり


 でももしこれから僕が自由を失っていくとして

 貯金も無ければ時間も無くなって

 味方も一人ずつ減っていって

 褒められることが何年もなくなって

 明日自分がどうするかさえよく分からなくなるとしても


 幸せな過去は時を経るほど残酷に輝くだろう

 僕の過去は確かに存在していた

 誰か、僕にそれを思い出させて




 失われた都市

 閉鎖した遊園地

 叶わなかった絶対の約束

 売れなかった愛の歌

 でも誰かが楽園を作ろうとした

 幸せを口にした


 思い出したくない事実が消えないように

 取り返せない過ちがあるように


 結局は上手くいかないどころか

 悲惨な結末にさえなるのかもしれないけれど

 過去の幸せを誰もが忘れ去ったところで

 誰かが落書きして踏みにじったところで

 思い出はますます美しくなりどこかで輝き続けるだろう

 完全に価値が失われることは絶対にない

 ねえ、君はそう言ってくれない?

 失われゆく楽園に立った人たちに

 誰かが新しい楽園を作れるように


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